こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 米Baxter International社と提携して日本で新型インフルエンザに対する細胞培養ワクチンの開発を進めてきた武田薬品工業が、Baxter社の日本法人と共同で、9月に厚生労働省に対して製造販売承認申請を行っていたことが分かりました。

武田薬品、バクスター、細胞培養インフルエンザワクチンを日本で製造販売承認申請
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20121003/163580/

 といってもこれは、Baxter社のチェコの工場で製造した輸入ワクチンで、国産ワクチンではありません。武田薬品とバクスターのグループは比較的順調に開発が進んでいますが、まだ光工場での生産体制の整備は完了していません。国内製造体制が整い、製造販売承認申請ができるようになるのは2012年度中ということで、まだ半年近い時間がかかります。この間に、仮に新型インフルエンザのパンデミックが発生しても対応しておこうということで、輸入ワクチンを用いた国内でのフェーズII/IIIを行い、承認申請をしたということです。行政を含め、ワクチン関係者にはインフルエンザワクチンの国内生産にこだわる人が多いですが、いつ発生するとも限らないパンデミックに対応できるように輸入ワクチンの申請もしておくというのは、供給責任という観点でも正しいことだと思います。

 一方で、少し前に厚生労働省が新型インフルエンザワクチン開発・生産体制整備事業の評価会議を開催したという話題を記事にしましたが、ここで明らかになったのはバクスターから細胞培養技術を導入した武田薬品、英GlaxoSmithKline社グループと提携し、ベルギーGSK Biologicals社からサブライセンスを受けた細胞などを用いて開発を進める化学及血清療法研究所の2社の開発が順調なのに対して、北里第一三共ワクチン、阪大微生物病研究会の2社は現時点で計画に遅延が見られるということです。

厚労省、細胞培養法ワクチンの中間評価で北里第一三共と阪大微研はB評価、臨床試験の遅延を指摘
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120920/163322/

 この事業は、新型インフルエンザの大流行の発生に備えて、半年で全国民分に接種できるだけのインフルエンザワクチンを国内生産できる体制を、2013年度中に整備しようというものです。厚労省は昨年、武田薬品工業、化学及血清療法研究所、北里第一三共ワクチン、阪大微生物病研究会の4社を採択し、合計1000億円超の資金を交付し、ワクチン製造工場の建設や臨床試験の実施などを進めています。インフルエンザワクチンは従来、発育鶏卵を使ってウイルスを培養し、製造されてきました。しかし、新型インフルエンザのパンデミックが発生してから鶏卵を手配し生産していては、全国民分のワクチンを製造するのに1年半から2年近い時間がかかります。そこで、動物などの細胞を用いてウイルスを増殖させる細胞培養法によってワクチンを生産する体制を整備することになったのです。

 この事業には合計6社が応募し、昨年4社が採択されました。採択された4社はもともと日本でワクチンを製造していたワクチンメーカーで(武田薬品は一時インフルエンザワクチンの製造から撤退していましたが、細胞培養法で再参入することになりました)、ノバルティスファーマとUMNファーマの2社が採択から漏れました。特にノバルティスファーマは既に海外で新型インフルエンザや季節性インフルエンザ用の細胞培養ワクチンを供給してきた実績があるのですが、残念ながら採択されませんでした。そして、4社には240億円から300億円の資金が投じられることになったのですが、前述したように北里第一三共と阪大微研の2社はB評価が付けられることになりました。

 厚労省の資料によると、B評価が付けられた両社に対するコメントとして、「将来の我が国のワクチン産業の発展のためにも、技術開発上の困難を乗り越え、事業の実現が望まれる」と記されています。もちろん日本オリジナルの技術が実用化して、世界の人々に寄与するようになれば素晴らしいと思いますが、国民の健康のために巨額の税金を投入する以上、何よりも重要なのは早く供給体制を整備することであって、日本オリジナルの技術にこだわる必要性がどこまであるのか疑問です。「パンデミックの発生時に輸入ワクチンだと確保できなくなる可能性があるので、国産で供給する体制が必要だ」という主張がありますが、培地や添加剤も全て国内で調達しようとすればコスト高になるのは必至です。ましてや、基盤となる技術を海外から導入することに問題があるとは思えません。法外なロイヤルティーを要求されてコスト高になるならともかく、オリジナルの技術を開発できなければ日本のワクチン産業の未来はないような書きっぷりに大いに疑問を感じる次第です。

 ところで、来週からBioJapan2012が始まります。見どころはいろいろありますが、11日(木曜)に開催されるNEDO「基礎研究から臨床研究への橋渡し促進技術開発」成果報告会は、そうそうたる研究者が登壇して最近のNEDOプロの成果を発表するので聴講し甲斐がありそうです。

NEDO「基礎研究から臨床研究への橋渡し促進技術開発」成果報告会開催のお知らせ(2012年10月11日(木)
https://bio.nikkeibp.co.jp/community/bio_f_seminar.html?guid=4378

 11月に入ると、当編集部でご用意したセミナーが幾つか開催されます。

 11月12日に開催するゲノムデータベースのセミナーは、ヒトサンプルを集めたバイオバンクやデータバンクが果たして創薬や医療に貢献しているのか、創薬や医療により有用なものとするにはどうすればいいのかといったことを、製薬企業、PMDAの方を交えて議論します。

「個別化医療におけるゲノムデータベースの活用─ゲノムデータベースは創薬と医療に役立つか─」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/information/20120323/160215/

 11月26日開催のセミナーは、バイオバンクの標準化に焦点を当てます。

「バイオバンク/ゲノムコホートの連携を目指して─国際的な標準化を踏まえて─」
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/information/20120928/163477/

 この他にも幾つか日経バイオテクプロフェッショナルセミナーの準備を進めています。今後、メールなどで紹介させていただく予定ですのでよろしくお願いします。

 本日はこのあたりで失礼します。

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                    日経バイオテク編集長 橋本宗明