こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 起業家を対象とする米国の雑誌のEntrepreneur誌が、Entrepreneur of 2012の最終選考をやっていますが、ここに日本人バイオベンチャー起業家である米Acucela社の窪田良社長がノミネートされています。Acucela社は、米Washington大学で研究をしていた慶応大学出身の眼科医である窪田社長が、10年前の2002年に創業したベンチャーです。創業当初は、網膜神経前駆細胞を長期培養する技術をベースに眼科系疾患治療薬のスクリーニングサービスを提供する事業を中心としていました。その後、眼科系疾患治療薬の創出を目指す創薬ベンチャーに衣替えし、現在、いずれも大塚製薬と共同で、ドライアイ治療薬候補化合物のフェーズIII、ドライ型加齢黄斑変性症治療薬候補化合物のフェーズII、開放隅角緑内障・高眼圧症治療薬候補化合物のフェーズI/IIを米国で行っています。これまでに日経バイオテクONLINEでも、何度かAcucela社について紹介してきました。

米バイオベンチャーのAcucela社が3つ目の候補品を臨床入り
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/1628/

 Entrepreneur誌が最終的に5人ノミネートした候補者は、情報通信技術やサービス業などさまざまですが、バイオベンチャーの経営者は窪田社長だけです。現在、Entrepreneur誌では、最終選考のために、ウェブサイトのEntrepreneur.comなどで、9月17日の締め切りで投票を募っています。

 中立的な媒体で投票を促すわけではありませんが、米Washington Biotechnology & Biomedical Associationのウェブサイト( http://www.washbio.org/ )に「Vote now!」なんて書いているのを見ると、米国のバイオ関係者はまあいろいろな手段を使ってバイオベンチャーを育てようとしているものだと感じてしまいます。ちなみに、Entrepreneur誌では、Establish(窪田社長はここにノミネート)、Emerging、Collegeの3つの分野で、それぞれ5人ずつをノミネートしてEntrepreneur of 2012の選考を行っています。Collegeというのは学生起業家のことで、こういう辺りから見ても米国のベンチャーの裾野の広さを感じます。下記サイトをご覧いただくと、選考ルールの詳細等が下の方にリンクされていたりしますので、ご参考まで。

http://www.entrepreneur.com/e2012

 話題は変わりますが、慶応大学の倫理指針違反に関して、厚生労働省が処分を発表しました。といっても、慶大が厚労省に報告した原因究明と再発防止策は十分なものではなかったようで、処分内容をかいつまんで言うと「新たに幾つかの事項について文書での報告を求め、その内容と9月末までの再発防止策の進捗状況が十分であると確認できた場合には、2012年度の補助金として人件費と賃金を交付する」というものです。つまり、再発防止策が十分であっても、整備費として補助されるのは人件費と賃金のみで、拠点整備は今年度は事実上ストップすることになります。拠点整備を進めなければならないという課題と、処分内容に齟齬があるようにも思いますが、それだけ厚労省は今回の倫理指針違反を重大視し、懲罰的な処分を与える姿勢を明確にしたのでしょう。

厚労省、慶大の倫理指針違反に対する処分を公表、他の早期・探索的臨床試験拠点の倫理指針順守状況のチェックも実施へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120823/162872/

 ちなみに、厚労省は慶大以外の4カ所の早期・探索的臨床試験拠点に対しても、倫理指針の順守状況を確認する旨を通知しています。ちなみに、今回の倫理指針違反は患者の同意を得ずに、手術中に肋骨から骨髄液を採取したり、倫理委員会に提出する申請書に本人の承諾なしに他の研究者の氏名を記載していたりと、「倫理」以前の、「犯罪」と言っていいものです。少なくとも、大学の基礎的なシーズを早期に実用化するために、治験や臨床研究を推進する施策については歓迎してきましたが、このようなことが行われていたといううのはショックです。このようなことが常態化しているようでは、国民は医療不信を募らせ、臨床研究への参加者はいなくなってしまうでしょう。厚労省は早期・探索的臨床試験拠点や臨床研究中核病院の整備を進める以上、これらの拠点で同様のことが行われていないかチェックするのは当然のことでしょう。また、慶大が真摯に対策防止に努めるのはもちろんですが、拠点整備を進める厚労省も、規制強化にはならない形で、こういうことをチェックできる体制を検討すべきだと思われます。

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https://bio.nikkeibp.co.jp/article/information/20120821/162841/

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