皆様こんにちは。水曜日のコラムを担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 米Amgen社がアイスランドのdeCODE genetics社を買収しました。deCODE社は、世界最大級のゲノム解析設備とゲノムデータベースを有し、疾患に関連する遺伝子多型や創薬標的となる遺伝子の研究で数多くの成果を挙げてきたことは、今さら説明の必要もないかと思います。09年11月に一度破産の憂き目にあいましたが、その後、投資ファンドの下で非上場企業として再建を果たし、疾患関連遺伝子などの科学的な発見を高い頻度でNature誌などに報告しています。

 そのdeCODE社を傘下に入れることで、Amgen社は個別化医療時代に有利なポジションを得たのは確かでしょう。単に創薬標的となる遺伝子を同定する能力を得ただけではなく、医薬品の有効性や安全性と遺伝子多型などとの関係を解析することで、個別化医療のけん引役となる可能性があります。Amgen社がこれに続いてどのような手を打ってくるのかが大いに注目されます。

 Amgen社、deCODE genetics社を4億1500万ドルで買収
 https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121211/164998/

 話は変わりますが、昨日、バイオベンチャーのUMNファーマが新規株式上場(IPO)しました。バイオベンチャーに対して黒字化を求める日本の株式市場で、2014年12月期までは赤字が続くと見られる同社がどのように評価されるのか気になっていましたが、1300円の公開価格に対して初日の終値は1349円で、まあなんとか合格点といったところでしょうか。

 UMNファーマが上場、終値は公開価格超える1349円
 https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121212/165016/

 UMNファーマのことをかいつまんで紹介すると、米Protein Science(PSC)社から季節性インフルエンザワクチン、H5N1インフルエンザワクチンなどの日本における開発権、製造権、販売権を取得して開発を進めるバイオベンチャーです。PSC社の技術は昆虫細胞を用いてたんぱく質を発現させるもので、この技術を用いてインフルエンザウイルスの外殻たんぱく質であるヘマグルチニンを産生し、これを抗原とするワクチンの開発を目指しています。

 通常の創薬ベンチャーと異なるのは、提携先の製薬企業などに開発・販売権を供与してロイヤルティー収入を得るのではなく、ワクチンを国内で自社製造し、提携先からその販売収入を得ようとしていることです。既に秋田市にワクチンの治験薬工場を整備した他、岐阜県に商業生産用の工場を建設中です。当面、その投資負担によって赤字経営を続けることになりますが、2015年12月期中に見込まれているワクチンの承認取得にこぎ着けることができれば、一気に黒字化して高収益企業になると思われます。問題は、ワクチンの製造販売承認を無事に取得できるかどうかですが、現在、インフルエンザワクチンで国内トップシェアのアステラス製薬と提携し、アステラスが開発コストを負担して開発を進めているところで、昨日には高齢被験者を対象とするフェーズIIIの接種を終えたことを、アステラスと共同で発表しています。

 実はUMNファーマのことは、創業間もない頃からずいぶん長く取材してきました。最初に取材したときはまだワクチンの開発には乗り出しておらず、大学発のシーズなどを導入して開発を目指す、導入開発型の創薬ベンチャーでした。それが米PSC社から導入したインフルエンザワクチンの開発に乗り出し、IHIというパートナーを得るなどしてワクチンの国内製造体制を整備。健康食品や医薬品の受託製造を行うアピ(岐阜市、野々垣孝彦社長)と提携して、製剤化はそこに任せ、ワクチンの原薬製造に徹すると同時に、バキュロウイルスと昆虫細胞(ガの卵巣細胞)を用いた生産系(Baculovirus Expression Vector System、BEVS)の技術などを利用して、バイオ医薬品の研究、製造の受託ビジネスにも乗り出すなど、そのビジネスモデルを柔軟に変容させてきました。その変貌ぶりが、これまでの経営の苦労の跡であり、IPOにまでこぎ着けることができた理由と言えるでしょう。

 さて、これまでに何度かご紹介してきました、12月20日に東京・品川で開催する日経バイオテクプロフェッショナルセミナーに、IPOしたてのUMNファーマにも緊急参加いただくことになりました。急きょ決まったことで、プレゼンテーションの時間を十分にお取りすることができないのですが、10分程度プレゼンテーションしていただいた後、パネルディスカッションに参加していただきます。セミナーはまだ少し余裕がありますので、UMNファーマに興味がおありの方はぜひ、この機会にご参加ください。皆様の参加を心よりお待ちしています。

 https://bio.nikkeibp.co.jp/article/information/20121030/164028/?1212

 本日はこのあたりで失礼します。

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                    日経バイオテク編集長 橋本宗明