現在、那覇の厳しい日差しを避けながら、このメールを書いています。空には入道雲が林立、当地はまだ夏真っ盛りです。皆さんは、この残暑をいかがお過ごしでしょうか?

 さて、もうすぐ取材に向かわなくてはなりません。本日は短く、しかし重要な情報をお伝えいたしましょう。

 2012年7月30日、OTC(一般用)遺伝子診断サービスを展開しているベンチャー企業である米国の23&ME社が、米国食品医薬品局(FDA)に7種の診断薬を医療機器として市販前届け出(Premarket Notification 510(k)を提出いたしました。2010年にOTC遺伝子診断サービスをFDAが医療機器として取り締まることを表明して、同社と審査手続きなどのガイダンスを議論してきた結果の反映です。早ければこの秋にもFDAが許認可を判断することになります。
https://www.23andme.com/about/press/fda_application/

 今まで”娯楽”の範疇としてとらえられていたOTC遺伝子診断サービスが、公式に健康に貢献するサービスとして認知される可能性が出てきたのです。同社は年内に100種の遺伝子検査に関しても、次々と市販前届け出をFDAに行うことを表明しています。現在、同社は15万人の会員に対して、唾液から採取したDNAの変異を検出し、罹患可能性、体型、肥満などのライフ・スタイル、そして家系分析サービスを提供しています。今朝、同社のHPをチェックしたら、従来399ドルで提供していたサービスを299ドルに値下げ、販売に拍車を掛けています。日本でもアマゾンドットコムで購入することができます。115種以上の遺伝的を個人毎に解析して、ウェブ上で最新情報を提供するサービスです。同社はFDAに対しては、家系分析や非健康情報に関する遺伝子検査に関しては、申請する予定はないと明言しています。

 皆さんは、自分の遺伝子分析を知りたいでしょうか?私は勿論、興味津々ですが、問題は解析された情報が果たして正しいかどうか?なかなか判断しがたいことです。また、明日、私の持っている遺伝変異、例えば光頭の変異に、がんに罹患しにくいなどの、新しい意味が付け加わる可能性すらあることです。23&ME社は遺伝変異解析を認証を受けた臨床検査ラボで行っております。そのため、遺伝子変異のデータ自体は信憑性を確保できますが、その変異が私の健康にどんな影響を持つか、解釈(オントロジー)そのものが問題となります。むしろ、ゲノム解析技術が普及した今、ゲノムのオントロジーの妥当性こそが、このサービスの競争力を示すことに変わって来ました。今回はFDAに一つ一つの遺伝子診断の手法的な妥当性とオントロジーの妥当性を示す書類を提供しています。当然、これは基本ですが、では7種の遺伝子診断が認められたとして、7種を組み合わせた総合的な解釈を提供することが認められるのか?そしてもっと重要なのは、医師の手を経ずして、遺伝子結果を消費者に提供することが認められるのか?つまりOTC遺伝子検査というものを、FDAがどう認め、どう規制するのか?この秋から冬に下されるFDAの判断が極めて注目されます。日本でも精密な出生前診断の臨床研究で新聞やテレビが大騒ぎしていますが、米国の遺伝子検査はもう先に行っています。

 私の態度は明確で、何事も研究を規制することは最小限に留めなくてはなりません。そして、自分や家族の健康問題の最終決定者は自分自身であるということです。判断を医師に委ねたり、国家に委ねたりすることは、責任回避に過ぎないと考えています。医師や学会、そして国家が行わなくてはならないのは、最低限の規制と患者本人が最良の判断を行うための教育や情報提供を与えることだと思います。わが国の議論はここの認識を欠くために、責任を擦りつけある議論となり、いつも「今後慎重な検討が必要」という思考停止に陥ります。

 わが国でもOTC遺伝子診断(パーソナルゲノムサービス)を行うベンチャー企業も登場してきました。自分の遺伝的特性を知ることは、豊か何人生の道しるべとなると私は思います。そのために過剰の規制も過少な規制も無用であると考えます。ました、社会全体が思考停止となることは許されません。是非とも、FDAの規制動向をにらみながら、早急にわが国でも妥当な許認可プロセスと提供する情報の評価システムを整備しなくてはならないと思います。

 今週もどうぞお元気で。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

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