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 糖転移ヘスペリジン・ビタミンP研究会の第4回研究発表会が2012年12月12日に大阪市で開催され、90人ほどが参加した。糖転移ヘスペリジンは、2012年7月に伊藤園や大正製薬が相次ぎ、これを配合商品を中性脂肪高め対策の特定保健用食品(トクホ)として発売してヒット商品になるなど、注目度が高まっている。今回の研究発表会では、北海道大学大学院農学研究院の原博教授が消化管ホルモンGLP-1の分泌を刺激する作用、林原研究開発本部応用研究部がPPARγアゴニスト作用を介したオートファジー促進、愛知医科大学医学部生理学講座の西村直記講師が長時間椅座位による下腿部浮腫の軽減など、糖転移ヘスペリジンの新機能に関する発表が相次いだ。

 研究発表会の開会のあいさつは、研究会の会長を務める山下静也・大阪大学医学部付属病院病院教授が行い、閉会のあいさつは、副会長を務める柳田晃良・西九州大学健康福祉学部教授が行った。セッション1「基礎」の座長は研究会の理事である阿部啓子・東京大学大学院特任教授が、セッション2「応用」の座長は研究会の監事である荒井秀典・京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻教授が務めた。研究会の事務局は、糖転移ヘスペリジンを製造している林原の研究開発本部応用研究部内に置かれている。

 北大の原教授らは食品成分のインクレチン作用の研究についても相次ぎ成果を発表している。今回は、覚醒下ラット(無麻酔無拘束ラット)における経口投与、麻酔科ラットにおける回腸投与、それにマウス由来のL-cellモデル細胞株GLUTagの3つの実験系で、糖転移ヘスペリジンが、インクレチンの1つであるGLP-1の分泌を促進する作用を持つことを見いだした。3大栄養素の糖質、たんぱく質、脂質がインクレチン作用を発揮することは先に報告されている。今回は、3大栄養素とは別のフラボノイドに分類される糖転移ヘスペリジンが、GLP-1分泌刺激機能を発揮することを見いだした。ヘスペリジン以外のフラボノイドでは、イソクエルシトリンに弱いGLP-1分泌刺激を確認した。

 林原は、多機能性免疫性T細胞であるHOZOT細胞における核内受容体研究の過程で、抗CD3/28抗体刺激やプロテアソーム阻害剤処理によりPPARγたんぱく質の角膜周辺に、異常たんぱく質が蓄積したアグリソームが形成されることを見いだした。このアグリソームは、PPARγアゴニスト添加により減少した。そこで、PPARγアゴニスト作用を介して脂肪細胞の分化を促進する作用が知られているヘスペリジンについて検討し、糖転移ヘスペリジンにPPARγアゴニスト作用とアグリソーム形成阻害作用があることを認めた。糖転移ヘスペリジン処理により、HOZOT細胞におけるオートファジーとユビキチン-プロテアソーム系の亢進が認められた、さらに糖転移ヘスペリジン処理によるオートファジー亢進作用は、神経細胞株であるSH-SY-5細胞でも確認された。発表者の鈴木基之氏は、オートファジーの研究者である大隅良典・東京工業大学特任教授が、稲盛財団(理事長・稲盛和夫)の第28回(2012)京都賞を受賞したことも紹介した(「細胞の環境適応システム、オートファジーの分子機構と生理的意義の解明への多大な貢献」、受賞決定発表は2012年6月、受賞は2012年11月)。

 愛知医科大の西村講師は、江崎グリコ健康科学研究所と昭和大学成人看護学との共同研究の成果を発表した。健常成人女性9人に試験飲料摂取6時間後まで椅座位姿勢で安静を保ってもらう試験で、糖転移ヘスペリジンを配合した飲料100mLを摂取すると、下腿部インピーダンスの低下(浮腫の増加)が抑制されることが分かった。足関節周囲長やふくらはぎ周囲長の増加も、糖転移ヘスペリジン配合飲料の摂取で有意に抑制されたことから、浮腫による毛細血管から間質への過剰な液体の透過性が抑制されたと推察している。

 この他、基礎セッションでは東京大学大学院農学生命科学研究科の小林彰子准教授が「ヘスペリジン・ヘスペレチンをはじめとするフラボノイドの腸管吸収」、応用セッションでは東邦大学医療センター大橋病院糖尿病・代謝内科の三松貴子助教が「糖転移ヘスペリジンの抗肥満・抗糖尿病作用のメカニズムの検討」、神戸学院大学栄養学部の佐々木康人准教授が「脳卒中易発症高血圧ラットにおけるヘスペリジン、糖転移ヘスペリジンおよびナリンギンによる高血圧と実験的脳血栓形成の抑制作用」と題した発表を行った。三松助教が発表した成果は、春まで所属した東京大学医学部付属病院糖尿病・代謝内科で行った内容だ。