毎月第1金曜日と第3金曜日、第5金曜日の日経バイオテクONLINEメールの編集部原稿も担当しております日経バイオテクONLINEアカデミック版編集長の河田孝雄です。前回の8月17日から2週間ぶりでお目にかかります。

 まずは前回のメールで少し触れました、8月10日成立の「社会保障と税の一体改革関連法案」について補足します。

 消費税率の引上げは、次のとおり段階的に引上げを行うのですが、この引上げを実施するには、経済状況を好転させることを条件となっています。
・2014年4月1日より 8%(消費税6.3% 地方消費税1.7%)
・2015年10月1日より 10%(消費税7.8% 地方消費税2.2%)

「消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、デフレからの脱却・経済の活性化に向けて、2011年度から2020年度までの平均で名目成長率3%程度、実質成長率2%程度を目指した望ましい経済成長のあり方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる」と、税制抜本改革法案附則第18条第1項に記載されています。

 さて今回のメールですが、まずは昨日(8月30日)に科学技術振興機構(JST)が発表した「研究成果最適展開支援プログラム(A-STEP)」の2012年度第1回公募における本格研究開発ステージの採択課題について紹介します。

JSTのA-STEP本格研究開発ステージ第1回新規、バイオ関連はシーズ育成7件、ハイリスク19件、起業挑戦3件
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120831/163006/

 新規の採択課題としては、シーズ育成タイプ13件、ハイリスク挑戦タイプ33件、起業挑戦タイプ3件が選ばれました。この計49件のうち、バイオテクノロジーと関係が深そうだと編集部のほうで判断した課題(ライフイノベーションは全件対象にしました)は29件(シーズ育成7件、ハイリスク挑戦19件、起業挑戦3件)でした。全49件の60%近くを占めています。

 この第1回は、2月21日から4月5日まで公募が実施されました。応募のあったシーズ育成36件、ハイリスク挑戦119件、起業挑戦34件、起業挑戦(若手起業育成)10件の中から49件が選ばれました。研究開発費の総額(原則)と研究開発期間(原則)の上限は、シーズ育成が2億円(マッチングファンド形式)・4年間、ハイリスク挑戦が6000万円・3年間、起業挑戦が1億5000万円+1500万円・3年間、起業挑戦(若手起業育成)が4500万円+300万円・3年間です。

 マッチングファンド形式の課題の企業名には、Meiji Seikaファルマ、日本ケミファ、アクアセラピューティクス、サカラのタネ、ライオン、グンゼ、ゲノム創薬研究所、アルフレッサファーマ、アネロファーマ・サイエンス、三菱ガス化学、アスビオファーマ、浜松ホトニクス、カネカ、インタープロテイン、日本新薬、新田ゼラチン、積水メディカル、医学生物学研究所、シノテスト、ペルセウスプロテオミクスなどがあります。

 また上記の新規採択の記事では紹介しませんでしたが、本格研究開発ステージでは、ステージゲート評価を行うことにより、異なる支援タイプを継続して実施することを可能としており、今回は継続を希望した課題9件の中から、1件のみが選ばれました。採択されたのは、ファルマデザイン/柳澤勝彦・国立長寿医療研究センター認知症先進医療開発センターセンター長の「糖鎖により形成誘導をうけるアミロイドの“種”を標的とする画期的アルツハイマー病治療薬(ASIM)の開発」。シーズ育成タイプに選ばれ、ハイリスク挑戦タイプからの継続となりました。

 なお、本格研究開発ステージの実用化挑戦タイプの採択決定は9月下旬以降に発表される予定です。実用化挑戦タイプは、委託開発(研究開発費の総額(原則)20億円まで、研究開発期間(原則)最長7年間)と創薬開発(10億円、5年間)、中小・ベンチャー開発(3億円、5年間)の3種類があります。

 次に、画像の分類を自動化できるソフトウエア「カルタ」の話題を紹介します。東京理科大学理工学部応用生物科学部の松永幸大准教授と東京大学大学院新領域創成科学研究科先端生命科学専攻の朽名夏麿助教らが今週、Nature Communications誌に発表した成果です。

東京理科大と東大、国立がん研セが生物医学画像を自動分類するソフト「カルタ」を開発、Nature姉妹誌に発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120828/162946/

 カルタは、専門家の意見を取り入れて学習を繰り返すことができる能動学習型ソフトです。半教師付き学習アルゴリズムと繰り返しクラスタリング、自己組織化マップ(SOM)を組み合わせて画期的な能動学習型アルゴリズムを実現したということです。カルタは、Clustering-Aided Rapid Training Agentの頭文字。ユーザーの指示で分類する様子が、日本の伝統ゲームである「かるた」で、読み札に合わせて絵札を取る様子に似ていることから、カルタと名付けました。

 このカルタを用いると、目的別に抽出したい画像を分類できる他、人が認識し難い微妙な特徴の違いに基づいた分類も行えます。大量の画像データを短時間で分類・判定できるため、医療現場で利用されれば、現在は画像診断医が画像の分類に割いていた時間と労力を軽減でき、診断の高速化に大きく貢献しそうです。また、生物学や農学などの研究分野で用いられるさまざまな画像の分類にも利用でき、応用範囲は広いようです。国際特許を出願し、東大TLOが知財を管理しています。

 高い分類精度を発揮できるという実証を積み重ねています。蛍光・明視野画像におけるHeLa細胞の細胞周期分類は92.7%、蛍光画像におけるネコ網膜の分類は95.9%、MRI画像における腫瘍種類の識別は99.6%、蛍光画像におけるたんぱく質の局在判定は96.7%、明視野画像における葉表皮の気孔開閉の判別は90.4%とのことです。植物工場で植物育成状況の分類にも利用できます。

 最後に、本日札幌市で取材している「2012年度日中食品科学工学研究交流シンポジウム」の話題を少し。札幌市は昨日(8月30日)、この夏一番の暑さだったようですが、札幌市で今日まで3日間開催の日本食品科学工学会第59回大会もホットです。

食品科学工学会の日中交流シンポ、日本企業10社が日中における活動と研究開発を発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120830/162999/

食品科学工学会は一般講演の37%が企業発表、発表数トップ3は森永乳業、小川香料、三栄源FFI
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120830/162984/

日本食品科学工学会第59回大会が札幌で開幕、計画停電は実施されず
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120829/162973/

 中国における食品工業の成長率は年31%と、中国の工業の平均成長レベルを上回っています。一直線に、あるいは直線以上に、右肩上がりで市場が拡大しているというグラフを10個近く続けて見たのは初めてのように思います。

 この中国の食品工業の急成長には、日本の食品企業やアカデミアの寄与も大きいようです。日本食は、文化遺産に登録する準備が進められています。日本の食文化の特徴として(1)多様で新鮮な食材と素材の味わいを活用(2)バランスがよく、健康的な食生活(3)自然の美しさの表現(4)年中行事との関わり、の4点を日中交流シンポで日本食品科学工学会の会長を務める西成勝好・大阪市立大学大学院特任教授が紹介なさいました。

 メール原稿の締め切り時間になりました。ここ2週間で直接まとめた記事リストを掲載させていただきます。ご参考にしていただければ幸いです。

※2012年8月17日から31日の記事リスト

JSTのA-STEP本格研究開発ステージ第1回新規、バイオ関連はシーズ育成7件、ハイリスク19件、起業挑戦3件
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120831/163006/

食品科学工学会の日中交流シンポ、日本企業10社が日中における活動と研究開発を発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120830/162999/

食品科学工学会は一般講演の37%が企業発表、発表数トップ3は森永乳業、小川香料、三栄源FFI
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120830/162984/

消費者庁のトクホ審査基準検討事業を日本健康・栄養食品協会が受託、8月31日に第1回検討会
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120829/162976/

日本食品科学工学会第59回大会が札幌で開幕、計画停電は実施されず
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120829/162973/

慶大医、ポリシストロニックベクターで線維芽細胞から心筋細胞を直接生体内作製する効率を2倍に
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120828/162945/

東京理科大と東大、国立がん研セが生物医学画像を自動分類するソフト「カルタ」を開発、Nature姉妹誌に発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120828/162946/

予算20億円のJST復興マッチング促進、PSSやG&G、細胞科学研、MTI、ゼライスなど採択
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120828/162944/

サントリーが「体に脂肪がつきにくい」トクホ表示を加えた黒烏龍茶の販売開始
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120828/162942/

JST復興促進プログラムの新規課題、予算20億円のマッチング促進が56件で予算9億円の復興A-STEPが345件
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120828/162921/

アークレイ、臨床検査モードを追加した全自動遺伝子解析装置を発売
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120828/162920/

マヨネーズは肉料理の食感と食味を向上、キユーピーが調理科学会で発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120827/162916/

カルピスと豆乳が初組み合わせ、280mLにイソフラボン5.8mg
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120827/162915/

日本の通販売上高が2011年度に5兆円を突破、JADMAが調査速報値を発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120827/162914/

キッコーマンと岩手大、生しょうゆの香りは加熱調理で保持、調理科学会で発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120827/162899/

市川園と佐藤園、静岡市のお茶屋が相次ぎトクホ新商品【機能性食品 Vol.59】
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120827/162898/

東大先端研、ポリメラーゼがジャンプする新モデルで真核生物の転写ファクトリーを説明
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120823/162876/

森下仁丹が消化率80%以上のクロレラを新発売、初のJHFA認証取得
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120823/162871/

大正製薬が東洋新薬トクホを新発売、自社トクホ総数は20件に
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120822/162857/

タカナシ乳業が「LGG生姜ヨーグルト」を9月発売、持続性乳酸菌とショウガのW効果を訴求
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120822/162842/

ゲノム編集技術でコオロギの標的遺伝子破壊、徳島大と広島大がNature姉妹誌に発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120821/162838/

市川園がコレステロール対策でトクホ市場に参入、整腸と食後血糖値も許可取得
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120821/162839/

理研ビタミン、クロセチンはPGE2の産生減らして紅斑を抑制、美容皮膚科学会で
ポスター賞
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120820/162821/

東洋新薬と佐賀大など、バラフ配合化粧品の保湿作用と抗シワ作用を美容皮膚科学会で発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120820/162818/

消費者庁が8月17日にトクホ10件許可、トクホ総数は1011件に
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120820/162817/

ロンドン五輪と消費税増税、2013年度予算【日経バイオテクONLINE Vol.1772】
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120817/162795/