2012年はバイオが格好の投資対象となった年だ。昨年末の上場28社の時価総額は3,800億円と久光製薬より少ないが、一昨年末の1,950億円と比べるとほぼ倍増。ベンチャー企業が多い東証マザーズ指数が2%しか上昇しなかったことを見ても、バイオの年だったことは明らかだ。ただ、上記の時価総額には新規公開企業の寄与が300億円含まれるため、これを除くと1社平均7割以上、株価が上昇したことになる。

 ところが、株価が7割以上、上昇した企業は28社のうちわずか7社だ。逆に下がった企業も同じ位あった。これは、特定の企業に資金が集まったためであり、バイオベンチャー株なら何でも上昇したわけではない。つまり、格好の投資対象セクターになったのは銘柄選択を誤らなかった投資家だけと言える。

 では、2013年にバイオ株の選択を誤らないためにはどうすれば良いか。それは、?その企業の収益の変化、?その企業を取り巻く環境の変化、?財務基盤とIRに注意を払うことだ。

 まず、バイオベンチャーの収益変化を捉えるには、業績の良い企業に惚れ込み過ぎないことだ。株価が上がる企業は「良い企業」ではなく、「良くなる企業」だからだ。バイオベンチャーの利益は緩やかに変化せず、不連続的に上下することが多く、業績数字から投資適格を判断しにくい。このため、開発パイプラインの進捗度合いに着目すべきだ。時折、その企業の開発資源をはるかに超えるパイプラインが開示されるケースがあるため、パイプラインの数に惑わされてはいけない。

 月次データがファンダメンタルズを知る手掛かりとなる小売業や市況産業などと比べると、臨床開発に何年もかかる創薬産業は開花までの時間が長い。しかし、別に上市まで保有する必要はない。主力品目のアライアンス交渉を見守りつつ、進展すれば売却すれば良いのだ。ただ、黒字転換が視野に入った企業には投資妙味がある。
 
 企業の環境変化とは、承認審査が予想以上に長引くレギュレーションリスクの顕在化、類似薬での重篤な副作用発現、提携企業の被買収、国際情勢の急変など、自助努力が及ばない領域を指す。ここでは、迅速に対応策を講じたかが問題だ。判断が正しかったかどうか判明するのは投資チャンスが過ぎ去った後だ。
 
 財務基盤とIRについては言うまでもない。財務基盤の脆弱化はじわじわと株価を押し下げるだけでなく、早期に対処しないと有望な新規事業を選択する余地が狭まってしまう。
IRがおろそかになると、企業の成長戦略を投資家が曲解する恐れがある。単純な例では、新規事業へ移行するための先行投資費用の発生で減益となるのを、既存市場でのシェアダウンが原因と捉えられるようなケースだ。10年ほど前まではIR部門をコストセンターと見なすベンチャー経営者がいたが、今後はファイナンスや市場昇格、人材確保やアライアンスに繋がるプロフィットセンターとしての地位を確立するだろう。アナリストとして注目したいのは、悪材料を躊躇せず開示する企業だ。マーケットでは一時的な悪材料より、長期に渡る不透明感の方が、株価上昇を阻害する。

 最後に、バイオベンチャーを担当するアナリストが少ないことが業界にとって懸念材料の1つと感じている。企業側のIR体制の整備拡充と両輪をなす問題だ。2013年はバイオが投資収益率の高いセクターであることを、微力ながらマーケットに発信していきたい。