皆様こんにちは。水曜日のコラムを担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 まず、急なお知らせとなりますが、社内の人事異動により、2013年1月1日付で日経
バイオテクの編集長を交代することになりました。新編集長は、日経メディカル別冊
編集部編集長の関本克宏が務めます。私は日経ドラッグインフォメーションという
薬剤師向きの雑誌の編集長を務めることになりました。

 日経バイオテクの編集長に就任してからまる7年、休刊した日経バイオビジネスの
副編集長となってバイオ分野の取材を開始してからだと11年強の長きに渡って、皆様
には大変お世話になりました。日本の産業分野の中でも、バイオ分野は間違いなくこ
れからの成長の牽引車であると確信しています。これまで私は医薬品や再生医療製品
などの研究開発を主要な取材テーマとしてきましたが、昨今のトレンドとしては、医
薬品の市販後に安全性をしっかりウォッチしながら新しい有効性を探っていくことが
重要になってきています。今回の異動先でどのような仕事に携われるのか、実はまだ
ピンと来ていないところもありますが、現場で医薬品がどのように使われているのか
を勉強するいい機会を得たと考えています。

 さて、先週木曜日には日経バイオテクプロフェッショナルセミナー「日本発・創薬
革命」を開催しました。ご来場いただいた方には御礼申し上げます。

 このセミナーでは、日本のバイオベンチャーとそのエコシステムについてをテーマ
に議論しました。日本はバイオベンチャーの育成がうまくいっていないと言われます
が、日本でもしっかりとした技術、ビジネスモデルを有するバイオベンチャーが育っ
てきています。また、製薬企業はオープンイノベーションと称して、以前に比べれば
バイオベンチャーとの提携を考えるようになってきています。政府の支援・振興策も
あり、日本はバイオベンチャーが生存できないような環境では決してありません。し
かし、しっかりと根付いてバイオ産業発展の牽引車になれるかというと、まだ十分で
はないということで、バイオベンチャーが育っていくために、その環境はどうあるべ
きかということを議論しようと思ってセミナーを企画した訳です。

 実際、バイオベンチャーを取り巻く環境はこのところ改善が見られ、例えば新規株
式上場(IPO)の話題をとっても、2012年11月末から年末にかけて3社が上場し、年明
け以降も引き続き数社のIPOがあるとうわさされています。ただ、現状のままでいい
のかというと、セミナーでは講師、来場者も含めて多くの方から指摘がありましたが、
課題が山積しているのも事実です。

 ディスカッションでの参加者の議論はどれも非常に面白かったのですが、1つ挙げ
ると経済産業省の江崎課長が言われていた「日本の製薬企業は欧米企業や異業種に比
べて追い込まれ感が足りない」という点です。だからビジネスモデルも変えようとせ
ず、バイオベンチャーなどへの投資ももう1つ積極的ではないというわけですが、ゲ
ノム科学や細胞工学などのサイエンスが急展開する中で、従来のビジネスモデルのま
まで製薬企業が生き続けられるのかというと大いに疑問を感じています。ぜひとも製
薬企業、バイオベンチャーだけでなく、投資家や周辺サービスをする企業や専門家の
知識やノウハウも混ぜ合わせながら、バイオ産業が大きく飛躍していくことを期待し
ています。

 セミナーの最後に、公的セクターによる支援の在り方について私見を言わせていた
だいたのですが、少し言葉足らずな面があったのでここで改めて書かせていただきま
す。現状においてバイオ産業は、政府や自治体による支援がなければ発展していくの
は困難です。また、ここ十数年ぐらいのスパンで振り返ると、最初は何もなかったと
ころに「大学発ベンチャー1000社計画」などの名の下にベンチャー企業だけが設立さ
れ、それでは続かないということで、例えばベンチャー向けのオフィスや研究施設の
建設、経営サポートのコンサルティングサービスの提供など、政府・自治体による手
厚い支援の手が差し伸べられることによって環境が整備されてきた状況だと思います
。それでも資金面などまだまだ不足している部分はあり、そこは現状でも公的セクタ
ーによるサポートが必要だといわれています。

 ただし、一方で政府のサービスが手厚すぎる結果、民間のサービスのバイオ分野へ
の参入を妨げることになっては本末転倒だと私は思います。幸いにもこのところ、バ
イオベンチャーに対して関心を持つさまざまな分野の専門家の方の間に経験やノウハ
ウが蓄積され、また製薬企業からも多彩な人材がバイオベンチャーの世界に飛び込ん
できて、エコシステムが充実してきていると強く感じます。そして、最終的にはその
エコシステムの中でお金や人材、ノウハウが回転して、公的支援に頼らずに自立して
いく世界を目指すべきだと思います。今ではないのかもしれませんが、いつまでも公
的支援に頼っていては、サスティナブルな世界にはなっていけないでしょう。従って
政府・自治体の方には、エコシステムの充実ぶりを見ながら、例えば自分たちが直接
的にサービスを提供するのではなく、ベンチャー企業が民間サービスを購入するのを
補助する形に切り替えるなどしながら、エコシステム全体を潤すような方向へと公的
サービスの在り方も見直していっていただきたいと考えます。

 まだ書き残したことはたっぷりありますが、医療産業を専門とする現場のジャーナ
リストであることには変わりはなく、これからもさまざまな形で皆様に情報発信して
いきたいと考えています。このメールマガジンおよび日経バイオテクONLINEで拙文を
お読みいただいた皆様には本当に感謝しています。これからもご指導・ご鞭撻いただ
ければ幸いです。

 皆様どうもありがとうございました。

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                    日経バイオテク編集長 橋本宗明