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ノックアウト動物の成果は再吟味が必要では、福岡の学会に1万人
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 毎月第1金曜日と第3金曜日、第5金曜日の日経バイオテクONLINEメールの編集部原稿
も担当しております日経バイオテクONLINEアカデミック版編集長の河田孝雄です。

 先週火曜日(2012年12月11日)から日曜日(12月16日)まで福岡市で開催されたバ
イオ最大の学会には、1万人が集まりました。それぞれの事務局のうかがったところ
参加者数は、11日から14日までの第35回日本分子生物学会年会が6700人、14日から
16日までの第85回日本生化学会大会が3700人です。単純に合計すると1万400人でし
た。ただし学生会員はいずれか1学会の登録で両方の学会に参加できたので、両方の
学会に参加した学生1人を2とカウントするのであれば、さらに多い参加者数という
ことになります。全6日間のうち後半(多くは生化学会)を取材しましたが、発表演
題数がとても多く、口頭発表の会場も混雑でメモがとりにくい会場もあったりと、
盛況だったと思います。

 オートファジーやプロテアソーム、ユビキチン関連や、リン脂質関連のシンポジ
ウムを重点取材しましたので順次記事などに反映してまいります。

 そんな中、生化学会で土曜日と日曜日の夕方行われたフォーラム3つのうち2つ
は、座ってじっくりと発表をうかがうことができました。土曜日は「博士の現状
と未来 博士のためのキャリアデザイン」、日曜日は「わが国における遺伝子
改変動物研究コンソーシアムの取組みと現状」です。

 このうち後者のフォーラムで、改めて感じたことについて少し触れさせていた
だきます。多くのトップジャーナルに論文として多く発表されているコンディシ
ョナルノックアウトマウスなどの成果は、ゲノムDNAの大部分を占める非翻訳領
域に十分配慮できていないものが多いので、成果の一部は再吟味が必要なので
は、と感じました。

 例えば、従来からの遺伝子の定義に基づいて通常の遺伝子ノックアウトを行
った場合には、miRNAが破壊されていて、目的の遺伝子の機能の影響とは異なる
フェノタイプが現れる、といった懸念がつきまとう場合があります。ノンコー
ディングリージョン、RNAスプライシングによるアイソフォーム、エピジェネ
ティクスなどを考慮した解析が必要です。今後の発展が楽しみといえます。

※福岡の学会の関連記事

第35回分子生物学会が福岡市で開幕、12月14日午後からは同じ会場で第85回生化学会
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121213/165060/

分子生物学会と生化学会の市民公開講座「進化する生命科学」に500人、
福岡県高校理科部会生物部会が共催
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121218/165144/

福岡の生化学会、フォーラム博士キャリアでJ-オイルミルズと三菱化学、
ロシュが発表、12月16日は遺伝子改変動物と研究マネジメント
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121216/165091/

 もう1つ、今週月曜日(12月17日)に科学技術振興機構(JST)が開催したメディ
ア懇談会の話題も少し紹介します。今回のテーマはiPSで、JSTの中村道治理事長が、
スウェーデンで行われた山中伸弥・京都大学教授のノーベル生理学・医学賞の受賞
式の様子などを紹介したのに続き、iPS関連CRESTのアカデミア研究者4人が話題提
供を行いました。
 CRESTの研究総括を務める須田年生・慶応義塾大学医学部教授が「iPS研究の今後
の展開」、CREST領域アドバイザーを務める仲野徹・大阪大学大学院生命機能研究
科/医学系研究科教授が「iPS細胞の未来像:Hopes、Hypes and Hurdles」、CREST
研究代表者の花園豊・自治医科大学分子病態治療研究センター教授が「iPS細胞研
究:マウスからヒトへ」、CREST研究代表者の井上治久・京都大学iPS細胞研究所
准教授が「iPS細胞技術を用いた神経変性疾患研究」というタイトルで1人10分前
後講演しました。

 このうち花園教授は、日本で自治医大にだけあるMRIによるブタ心機能評価装置
を用いた心筋梗塞に対する幹細胞治療のブタモデルや、サルモデルの研究を進め
ていることを紹介なさいました。iPS細胞にはナイーブ型とプライム型とがあり、
マウスES細胞やマウスiPS細胞はナイーブ型だが、通常の手法で作製するヒトiPS
細胞やブタiPS細胞、サルiPS細胞はプライム型であることに注意すべきと指摘な
さいました。花園教授らはヒトやブタ、サルについてナイーブ型を作製できる新
たな手法を開発することに成功したとお話しでした。「どうせバンキングするな
ら、正しいiPS(ナイーブ型のiPS)で進めるべきと思っている」と花園教授。
この技術の詳細は論文未発表のため明かせないとのことでした。

JSTがメディア懇談会を開催、iPSテーマに須田年生教授、仲野徹教授、花園豊教
授、井上治久准教授が話題提供
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121218/165129/

 メール原稿の締め切り時間になりました。最後に、ここ2週間の直接担当記事
のリストを以下に掲載します。

※2012年12月7日から21日の河田担当記事リスト・メール(報道日付の新しい順です)

理研基幹研、細胞携帯の変化をデータベース化した「モルフォベース」で抗がん
剤創薬に寄与
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121221/165200/

理研基幹研、糸状菌のテルペンドールE生合成機構を解明、NARO支援の成果を論文
発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121221/165199/

優しい研究所と九大、ナイシンAと梅エキスを配合した口腔ケア製品を2013年に発売へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121220/165181/

えひめ飲料、βクリプトキサンチン3mg含む飲料「アシタノカラダ」を2013年3月に商品化
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121219/165153/

農水省会議室のβクリプトキサンチンのシンポジウムに100人、えひめ飲料とユニ
チカなど発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121219/165152/

続報、上原記念生命科学財団の上原賞、竹縄忠臣神戸大特命教授と渡邊嘉典東大
教授に決定
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121218/165145/

分子生物学会と生化学会の市民公開講座「進化する生命科学」に500人、福岡県
高校理科部会生物部会が共催
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121218/165144/

日経バイオテク12月17日号「特集」、微細藻類由来のバイオ燃料
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121218/165131/

JSTがメディア懇談会を開催、iPSテーマに須田年生教授、仲野徹教授、花園豊教授、
井上治久准教授が話題提供
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121218/165129/

「皇潤」のエバーライフ、韓国のヘルスケア最大手が買収
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121218/165128/

東大医、ダイオキシン曝露マウスは脳の柔軟性と集団行動に異常、PLOS ONE誌に発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121216/165092/

福岡の生化学会、フォーラム博士キャリアでJ-オイルミルズと三菱化学、ロシュが
発表、12月16日は遺伝子改変動物と研究マネジメント
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121216/165091/

理研BRCと明治薬大、西表島と利尻島の酵母は共通種少ない、PLOS ONE誌に発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121216/165090/

米Washington大、東大他、世界の疾病負担研究2010の成果をLancet誌に7報論文発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121215/165088/

理研PSC他、炭疽病菌は植物成長関与遺伝子群を他の細菌から獲得、全ゲノム解読で発見
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121214/165070/

卵白は筋肉での代謝を高め内臓脂肪を低減、キユーピーと慈恵医大、食総研が
12月16日に学会発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121214/165082/

GLP-1分泌刺激やオートファジー促進、むくみ軽減など、糖転移ヘスペリジンの
新機能が第4回研究発表会で相次ぐ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121214/165064/

第35回分子生物学会が福岡市で開幕、12月14日午後からは同じ会場で第85回生化学会
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121213/165060/

めいらくG中研バイオ開発室、ガス抜きをしないコーヒー焙煎豆は香気成分が
腸管免疫を活性化
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121213/165057/

理研CDB他、構造化照明顕微鏡法で微小管の最先端の構造を解明
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121213/165039/

慢性疲労症候群では血中の自己抗体が脳内に侵入して神経伝達機能が低下、
理研CMIS他がPET定量検査で解明
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121212/165012/

米国栽培ダイズは8割が高オレイン酸品種へ、アメリカ大豆協会が2012年
コンファレンスを都内で開催
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121212/165011/

永井健治阪大教授ら、生物化学発光でライブイメージング実現、Ca2+やcAMP、
ATP検出プローブも
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121212/165010/

乳酸菌飲料が記憶力と集中力を改善、カルピスと中部大がハワイのISNFFで発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121211/165008/

ニホンバイオフーヅ製造が日健栄協GMP認定を取得、宮崎県で初、全国88番目
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121210/164992/

北里大と水産総合研究センター、水産・海洋の包括連携協定を締結
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121210/164991/

【機能性食品メール Vol.73】年内に5万部超、中公新書2174「植物はすごい」は、
すごい
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121214/165083/

【期日前投票】福岡の学会参加の方はぜひ【日経バイオテクONLINE Vol.1819】
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121207/164962/