こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 この日曜日に、都内で開催されたレギュラトリーサイエンス学会の学術大会を取材してきました。特別講演にシンポジウムと、興味深い話を聞くことができました。その中で、自治医科大学の永井良三学長の話が面白かったので、少し紹介させていただきます。

 よく医薬品の研究開発を説明するために、探索研究から始まって、非臨床試験、フェーズI、フェーズII、フェーズIIIの臨床試験、承認申請、審査を経て承認という図を描きます。探索研究の次に「シード化合物」として3万という数字を示し、「承認」のところに1個と書いてあるような図もよく見かけます。しかし、永井学長は、「そのようなリニアな考え方をしているところに問題があるのではないか」と指摘します。「薬事承認は始まりであって、その後でいかに育てていくかが重要ではないか」というわけです。確かに、「ライフサイクルマネジメント」や「育薬」という言葉もありますが(2つの言葉のニュアンスは少し違うような気もしますが)、今はよりニーズの高いところでは可能な限り早期承認し、市販後にリスクを評価しながら適応を追加していく、というやり方に、薬の開発の仕方も変化しつつあります。リニアな一本の絵を書いて、リスクや成功確率を議論するのも少し時代遅れのような気がします。

 レギュラトリーサイエンス学会学術大会の特別講演だったため、永井学長は「レギュラトリーサイエンス、トランスレーショナルリサーチにどのような課題があるか」という視点で話されていました。4象限の図で上下を「基礎」と「応用」、左右を「理論」と「実践」に分け、「基礎」と「理論」がクロスする第1象限を、メカニズムなどの「基礎研究」とし、「基礎」と「実践」がクロスする第2象限を、トランスレーショナルリサーチやレギュラトリーサイエンスなどの「実験的医療」、「応用」と「実践」がクロスする第4象限を実際の「医療」とした上で、「応用」と「理論」がクロスする第3象限について、「疫学、経済、倫理面からの評価」と位置付け、第2象限と第3象限とが「レギュラトリーサイエンスである」と指摘。「リニアではなく、この4象限を循環させていくことが重要だ」と話されていました。

 レギュラトリーサイエンスという言葉の概念自体、なんとなくわかったようなわからないようなところがありましたが、永井学長や、それに続く日本製薬工業協会の手代木功会長、鳥取環境大学の加藤尚武名誉学長(哲学者で元京大教授)らの講演を聞いて、こういうことを議論する学問なのかと理解できた気がしました。

 話題は変わりますが、昨日、日中医学協会が開催した中国衛生部の副部長による講演会を取材してきました。中国では現在、国民皆保険制度の整備を進めており、それに合わせて農村部などでの医療供給体制の拡充に取り組んでいます。この医療改革は09年から2011年までの3年間で、8500億元(約9兆円)を投じて進められてきました。講演ではその取り組みの進捗状況を紹介するとともに、今後の展望についても述べられていました。それによると、2011年から2015年の「第12次5カ年計画」の期間中には、2011年までの3年間に投じたよりもさらに多額の政府資金を投じて、医薬衛生体制の改革を推し進めるとのことです。このところ、中国の景気は減速していると聞きますが、「20年後に80歳以上の人口が1億人を超える」という超高齢社会の到来に備えて、医療体制の拡充は喫緊の課題のようです。医療分野だけはまだまだ積極投資が行われるということでした。現在、講演内容をかいつまんで紹介する記事を書いており、このメールが皆様の下に届くころには、日経バイオテクONLINEに記事として掲載している予定です。ぜひお読みいただければと思います。

https://bio.nikkeibp.co.jp/

 それで中国つながりの話題として紹介したいのが、日経バイオテクプロフェッショナルセミナーの一環として企画した、中国企業との商談・交流会です。というのも、中国では医療体制の整備と併せて、バイオ医薬品を中心に、医薬品産業を振興する政策が取られています。これまで主に後発医薬品を製造してきた中国の製薬企業は新薬開発に乗り出そうとしているのですが、中国内の基礎研究のレベルはまだそれほど高くはありません。このため、中国の多くの製薬企業が医薬品のシーズを求めており、日本で販売済み、もしくは開発中の医薬品に目を向けています。

 そこで、日経バイオテクでは、日本の製薬・再生医療企業、創薬ベンチャーを対象に、中国の製薬企業の経営者やライセンス担当者を紹介する交流・商談会を開催することにしました。参加者には、逐次通訳付きのプレゼンテーションおよび個別商談会の機会を提供するとともに、中国医薬品開発の専門家による医薬品行政の最新動向や医薬品開発のニーズに関する講演や、北京市内の製薬企業などの視察ツアーを実施する計画です。中国企業との良好なパートナー関係を築く絶好のチャンスでもありますので、中国での医薬品事業に興味がある方はぜひとも参加をご検討ください。12月5日から7にちにかけて、北京で開催いたします。結構早めに締め切りますので、お早目にお申込みいただくようお願いします。

http://nbt.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/121205/index.html

 本日は少し短いですが、この辺りで失礼します。

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