明けましておめでとうございます。ここ何年もの間暗いニュースが続きましたが、年末の政権交代を始め、昨年後半から様々な出来事があり、平成25年に新たな時代の始まりを期待されている方も多いと思います。そうした中、何といっても我々を勇気づけた出来事は、iPS細胞を発見された京都大学山中教授のノーベル賞受賞でしょう。

 iPS 細胞とは、人の体から採取した普通の細胞に、たった4つの遺伝子を組み込むことによって体のどのような臓器や組織にもなれる能力を復活させた細胞であり、医療の世界に革命的な変化を起こす可能性を秘めています。これまでの医療は、「癒す」、「緩和する」、「取り除く」など「体が自分で治癒する力」を補助するものであって、決して「治す」ことはできませんでした。病気を治すのはあくまで自分の力です。これに対してiPS 細胞を使って人工的に必要な臓器や組織を体の外で再生し、病気やケガで機能を失った部分と取り替えることにより、これまで治すことのできなかった病気や障害を根本的に治せる可能性が出てきたのです。

 このようにiPS細胞の発見は、人類の幸福にとって極めて大きな貢献であり、ノーベル賞に値するのは当然と言えるでしょう。ところが皆さんも気付いておられると思いますが、受賞された山中先生は、記者会見などで決してガッツポーズをされません。研究者としては最高の栄誉であるノーベル賞を受賞し、研究活動において不動の地位を獲得したのですからもっと喜んでも良いのではないかと思われた方も多いでしょう。

 山中先生によれば、4つの遺伝子を組み込むことでiPS細胞を作成することには成功したのですが、実はどのようなメカニズムで細胞が能力を復活するのかはまだ分からないのです。このメカニズムが解明されないと、ガン化リスクへの対応などの観点から安心して体に戻すことができないのです。

 2006年にiPS細胞の作成に成功して以来、山中先生の元には全国から沢山の手紙やメールが送られてくるようになり、その殆どが「難病に苦しむ私の子供を助けて下さい。」、「医者に見放された私の家族を助けて下さい。先生だけが頼りです。」という内容だそうです。ノーベル賞の受賞によってこうした手紙やメールが更に増えていることは想像に難くありません。
山中先生のガッツポーズは、医者として病に苦しむ患者さんを助けたときに初めて出るものなのでしょう。山中先生が偉大なのは、ノーベル賞を受賞されたことだけでなく、研究者として大成功を納めながらも医者としての本分を決して忘れないことだと思います。我々はともすると目先の成功にとらわれて、もっと大事な目標を見失いがちです。これから世の中が大きく動いていく中で、最終的に何を目指し、今何をなすべきかを常に顧みることの大切さを教えて頂いているような気がします。

 2013年は、経済産業省においても、より多くの国民が再生医療の恩恵を享受できるための望ましい制度のあり方や、再生医療を支える産業群が安定的に存続できるための条件を提示し、厚生労働省や文部科学省と緊密に連携しながらその実現に努めてまいります。

 バイオ関連産業の振興は、病気で苦しんでおられるより多くの患者さんを救うとともに、財政危機に苦しむ政府に救いの手を差し伸べることのできるかもしれない貴重な取り組みであり、更には、日本があこがれの国であり続けるための重要な取り組みであると信じて頑張って参ります。