毎月第1金曜日と第3金曜日、第5金曜日の日経バイオテクONLINEメールの編集部原稿も担当しております日経バイオテクONLINEアカデミック版編集長の河田孝雄です。

 今回はノーベル賞関連の話題を中心にお届けします。昨日(10月18日)は科学技術振興機構(JST)で中村道治理事長の定例記者説明会(毎月開催)があり、中村理事長は冒頭の数分間、ノーベル生理学賞・医学賞の受賞が決定した京都大学の山中伸弥教授とJSTとの関係などを説明しました。

山中教授のノーベル賞受賞で「まさに教科書を書き換える大きなイノベーションが我々の課題」とJST中村理事長
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121018/163850/

 山中教授とJSTとの関係は、JSTの戦略的創造研究推進事業チーム型研究(CREST)で03年度に山中氏が研究代表者になったのが最初。山中氏は、CRESTの研究領域「免疫難病・感染症等の先進医療技術」における研究課題「真に臨床応用できる多能性幹細胞の樹立」の研究代表者を務め03年10月から09年3月まで実施しました。この研究領域の研究総括を務める岸本忠三・大阪大学教授がこのCREST研究領域の3年目の最終新規で山中氏の提案を採択しました。この採択から3年後の06年に、山中氏らはマウスiPS細胞樹立の成果をCell誌で発表しました。

 「山中教授の成果は、まさに教科書を書き換える画期的な大きなイノベーション。教科書を書き換える大きなイノベーションを続いて生み出していけるように目指していく。それが我々の課題だ」と中村理事長は話しました。

 中村理事長は「山中伸弥博士のノーベル生理学・医学賞受賞をお祝いして」と題する理事長あいさつを、10月10日付けで発表しました。この理事長あいさつで、研究支援をしてきたJSTの立場から、山中博士の成果は次の2つの意義があると指摘なさっています。

 1つは、iPS細胞を用いて、難病の原因を解明することにより、ALS(筋萎縮性側索硬化症)などの治療への展開が進むこと、もう1つは、卓越した基礎研究から大きな社会経済的価値の創出を目指しているわが国の科学技術施策を代表する大きな成功例が、山中博士の成果をもとに生まれようとしていることです。

 10月18日に定例説明会では、JSTの中村道治理事長が「ナノテクノロジー・材料分野を中心とした新たな研究開発システム構築に向けて」と題した説明を行った後、東京大学大学院工学系研究科応用化学専攻の橋本和仁教授が「グリーンイノベーションに向けたナノテク・材料分野研究者の役割」と題した発表を行いました。

ナノテクで微生物燃料電池の電流発生能が200倍、橋本和仁東大教授がJST理事長定例説明会で解説
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121019/163853/

 橋本教授は1989年に、酸化チタン電極と白金電極を用いて水を光分解するという本多・藤嶋効果を1972年に発表した藤嶋昭・東大工学部教授(現在は、東京理科大学学長/東京大学特別栄誉教授/神奈川科学技術アカデミー最高顧問)の研究室に講師として赴任し、酸化チタンの建築材料への応用など、酸化チタンの研究に取り組みました。東大はトイレが汚かったので、酸化チタン薄膜の微弱光下光触媒反応で汚れや細菌を分解してトイレをセルフクリーニングできるようにしようと「いわばジョークで」TOTOと共同研究を開始しました。現在では酸化チタンを利用した建築材料の実用化は広がっており、丸の内ビル、ダラスフットボール場、ルーブル美術館ピラミッド、中部空港、ポンビドーセンターなど著名な建物にも利用されています。

 科学的発見を経済・社会的価値へ転換するため、光機能材料研究会を私的な組織として94年に設立(会長:藤嶋氏、代表幹事:橋本氏)、人的ネットワークを構築して研究の初期段階からマーケッティング担当者も入れた情報交換の場を設けました。研究会の法人会員数は160社を超えた(現在は91社)。「酸化チタンの光触媒反応の発見」で藤嶋学長はノーベル化学賞の有力候補と目されています。

 この酸化チタンでの経験が、微生物燃料電池への取り組みで大きな力になっていると、橋本教授は話した。分子生物学の知識の爆発を、ライフサイエンス分野だけでなくエネルギー分野にも活用すべく、微生物燃料電池の研究に着手したとのことです。

 当方は、ノーベル化学賞が発表になった日本時間の2012年10月10日18時45分には、東京理科大学の神楽坂キャンパスの大会議室におりました。東京理科大では、16時30分から神楽坂キャンパスの大会議室で報道関係者などの受け付けを開始していました。

ノーベル化学賞の発表は日本時間本日18時45分、藤嶋学長が有力候補の東京理科大は16時半から受け付け、酸化チタンはインフルエンザウイルスにも効果
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121010/163683/

 ノーベル賞有力候補者の発表もなされるようになり、有力候補者の組織では、発表当日の準備が大変であることを、改めて現地で感じました。

Thomson Reuters社が11回目のトムソン・ロイター引用栄誉賞を発表、21人のうち日本人は竹市雅俊氏、藤嶋昭氏、春日正毅氏
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120919/163297/

 米Thomson Reuters社の日本オフィスであるトムソン・ロイターは2011年10月20日、2011年10月に受賞者決定が発表された2011年のノーベル賞のうち、同社がノーベル賞有力候補者として毎年発表している「トムソン・ロイター引用栄誉賞」の対象4部門(生理学・医学賞、化学賞、生理学・医学賞、経済学賞)の受賞者9人全てを予測できていたと発表しました。2012年は生理学・医学賞、物理学賞、化学賞の受賞決定者の中で、引用栄誉賞に選ばれていた方は、山中教授お1人でした。

ノーベル生理学・医学賞受賞の山中伸弥教授、06年のCell誌論文の被引用数は4035、hインデックスは35
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121009/163672/

ノーベル賞有力候補者のトムソン・ロイター引用栄誉賞、2012年ノーベル生理学医学賞の山中伸弥教授は的中
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121009/163668/

米Thomson Reuters社のノーベル賞予測、今回は受賞者9人全て的中
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20111020/157312/

 このトムソン・ロイター引用栄誉賞は、論文の被引用数の解析がベースになってます。100年超の引用情報を保有するトムソン・ロイターの学術文献・引用索引データベース「Web of Science」の被引用情報を用いて、論文がどれだけ、どのように引用されているかを客観的かつ定量的なデータを基に分析し、研究の発展や経過を分析します。高品質データを維持することで、並外れた影響力を持つ論文を的確に抽出し、「ノーベル賞クラス」の研究者を特定できるという仕組みです。

 メール原稿の締め切り時間になりましたので、ここ2週間の直接担当記事のリストを以下に掲載します。

※2012年10月5日から10月19日の河田担当記事リスト・メール(報道日付の新しい順に掲載しています)

ナノテクで微生物燃料電池の電流発生能が200倍、橋本和仁東大教授がJST理事長定例説明会で解説
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121019/163853/

理研QBiCとCDB、単純な生化学反応で自律振動子、Cell Reports誌に発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121018/163852/

マンダムと富永真琴教授、TRPM8の反応温度変動の機構を解明、ユーカリプトールは暑い時に有効
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121018/163851/

山中教授のノーベル賞受賞で「まさに教科書を書き換える大きなイノベーションが我々の課題」とJST中村理事長
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121018/163850/

森下仁丹、大阪ものづくり優良企業賞2012で最優秀企業賞、シームレスカプセル製造技術に高評価
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121018/163847/

NCGMなど、ヒトES/iPS細胞の90%以上を機能性褐色脂肪細胞に分化誘導、遺伝子導入は不要
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121018/163831/

続報、カルピスが大会長の第8回食品免疫学会学術大会に300人、2013年の大会長は明治
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121018/163830/

JSTのA-STEP FS探索第2回、グリーン採択264件のうちバイオ関連半数近く、NAROがメタゲノム、静岡大がプロモーター、名大が緑藻、NAISTが麹菌、徳島大がゲノム編集
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121017/163829/

富士フイルム、京都府立大とサラシアの免疫調整作用を実証、インフルエンザ感染時の症状が軽減
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121017/163820/

食品免疫学会、綾部時芳・北大教授と北澤春樹・東北大准教授が学会賞受賞講演、ポスター賞5題は北大、東大・日大、徳島大、韓国FRI、医科歯科大
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121017/163812/

サントリーウエルネスがプロテオグリカン配合美容ドリンクを発売、セサミンリニューアル、クロレラ終売
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121017/163809/

続報、日本食品免疫学会第8回学術大会に130人超、ポスター発表50件のうち企業関連が3分の1強
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121016/163805/

消費者委員会委員の田島眞教授、2013年4月に実践女子大の学長に就任
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121016/163804/

生物工学会、創立90周年記念第64回大会のトピックス集を発表、企業は豊田、キリン、アサヒ、鹿島、バイオジェット、Bio-energyなど
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121015/163779/

林原、80億円で岡山第一工場を移転、年50億円を100億円へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121015/163777/

カルピス、ヒト試験で体脂肪低減を確認した乳酸菌CP1563株、肥満学会発表をニュースリリース
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121015/163774/

【機能性食品 Vol.66】細野豪志氏とABCヘルスラボ、肥満学会
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121012/163746/

京都の肥満学会に1200人、カルピスが乳酸菌CP1563株を口頭発表、森乳がアロエを3件連続発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121012/163742/

「ホルミシス仮説はアンチエイジングの基本」、慶大医の坪田教授がBioJapan2012でセミナー
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121012/163728/

訂正、BioJapan2012、沖縄クラスターセミナーで米PacBio社の1分子シーケンサーの成果も
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121011/163706/

ファーマフーズと広島バイオメディカル、韓国ToolGen社の人工ヌクレアーゼ技術のサービス事業を日本で開始
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121010/163693/

アサヒグループHDとNARO、ショ糖非資化性酵母を利用した逆転生産プロセスでバイオエタノール生産の砂糖収量を大幅増
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121010/163692/

ノーベル化学賞の発表は日本時間本日18時45分、藤嶋学長が有力候補の東京理科大は16時半から受け付け、酸化チタンはインフルエンザウイルスにも効果
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121010/163683/

医科歯科大発のベンチャー、マイクロブラッドサイエンスが食品検査装置を相次ぎ商品化、第一興商とジーテック
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121010/163676/

林原、酵素による配糖化でアデノシンの水溶性を高め生体内の安定性を向上
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121009/163675/

ノーベル生理学・医学賞受賞の山中伸弥教授、06年のCell誌論文の被引用数は4035、hインデックスは35
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121009/163672/

続報、ザクロ成分がサーチュイン遺伝子を増強、森下仁丹と九大が特許出願
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121009/163670/

ノーベル賞有力候補者のトムソンロイター引用栄誉賞、2012年ノーベル生理学医学賞の山中伸弥教授は的中
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121009/163668/

林原とナガセが初の共同出展、糖転移ヘスペリジンや機能性リン脂質など訴求
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121009/163667/

太陽化学、素材の機能をデザインする「Nutrition Delivery System」の訴求を開始
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121009/163656/

カネカ、中性脂肪上昇抑制R037乳酸菌や酵母アスタキサンチンなど発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121009/163654/

オレオサイエンスとグリーン、ライフ革新【日経バイオテクONLINE Vol.1793】
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121005/163640/