台風一過、新幹線で岡山に向かっています。

 被害に遭われた方も多いと思いますが、猛烈な台風が洗い流した空や山河は美しく秋の輝きをましています。のぞみの窓ガラスが綺麗になったためかもしれませんが、怒り狂う自然に耐えたご褒美ともいえる秋景色は、豊かな稔りの到来と渇水に悩んだ関東が潤ったことを示しています。キリスト教が発生した砂漠地帯では自然はひたすら人類を苛む存在であり、克服する存在でした。自然の峻厳さと優しさを毎年、肌にすり込まれてきたアジアのモンスーン地帯の住民とは考え方が違うのはしょうがない。

 Nature for Human beingという目的で研究が進んで来た一神教文明の科学・技術を、アジアが地球との調和を目指す新しい科学・技術に進化させる責任があると思います。豊かな自然に育まれた多神教文明の科学・技術こそが、肥大する一方の人類の欲望とそれに伴う放埒なエネルギーや物資の消費に歯止めを掛け、地球と共存する道を拓くと確信しています。地政学的そして歴史的にアジア、なかでも140年前に西欧文明を進取したわが国は、有利なポジションにあることを忘れてはなりません。文明開化の時、欧化したことを非難した当時の儒教国家、韓国が今やスマホでアップルと知財紛争を争うまで変貌したことは驚きですが、まだ欧米のフォロワーに過ぎない。韓国を取り込みながらアジアで新しい科学の進化を担うのは日本と、国内が平安であれば中国となることは間違いないでしょう。日本の若き才能達は人口ボーナスの喪失による勤勉であれば誰でもできる経済成長機会を失ったことを嘆くより、独自の創造性で世界に貢献するために汗を掻かなくてはなりません。試練こそが、唯一私たちを鍛える最良の方法であります。遠くアゼルバイジャンのバクーで報道も満足にされず孤独な戦いを強いられている、リトルなでしこU17の女子サッカー日本代表は、昨日のメキシコ戦を9:0で完勝。予選リーグで3連勝、17得点完封で1位通過という快挙で、決勝トーナメントに進出しました。先輩のU20は前回のU17代表の時に、決勝戦で韓国に敗れ、前回のU17ワールドカップで苦杯をなめた経験を是非活かし、正代表と最も若いU17がワールドカップを制することを、遠く日本から祈っております。

 さて、バイオです。

 今朝9時半から、ソニーとオリンパスの資本業務提携に関して両社社長の記者会見が開かれました。既に金曜日に提携の発表自体は行われたためし報道陣は少し冷めていましたが、私はこれはわが国のバイオ産業にとっても画期的な記者会見であったと考えています。家電やエレクトロニクス企業の医療分野への参入がこれにより、わが国でも雪崩を打つと考えるからです。ソニーは今年の中期計画で医療分野を重点分野と発表、積極投資に転じました。2014年度の売り上げ目標500億円、2020年には2000億円とぶち上げています。今朝の記者会見でソニーの平井一夫社長は「2000億円の売り上げの内訳を、今回オリンパスと創設した次世代の手術用内視鏡(ソニーのデジタル技術である4K以上の解像度と3D内視鏡)の合弁事業(ソニー51%株式保有)で3分の1、来月に発売するセルソーターなどライフサイエンス事業で3分の1、残りは周辺事業で稼ぐ」と明言しました。今やイノベーションの袋小路と売り切りのビジネスモデルが招く価格暴落で、収益を挙げられない家電やエレクトロニクスではなく、医療やライフサイエンスで成長を願う気持ちは本当でしょう。2011年度の決算で4567億円の最終損益を記録し、今年8月の2012年度の通期見通しでも、純利益は200億円しか確保できない土壇場のソニーに残された成長分野はそんなに多くないからです。富士フイルム、テルモなど多数の企業を押しのけても何としてもオリンパスの内視鏡技術を確保したかった気迫が、今朝の記者会見で伝わってきました。

 会計処理の不正で窮地に陥ったオリンパスは、自己資本比率が2.2%まで低下する危機的な状況を打破するために、ソニーからの500億円(議決権の11.46%獲得、筆頭株主に)の増資を受け入れました。長期安定株主を確保することによって、買収などのリスクを回避したのです。急速に光学技術から複合電子技術へと、中核技術がシフトした次世代の内視鏡の開発力増強に加えて、デジカメ事業でもソニーからイメージセンサーの供給を受け、一方ソニーにレンズや鏡枠などを供給、生産規模拡大によってコスト削減も狙っています。勿論、現行の消化器内視鏡などオリンパスの収益源は確保した上です。ソニーが注入した500億円は、内150億円で新興国に設立する内視鏡訓練施設に投資、現業の内視鏡(消化器と外科用内視鏡)を新興国で拡販します。250億円はオリンパスが中期計画で成長領域とした外科用内視鏡(電気メスなどエネルギーデバイスを組み合わせた内視鏡)とソニーとの合弁事業で行う新規分野へ研究開発、90億円は合弁企業設立に支出します。オリンパスは未来の成長分野をソニーとシェアし、現業である消化器内視鏡。手術用内視鏡とデジカメで、当面の糊口を凌ぐ戦略です。あれほどの不正会計処理が原因の経営の混乱を収めるには、やむを得ない提携かも知れません。

 ソニーの戦略は誠に正しい。が、この判断はまたしても欧米の企業に遅れること10年であることが悔やまれます。ドイツのSiemens社、オランダPhillips社、そして米国GE社は既に、ヘルスケア分野に参入、診断機器、治療機器、そしてライフサイエンスでがっちり市場を確保しています。わが国の製薬企業が90年代にバイオ医薬ではなく、生活習慣病の低分子薬開発に研究開発を集中させた愚を犯したことと酷似しています。

 こうした戦略的判断の遅れの最大の原因は、終身雇用制に代表されたかつてのわが国の流動性を欠く人材登用と、経営陣の多国籍化・多文化化の遅れだったと考えています。結果的に世界がダイナミックに変化しているので、それを直視せず、”社内鎖国”を世界市場で売り上げを上げているわが国の大企業が続けてきたつけを今、わが国の産業や国家、そして国民が支払わされているということです。この根本的な病を治さないと、わが国は国際競争で、常に後手後手を踏むことになる。オリンパスが登用した外国人社長によって、長年の不正が告発されたことは、わが国の企業風土に変化を促すための衝撃となりました。その意味でも、今朝の記者会見は象徴的でした。

 「変わるチャンスはいくらでも与える。世界が変わっているのに、変わろうとしない人材は生き残れない」 先週、インタビューした武田薬品の研究開発の最高責任者のTachi Yamada氏が強調しました。国籍や文化、そして地政学的な条件を巨大買収と外国人人材の積極的な登用で一変させる猛烈な国際化を展開。今まで超一流企業としておっとりと育ってきた武田薬品の現地採用(皮肉な言い方ですが、日本採用)の社員の心は千々に乱れております。温厚な紳士であるTachiの目が鋭い眼光を光らせたのは、この変化を断固として進めるといった時と、訪れたアフリカで母親の胸で感染症のために出血し死んでいった少年を目前して感得した、製薬企業にはアンメットニーズを解決する責務(同氏はUrgencyという)があると強調した時でした。

 人口減少に直面するわが国では、成長を求めるなら国際化するしかない。医療・医薬やエネルギーなど、21世紀の本質的な成長基盤となる産業はバイオに依存します。バイオの世界で生きていく皆さんにとっても、国際化は不可欠なのです。但し、是非考えていただきたいのは、欧米モデルの踏襲だけで良いのか?少なくとも10年は戦略的は判断が遅れたわが国の企業がおっとり刀で欧米モデルをまねして新興国に進出しても貢献できる確率は極めて低い。多神教の調和を求める新しい科学・技術、そしてビジネスモデルと人材の育成システムを武器に、創造的な企業を構築しなくてはなりません。世界に冠たる国民皆保険制度と世界のどの国より急速に老齢化するわが国の社会は、ここで革新的な技術やサービスを開発できれば、世界市場で勝負ができるはずです。潮垂れた顔で、わが国の悲観的な条件を並べ立てて何もしない、時間的余裕はもはや我々にはないのです。

 さて、では何をすべきか?

 まずは皆さん、10月10日から12日までパシフィコ横浜で開催されるBioJapan2012にご参加願います。このイベントは皆さんの社内鎖国を解き放ち、世界あるいはわが国の若い叡智や異業種の才能とネットワークする絶好の機会です。わが国で開催されている他のバイオの展示会では味わえないオープンイノベーションの世界にアクセスできます。いわばバイオの出島のような空間が誕生しました。

 国際競争力のあるアジア最大のマッチングイベントへとBIOJAPAN2012は成長しています。今回は本気でマッチングソフトの開発に投資したため、BIO以上に円滑なマッチングを実現しています。9月25日の時点で、前回お知らせしたマッチングに参加している企業は120社も増加し、547社が参加しています。国内の主要大手製薬企業は勢揃いしています。会場でブースを設けていないビッグファーマの一部はこのマッチングソフトでだけ面談が可能です。また、会場でのマッチングを効率良く展開するためにも、このソフトは極めて使い勝手が良いものです。昨年のBioJapan2011では800件の面談が実現しましたが、現時点で既にに面談確約は850件を突破、これに加えて面談の申し込みのメールが2000件に上っています。会期内に3000件以上の商談や面談が実現することは間違いありません。

 開幕が迫るにつれ、急速にベンチャー企業や海外なかでもアジアの企業の登録が増える見込みです。是非とも皆さんも、社内鎖国はもうやめて、まずマッチングシステムにご参加願います。今回は有料ですが、それだけに面談の真剣味は増すと思っていただきたい。

 現在までの登録企業の一部は
●グリーンイノベーション分野
 三菱化学、住友化学、東レ、帝人グループ、花王、デュポン、日揮、日本製紙グループ、 ブリヂストン、味の素、協和発酵バイオ、RITE、産総研バイオリファイナリーセンターなど。
●ライフイノベーション分野については、MSD、ノバルティス、サノフィ、ロッシュ(ビジネス マッチングのみ)、ファイザー(同)、日本イーライリリー(同)等のビッグファーマと日本の 製薬企業、武田、アステラス、第一三共、塩野義、中外、エーザイ(ビジネスマッチング のみ)、大塚製薬(同)、科研製薬(同)、小野薬品(同)、
●ベンチャー、アカデミーアも過去最多の参加社数。
●今後、海外の企業登録も増加する予定。
●最新の参加企業一覧(随時更新)
http://www.ics-expo.jp/biojapan/partnering_list.html

 既に会場での面談の予約メールがネット上で行き交っております。ライフイノベーションとグリーンイノベーションを産業化する企業が皆さんとの出会いを求めています。

 くれぐれも出遅れないように、どうぞ下記よりご登録願います。
http://www.ics-expo.jp/biojapan/index.html

 BIOJAPAN2012は充実したセミナーやシンポジウムも従来通り、無料で提供しています。バイオの今と未来を知りたい読者の方にも是非ともご参加いただきたいと願っております。既に14のセミナーが満員札止めです。是非ともお早めにウェブより参加申し込み願います。
http://www.ics-expo.jp/biojapan/seminar_schedule.html

 2012年10月10日から12日、パシフィコ横浜でお会いいたしましょう。
http://www.ics-expo.jp/biojapan/index.html

 そろそろ岡山です。今週もどうぞお元気で。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満
ご連絡は、https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/