常春というか、あさっては24度という予報なので初夏のような那覇に向かって、
飛行中です。現在、沖縄はバイオベンチャーの集積地として発展しつつあり、
最近は北海道のリーディングベンチャー企業、イーベックが研究所を那覇に開設、
社長の土井さんは札幌と那覇を毎月往復しております。300万円でプレミア
シート乗り放題の包括運賃を提示した、全日空はさぞ悔しがっていると思います。
十分元を回収しました。しかし、元々、LCC並のサービスしか提供していない
全日空やJALが、西海岸まで往復できる運賃を沖縄便で設定していること
自体が非倫理的だと思います。是非とも、どんどんLCCを導入し、政府の出資
ではなく、市場競争によってわが国の翼の企業体質を改善させなくてはなりません。
土曜日には米子に向かいますが、鶴岡便もそうですがわが国の航空会社の
どちらか1社が独占している路線の儲けぶりは顰蹙ものです。米子便など往復
運賃の設定も無いほどの専横ぶりです。どれだけ地方経済に悪影響を与えて
いるのか?両社は真摯に反省しなくてはなりません。

 さて個の医療です。

 12月6日に東京品川で開催された遺伝子診療学会シンポジウムは、
個の医療が抽象概念ではなく、わが国でも実際に国民医療や医療経済に
影響を与えていることを実感する盛り上がりでした。協和発酵キリンの
頑張りで、いつもは海外からやってきた個の医療の国産化が進みました。
抗CCR4抗体薬は糖鎖改変抗体という革新性に加え、コンパニオン診断薬
の同時承認という制度的な革新も引き起こしたのです。2013年はわが国にとって、
個の医療の元年になったと思います。このメールの読者の努力がやっと結実した
と言えるでしょう。

 勿論、今後続々とバイオマーカーの発見と、それをコンパニオン診断薬として
活用する新薬の開発は第一の課題ですが、そろそろ準備しなくてはならないのは、
個の医療が現在の医療のプラクティスや病院の組織をどう変えてしまうのか、
あるいはどう変えるべきなのか?というシステム開発です。今までの病院の組織や
ビジネスモデルを変えなくては、折角の技術突破である個の医療も普及しません。
個の医療に対応した病院の組織改革は喫緊の課題です。病理や検査部との
連携、ゲノム解析やバイオバンクの構築に対する患者の許諾を説明するシステム
など、やるべきことは山のようにあります。国立がん研究センター中央病院が
わが国でも先行しており、是非ともこれを研究していただきたいと思います。

 病院が個の医療の機能不全に陥ると、情報不足や訓練不足の医療関係者
によって、コンパニオン診断の結果を適切に解釈したり、利用出来ない場合、
皮肉にも患者の治療機会を失ったり、無駄な高額医療にも繋がりかねません。
まず着手するのはバイオの基礎、メンデルの法則すらまともに教育されていない
医師や医療関係者の再教育です。しかも、彼らの献身的な激務で日本の
医療は支えられています。勉強する時間は深夜にしか残されていない現状です。
加えて、今年4月から施行された製薬企業の自主規制(透明化ガイドライン)
によって、MRの武器であった接待にも上限が設定され、わが国ではMRが医師と
面談が出来ない状況も誕生しています。世界的に見ても我が国の医師当たりの
MR数は異常な多さです。現在、ブロックバスターの特許切れによって、ここ数年
米国では1000人単位でMRの削減が進んでおり、日本の異常さが際立つ
ばかりです。MRによる白兵戦で個の医療の情報を伝えようとすること自体が
間違いであると、私は考えています。これが薬価の上昇を招き、個の医療の
普及を阻む壁であることに、製薬企業はもう気は付いても良いはずです。

 新しい酒には、新しい革袋。

 個の医療の発展のためには、新しい情報伝達システムが不可欠なのです。
現在、開発しているコンセンサスエンジンはウェブ上で専門医が10数人参加、
討議を通じて、情報を仕分け、コンセンサスを形成するシステムです。コンセンサス
エンジンは個の医療を展開する鍵を握っていると考えています。実際、大腸がん
に対する抗EGFR抗体の個の医療に関して、KRASの突然変異(コドン13も)の
問題や、「ハーセプチン」の胃がん適用拡大の時のコンパニオン診断薬であった
HER2の免疫染色法やIn situハイブリダイゼーションの結果の臨床的な解釈と
利用上の注意なども、乳がんと比較しながら議論するなど、個の医療を前に
進めることに多少は貢献したと考えています。
https://bioce.nikkeibp.co.jp/consensusengine/
https://bioce.nikkeibp.co.jp/breastcancer/

 明日の晩は、コンセンサスエンジンを地域医療の向上に役立てるべく、
コンセンサスエンジン乳がん in Osakaを開催します。大阪の30人以上の
乳がんの専門医がバーチャル討議に参加いたします。私も那覇から参加
いたしますが、今からどうなるか?どきどきしております。現在のところ、
参加は医療関係者でかつ大阪地域の方に限っております。参加希望の方は
下記のサイトから事務局にご連絡願います。
https://bioce.nikkeibp.co.jp/breastcancer-osaka/

 個の医療をテーマにしたコンセンサスエンジンも当然考えられると思います。
皆さんと個の医療の新しい情報基盤を形成することを夢見ております。

 今週もどうぞお元気で。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満