まずは、11月26日に品川で開催するゲノムコホート/バイオバンクのセミナーにスポンサーのご厚意に甘え、大学生と大学院生を参加費無料で招待することを決定したことをお伝えいたします。どんな研究を行っていても、ヒトに研究成果を還元し、社会に貢献しようと思うなら、ゲノムコホート/バイオバンクに関する知識は不可欠です。また、多くの患者や住民の参加を実現しなくてはならない、コホート研究は、市民と一緒に科学を発展させるという、今までの実験室に引き籠もって研究する生命科学研究とは一線を画す、新しい研究手法です。是非ともこの手法も学んでいただければ、21世紀のサイエンスを発展させる君たちの栄養となることは間違いありません。本日夕方より募集開始です。どうぞ下記より詳細にアクセスして、奮ってご参加願います。

 一般の方の受付も有料ですが継続中です。このメールを受信している読者には特別割引がありますので、どうぞ奮ってご参加願います。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/information/20121015/163764/

 このメールが届くころは、ParisからSoul経由で羽田に戻る飛行機の上だと思います。OECD(経済開発協力機構)の渋い予算と私のわがままの結果、羽田発は朝の6時25分、羽田着は23時30分の2泊4日の弾丸ツアーとなりました。さすがに直行便と比べて7時間も長い旅程にはうんざりしています。溜まっていた原稿もはかどるはずです。OECDのBiotechnology Forumに関しては日経バイオテクOnlineの月曜日のメールでご報告します。受信損ねても、日経バイオテクOnlineのサイトでWmの憂鬱で検索していただければ全文無料でお読みいただけます。
http://passport.nikkeibp.co.jp/bizmail/p-med/index.html
https://bio.nikkeibp.co.jp/

 Parisに到着した晩に、米Genentech社よりメールを受信しました。中外製薬が開発、現在、同じスイスRocheグループのGenetech社が海外で臨床開発している「アクテムラ」(トシリズマブ、抗IL6受容体抗体)が、ライバルである「ヒュミラ」(アダリムマブ、抗TNFα抗体)を比較対症薬としたリウマチ患者のフェーズ3試験(ADACTA)で統計学的に有意に有効性(DAS28など)を証明したというプレスリリースでした。地球の反対側の米国Washington DCで開催中の2012 American College of Rheumatology (ACR) で、2012年11月11日に詳細を発表しました。

 今回の試験は抗体医薬単剤の試験です。メトトレキサートの併用は無く、まさに治療標的の異なる抗体医薬の一騎打ちの試験です。メトトレキサートの副作用のため、リウマチ患者の3分の1は使用を中断するため、こうした患者さんを想定した実際的な治療法の検証でもあります。もう一つの注目は、ヒト化抗体VS完全ヒト抗体の対決でもありました。主に関心は患者に発生する抗抗体医薬抗体の量と中和活性ですが、これはもう少し先の後解析に結果を待つしかありません。アクテムラが8mg/kgを4週間に一度静脈投与、ヒュミラは40mgを2週間に一度皮下注射するという、患者のQOLの違いもあります。QOLの差が有効性の差を合理化できるかどうか?今後の営業戦略にも影響を与えるでしょう。

 有望医薬の一騎打ちの臨床試験は通常、製薬企業が嫌うところですが、患者にとっては極めて貴重な情報を提供します。背景にはGenentech社が遅れて市場参入したため、ヒュミラとの一騎打ちで有効性を示す営業上の必要性があったと思います。しかし、今後多様な創薬標的に作用する新薬がどんどん登場します。こうなると医師が薬剤を選択するための情報は、創薬標的が同じなら申請に必要な臨床試験の比較データから得られるものの、創薬標的のことなる医薬品との併用、そして中でも一騎打ちのデータはなかなか企業の臨床試験では企画されない傾向があります。エビデンスベースドメディシンといっても、実際の臨床現場に必要なデータは穴だらけなのです。唯でさえ、臨床開発のコストが製薬企業の収益を圧迫している現在、患者の多様性や治療薬の併用の多様性などを全てフェーズ3臨床試験でカバーすることは、経済的に不可能です。個の医療に近づけば近づくほと、とてつもない臨床開発費用がかかり、その結果、とんでもない薬価となり、誰にも処方できないというジレンマがあるのです。

 それを解決するのは、有効性や副作用の有無を投薬前に予測するバイオマーカーです。今回のGenentech社の臨床試験では残念ながらこのバイオマーカーを組み入れた臨床試験ではありません。どちらかというと古典的な比較臨床試験でした。将来、個の医療が進めば、特定のバイオマーカーで絞り込まれた患者集団に対して、アクテムラが比較優位、あるいは別の患者集団に関してはヒュミラが比較優位といった棲み分けに進むだろうと推定しています。創薬標的が違えば、同じ疾患の市場でも、平和的共存が可能になるという訳です。お金がかかる古典的な比較臨床試験よりも、バイオマーカー探索こそが優先されるべき課題であると思います。

 さて、冒頭にもご紹介しましたが、11月26日午後から品川で、バイオバンクとゲノムコホートのセミナーを開催いたします。バイオ支援企業ばかりでなく、診断薬企業、製薬企業、臨床試験の支援企業、ICT企業そして政府・自治体関係者など、是非ともご参加願います。今ならネットワークを形成し、共通理解の下にわが国のバイオバンクとゲノムコホートを、創薬や診断薬、さらには新しい健康サービスを開発する国際的にも競争力のあるオールジャパンの21世紀の知識産業のインフラとして構築することが出来ます。

 どうぞ下記からアクセスの上、お早めにお申し込み願います。
http://nbt.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/121126/

 今週もどうぞお元気で。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

ご連絡は、https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/