日本のバイオベンチャーの新たな歴史が始まりました。2011年はIPO社数が7年ぶりに記録を更新しましたが、2012年はそれ以上に大きな変化が表れました。最大のトピックスは主力開発品が複数承認されたことです。1つは、そーせいのCOPD治療薬NVA237の欧州と日本での承認、もう1つがJ-TECの自家培養軟骨の日本での承認です。これまでも承認事例はありますが、主力品の承認が続いたのは初めてです。日本のバイオベンチャーの誕生から約10年が経過し、大きな節目を迎えています。

 主力開発品の承認取得により、そーせいなど先行するバイオベンチャーが投資回収期入りすることはほぼ確実となりました。これまでのバイオベンチャーの収益は契約一時金やマイルストーンなど不安定なものでしたが、今後は製品の販売に伴うロイヤリティなどによる継続的な収入が見込めます。

 2012年はバイオベンチャー株の投資にも大きな変化がありました。スリー・ディー・マトリックスを皮切りに、そーせい、カイオム・バイオサイエンスと次々に株価が上昇し、ほぼ年間を通して勢いが衰えることはありませんでした。この結果、当経済研究所で作成しているバイオベンチャー株価指数の年末値は年始に比べ約6割上昇しました。ちなみに日経平均は約2割の上昇ですが、これは11月中旬以降の円安によるもので、その直前で見ると1%強の上昇にとどまっています。もう1つの変化は、バイオベンチャー株上昇の主役が機関投資家だったことです。個人投資家中心のこれまでの相場から見ると、歴史の転換を感じさせられます。機関投資家が注目し始めた最大の理由は損益の変化です。黒字に転換する企業が増え、新産業創造への期待が高まりました。

 提携でも特筆すべき出来事がありました。まず、件数がここ数年の水準を上回ったことです。日本のバイオベンチャーの実力向上と、製薬会社のオープンイノベーションの活発化が背景にあるといえます。もう1つは、創薬基盤技術ベンチャーの活躍が目立ったことです。カイオム・バイオサイエンスが抗体作製技術でGSK社と、ペプチドリームが特殊ペプチド創薬技術でGSK社、AstraZeneca社、Novartis社との契約を実現しました。日本の技術水準の高さを世界が認め始めたようです。

 2013年も引き続き承認や承認申請が国内外で複数予定されています。その代表が、そーせいのCOPD治療薬QVA149の欧州と日本での承認です。2012年はNVA237が欧州と日本で承認されましたが、QVA149はそれ以上の超大型品になると期待され、一段の盛り上がりが予想されます。IPOにも期待がもてます。近年、欧米大手製薬会社との複数の提携や国内外大手製薬会社との大型契約を実現したバイオベンチャーは、いずれも未上場企業です。これらが順次上場すると見込まれます。提携の勢いも増しています。オープンイノベーションを背景に、創薬シーズにとどまらず、基盤技術への評価も国内外で高まっており、提携の話題も数多く聞かれることになるでしょう。

 2012年を通じてより明確化したことは、日本の産業構造の転換、新産業創造の重要性です。円安で一息ついている今こそ、それを急ぐ必要があります。その要となるのがバイオベンチャーであることは疑う余地もありません。新たな産業として立ち上がる可能性が確認できつつあると同時に、育成の意義や育成の方向性などが見えてきたからです。日本のバイオベンチャーをビジネスの視点から長年調査してきた経験を活かし、2013年は日本再生を目指したバイオ産業の育成・強化をこれまで以上に支援していきたいと考えています。