毎月第1金曜日と第3金曜日、第5金曜日の日経バイオテクONLINEメールの編集部原稿も担当しております日経バイオテクONLINEアカデミック版編集長の河田孝雄です。前回のメールは先々週の金曜日(9月7日)でした。

 今回はまず、自然科学研究機構の岡崎コンファレンスセンター(愛知県岡崎市)に昨日170人が集まった、第2回ゲノム編集研究会の話題からお届けします。TALENやZFNなどの人工ヌクレアーゼの技術を用いて、さまざまな生物の遺伝子のノックアウトやノックインを実現する研究の最新成果が15件発表されました。そのうち7割から8割ほどは、ゲノム編集研究会を主催する広島大学大学院理学研究科数理分子生命理学専攻の山本卓教授や佐久間哲史・日本学術振興会特別研究員PDらが共同研究などで関わった成果だったようです。

岡崎開催の第2回ゲノム編集研究会に170人、ヒトiPSからモデル動物、魚類、植物まで15件の最新成果
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120921/163324/

 人工ヌクレアーゼ技術として先行したのはZFNですが、設計がしやすく毒性が低いTALENが主流になってきそうです。前回の第1回ゲノム編集研究会が2012年2月に広島で開催されてからわずか7カ月の間に、研究が飛躍的に進んでいることが分かりました。

 「PCR、RNAiに続く生物技術の革命では」と、閉会のあいさつの最初で、徳島大学ソシオテクノサイエンス研究部の野地澄晴教授はお話しでした。野地教授は山本教授らとの共同研究により、人工ヌクレアーゼ技術を用いてコオロギで標的遺伝子を破壊する成果を2012年8月にNature姉妹誌(Nature Communications誌)に発表しました。

ゲノム編集技術でコオロギの標的遺伝子破壊、徳島大と広島大がNature姉妹誌に発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120821/162838/

 2番目の話題は、ノーベル賞です。2012年のノーベル賞発表が近づいてきました。発表日時(中央ヨーロッパ標準時)は、生理学・医学賞が10月8日、物理学賞が10月9日、化学賞が10月10日、平和賞が10月12日、経済学賞が10月15日とのことです。

 ノーベル賞発表が近づいたので、米Thomson Reuters社が、11回目の「トムソン・ロイター引用栄誉賞(ノーベル賞有力候補者)」を9月19日に発表しました。この賞は、10月8日から予定されているノーベル賞受賞者の発表に先駆けて、学術論文の被引用数に基づいた調査により、ノーベル賞有力候補を発表するものです。2011年のノーベル賞受賞者は、生理学・医学、物理学、化学、経済学の4分野の受賞者9人すべてが先に、トムソン・ロイター引用栄誉賞を受賞していたため、この引用栄誉賞の注目度も高まっているといます。

Thomson Reuters社が11回目のトムソン・ロイター引用栄誉賞を発表、21人のうち日本人は竹市雅俊氏、藤嶋昭氏、春日正毅氏
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120919/163297/

 トムソン・ロイター引用栄誉賞は毎年9月に発表されていて、02年に発表を恒例化してから2011年までに162人が選ばれました。このうち26人が実際にノーベル賞を受賞しています。日本人は2011年までに13人が選ばれていました。今回の3人を加えると16人になった。そのうち故人である西塚泰美氏と戸塚洋二氏の2人を除く14人が、ノーベル賞有力候補者ということになります。

 今回は21人が新たな有力候補として選ばれました。21人の国籍は米国13人、日本3人、英国3人、カナダ2人。日本人は、生理学・医学分野で竹市雅俊・理化学研究所発生・再生科学総合研究センター長が「細胞接着分子カドヘリンの発見」というトピックで選ばれた。化学分野は2人。藤嶋昭・東京理科大学学長/東京大学特別栄誉教授/神奈川科学技術アカデミー最高顧問が「本多・藤嶋効果(酸化チタンの光触媒反応)の発見」というトピックで、春田正毅・首都大学東京名誉教授/首都大学東京大学院都市環境科学研究科分子応用化学域特任教授が「金の触媒作用の独自な基盤的発見」というトピックで選ばれました。

 生理学・医学分野では、3つのトピックについて竹市センター長を含め7人が新たに選ばれた。トピックの1つめは細胞接着因子。「細胞接着分子カドヘリンの発見」の竹市教授の他、「細胞接着分子インテグリンの発見」で米国のRichard O. Hynes氏とErkki Ruoslahti氏が選ばれました。竹市センター長のhインデックスは96(2012年9月12日時点)。すなわち被引用数が96以上の論文が96報もあります。

 2つめのトピックは「ヒストン修飾とその遺伝的調節における役割に関する基礎的発見」。米国のC.David Allis氏とMichael Grunstein氏が選ばれました。

 生理学・医学分野の3つめのトピックは「チロシンリン酸化」関連。米国のAnthony R Hunter氏が「チロシンリン酸化の発見、およびシグナル伝達時のプロテインキナーゼの役割に関する研究」、カナダAnthony J.Pawson氏が「ホスホチロシンとSH2ドメインの結合、およびたんぱく質間相互作用時の機能に関する研究」で選ばれました。

 3つめの話題は、メタボロミクスです。米国立衛生研究所(NIH)が2012年9月19日、今年度、メタボロミクス研究に1430万ドルを投資する計画を発表しました。潜在的には今後5年間で5140万ドルを投じる可能性があるとのことです。

https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120920/163314/

 メタボロミクス研究は日本が強みを発揮している分野です。最近では8月末の日本食品科学工学会や9月半ばの日本生薬学会でも、メタボロミクスを活用した注目発表が目立ちました。記事に反映して参ります。

 10月10日から12日には、第7回メタボロームシンポジウムが、山形県鶴岡市の慶應義塾大学先端生命科学研究所メタボロームキャンパスで開催されます。

http://mb2012.iab.keio.ac.jp/

 11月2日から3日には、日本生物工学会のメタボロミクス研究部会が「メタボロミクス講習会2012」を大阪大学吹田キャンパスで開催します。

http://www.sbj.or.jp/news/division_metabo_forum_20121102-03.html

 メール原稿の締め切り時間になりました。この1週間で直接まとめた記事リストを掲載します。ご参考にしていただければ幸いです。

※2012年9月7日から9月21日の河田担当記事リスト

岡崎開催の第2回ゲノム編集研究会に170人、ヒトiPSからモデル動物、魚類、植物まで15件の最新成果
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120921/163324/

「ストッパ下痢止めEX」の承認を6月に取得したライオン、生薬ロートエキス中の総アルカロイド迅速定量法を確立
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120920/163323/

武蔵野大薬、FD-LC-MS/MS法によるたんぱく質網羅的解析でSODノックアウトニワトリ細胞株を分析
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120920/163317/

玉川大と西松建設、LED農園で栽培したリーフレタスを2013年2月に販売
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120920/163316/

佐藤製薬ライフスタイル研がアマゾンハーブの発毛促進成分を解明、生薬学会で発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120920/163315/

年13億円の急成長健康素材エラスチン、
日健栄協が認定健康食品(JHFA)初の解説書と説明会
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120920/163303/

林原がL’プラザ東京ラボを拡充、ナガセのライフサイエンス事業強化に寄与
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120919/163300/

Thomson Reuters社が11回目のトムソン・ロイター引用栄誉賞を発表、21人のうち日本人は竹市雅俊氏、藤嶋昭氏、春日正毅氏
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120919/163297/

生薬学会第59回年会でかずさに600人、シンポジウムは生薬インフォマティクス
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120919/163286/

東北大と東大、愛媛大、JST、GPCRの逆作動薬の検出にも役立つTGFα切断アッセイ法を開発、Nature姉妹誌に発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120917/163261/

エネルギーや環境にも役立つカロテノイド研究【機能性食品 Vol.62】
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120914/163244/

科学に裏付けされた健康食を次世代に伝えるABC HEALTH LABO始動、坪田一男慶大教授が指導
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120914/163232/

北里大、相模原キャンパスに海洋生命科学部の新棟が竣工、20tの海水用受水槽を設置
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120913/163223/

農水省の予算要求、農林漁業6次産業化で86億円、ファンドも本格始動
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120912/163201/

農水省のバイオマス新規予算要求、
バイオマス産業都市づくり34億円と食品産業環境対策17億円
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120912/163200/

東洋紡がポリアミン含有大豆胚芽素材でエージングケア、2017年に5億円目指す
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120912/163178/

理研PSCと岡山大など、植物免疫応答を増強する薬剤の探索法を開発、
プラントアクティベーターを5個発見
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120911/163176/

雪国まいたけとハイファジェネシスなど、
GFPやRNAiなどマイタケの遺伝子機能解析ツールを構築
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120910/163161/

ホクトがエリンギ品種を識別する高精度SSRマーカー、次世代シーケンサー活用
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120908/163137/

きのこ学会、概算要求、米で治験薬になった漢方【日経バイオテクONLINE Vol.1781】
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120907/163136/