氷点下の室蘭に滞在しております。

 久しぶりに氷を割りながら歩こうと思いました。透き通って薄そうな氷がまったく割れない。急速凍結による気泡発生の抑制のためか、薄氷のように見えた氷が底まで凍っていました。小選挙区制度+ブロック毎の比例代表選挙制度がこれほど比較優位の政党の地滑り的圧勝を招くとは。昨夜の選挙結果の感想です。支持率や比例にたいする投票率では決して自民党は勝ってはいませんでした。むしろ、民主党の自壊と政党の乱立に助けられたというのが事実です。安倍総裁の顔に歓びではなく、憂いが増したように思うのは思いすぎでしょうか?いずれにせよ、この制度下では国民の過半の合意によって政権担当政党が交代するという二大政党制度とは異なる変動が起こることが明かとなりました。政権を取る自民党が改憲に踏み出せば、再び政党分裂し、液状化する可能性を秘めています。そろそろ国民の直接投票による重大課題の選択も制度下しなくては、国民の意思と政治の意思が、国民への不満を鬱積するほど乖離してしまう可能性があります。政権交代を単純に喜んだことも反省しておりますが、これほど極端に議席が集中すると、小選挙区制度の改定も議論すべきであると思っております。しかし、絶対多数を獲得した与党がこれを発議する理由もなく、もう一回、与党が自壊でもした後の選挙で少し私たちが賢くなれるチャンスが訪れます。それまで春を待つのか、あるいは心ある議員に期待すべきなのか?誠に悩ましいところです。

 さてバイオです。

 再生医療に関する我が国の前のめりの姿勢には目を見張るものがあります。

 2012年12月14日午後4時から厚労省で開催された厚生科学審議会科学技術部会再生医療の安全性確保と推進に関する専門委員会で、厚労省が次の通常国会で3本もの再生医療関連法案の成立に期待していることが公開されました。

 第一が薬事法改正です。再生医療を医薬品と医療機器に次ぐ、別章立てで特に取り扱い、許認可に関しても、再生医療では安全性を証明・担保した後は、条件付き承認を認める考えを提示しました。販売しながら最終的な有効性と安全性に関するデータを集めて、正式承認しようという狙いです。私はこれには余り賛成ではありません。こんな荒技を認めているのは韓国だけですし、韓国では保険償還の対象になかなか再生医療はならない状況にあります。国民皆保険を堅持しようというなら、こんな中途半端な仕組みは作らぬ方が良いと思います。むしろ、評価医療制度と組合わせて、つまり先進医療Bで有償臨床研究の扱いで行うべきでしょう。企業治験を薬事審査で条件付き承認した後は薬価をつけず、先進医療Bで有償臨床研究を薬価算定のためと最終審査のために行うというのが、ぎりぎりの妥協かもしれません。但し、有償臨床研究をだらだらすることは好ましくないので、臨床評価期間をきっちり定め、最終的な評価を行い、是々非々で最終認可と保険薬価収載を行うべきであると考えます。

 再生医療だけを別章で扱うことも問題があります。自家は医療用具・機器で審査可能ですし、他家で薬効を主張する場合でも、生物製剤で審査することが可能です。むしろ、今まで蓄積した医療用具・機器や生物製剤の薬事の智恵を活用することの方が重要であると考えます。細胞を審査する経験がないということがその理由かも知れませんが、血小板製剤や輸血など既に他家の細胞でも私たちは商品化している経験があることを忘れてはなりません。

 加えて、12月14日の再生医療安全委員会で最大の問題は「再生医療という言葉は適切ではない。細胞医薬というべきではないか」という論争でした。大阪大学は医師主導治験で低分子の再生誘導薬を近く開始いたします。再生医療という名前は非常に広範な様態の医薬品を対象にせざるを得ません。その点でも、再生医療を別章にすることは、普遍性と妥当世を欠くと考えざるを得ないと思います。是非とも、後顧の憂いを除くために、再考することが必要です。

 第二の再生医療関連法案は、自民公明民主が三党合意して提出したものの、突然の解散によって審議未了となった「再生医療基本法」です。これは基本法なので安全を確保しながら、再生医療の早期実現を支援しようといった基本方針を定めたものです。再生医療の全体のフレームを決める意味があります。前臨時国会では成立しませんでしたが、自民党政権かで議員立法として再び成立を目指しています。

 そして第三の関連法案が、12月14日の再生医療安全委員会でそもそも練られている”再生医療適正化法案”(仮)です。現在、医師法と医療法の医師の裁量権により、病院やクリニックで行われている再生医療の安全性を確保し、再生医療に対する国民への啓蒙を図る法案です。委員会の目的として、薬事法と同等の安全性確保を目的としております。これによって、現在、病院やクリニックで安全性も不確かでしかも薬効も科学的に証明されていない、再生医療もどきを数百万円も患者さんが支払って施術を受けるという異常な状況が正されると期待しています。国家が再生医療を推進するならば、再生医療もどきの取り締まりは避けて通れないと考えています。今の状況では、薬事申請を志した再生医療ベンチャーが膨大な労苦と資金を投入してもなかなか収益が上がらないのに反し、再生医療もどきは安易な金儲けの手段に堕してしまっています。再生医療もどきを標的とした再生医療ベンチャー企業も続々と生まれており、悪循環が始まっています。ここまで技術開発が進み、国民的期待も膨らんだ以上、法律によって悪循環を絶ち、先進医療Aや薬事審査へと誘導する時が来たと判断しています。最終的には、薬効と安全性が確保された再生医療が保険収載され、国民の再生医療への知識が浸透して、安易な再生医療もどきに騙されなくなることも理想です。

 今週もどうぞお元気で。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満
ご連絡は、https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/