微生物としての人間 -宇宙船「地球号」
氷期か熱死か? -温暖効果と寒冷効果
自然は逆襲する -滅びゆく動物
五番目の元素 -放射性廃棄物の問題
地球上の人口は限度に来ている。 -エネルギーの借方
地球を傷つけないで

 部屋の掃除をしていたときに本棚の奥にあったのを見つけた、G.R.テイラー著「続・人間に未来はあるか-最後の審判」(みすず科学ライブラリー)の目次の抜粋です。この本が書かれたのは1970年であり、既に40年以上が経過しています。しかし、現在書かれた本と言っても不思議ではない内容であり、今読んでも説得力を感じます。幸いなことに、短期的には人類には未来があったようです。人類は無事に21世紀を迎えることができ、SFでしか予想できなかった科学技術の恩恵を受けています。しかし、長期的に見れば、この本で警告されたような不都合な未来が確実に近づいていることは事実です。

 日本人を含めた人類のほとんどは現代文明に依存した生物なので、その文明の興亡を支えているエネルギーがその人類の命運を決めます。化石燃料枯渇や地球温暖化問題の解決策の1つとして考えられていた原子力への依存には限界があることが明確になった以上、日本の科学技術者は総力を上げて再生可能エネルギーの開発を行う必要があります。バイオマスエネルギー開発には多くの期待が寄せられ、多くの予算が投入されています。しかし、その経済性や問題が指摘されていることも事実です。また、バイオエネルギー開発研究を担うバイオテクノロジー研究者がエネルギー問題研究に不可欠なエネルギー収支や経済性などを理解していないと感じることも多いです。2013年こそ、多くの研究者が問題の本質を理解し、可能な限り優れた技術を開発するために英知を結集する年になることを祈っています。

 さて、この本の原題は「The Doomsday Book:Can the World Survive?」であり、続と付けたのは日本の出版社の都合のようです。その前著である「The Biological Time Bomb」の日本語訳が「人間に未来はあるか-爆発寸前の生物学」です。少々Negativeな面が強調されているような印象ですが、こちらも見事なまでに生命科学の進歩とその問題を見事に予測しています。G.R.テイラーはBBC放送で科学番組を担当したジャーナリストです。現在社会が科学技術に依存している以上、科学技術を客観的に評価するジャーナリズムが重要です。海外ではG.R.テイラーの他、多くのサイエンスジャーナリストが活躍しています。

 しかし、日本ではサイエンスジャーナリズムが未成熟であり、ジャーナリストとして個人名で戦えるのは日経BPの宮田満さんくらいです。残念ながら、ほとんどの記者が研究者の話を代弁しているだけのようです。日本の科学技術がさらに発展するためには、その研究力に対応したサイエンスジャーナリズムの成熟が不可欠だと思います。

 山中先生ノーベル賞受賞決定の後に世間を騒がせた偽iPS臨床実験報道は日本のサイエンスジャーナリズムの欠如を如実に示しています。新聞報道により研究が評価されるという事実をジャーナリストは真摯に受け止めて、その専門家を育成することを真剣に考えるべきだと思います。最先端の科学を理解し評価するには、最先端の研究を行った経験が不可欠です。人材育成には時間がかかるので、早急に博士学位取得者がジャーナリストとして活躍するようなキャリアパス設定が不可欠だと思っています。

 私が所属する東京農工大学は、博士課程教育リーディングプログラムの「複合領域型(環境)」に「グリーン・クリーン食料生産を支える実践科学リーディング大学院の創設」の事業を申請し、採択されました。環境・エネルギー問題を食料生産という切り口で考えることで、人材の育成を行います。2013年度はこのプログラムの責任者の1人として、環境・エネルギー問題に関わっていきたいと思っています。