妻に軽蔑されつつも、なでしこジャパンの公式ユニフォームを買ってしまいました。ワールドカップを制したチームにのみ許されるゴールドのワッペンが燦然と輝いております。アディダスのアウトレットで入手、さすがにこれを着て国立にはせ参じることはブロックされてしまいました。昨夜のU20ヤングなでしこの試合も、格下のスイス相手とは言え、楽しい試合でした。猶本と田中のダブルボランチが、守備と攻撃を絶妙なバランスで支配していました。加えて、田中選手の左右の脚から蹴り出されたフリーキックの得点も印象的でした。マンチェスターユナイテッドの香川選手の公式戦初ゴールも霞んでしまうと言ったら、きっと皆さんは怒るでしょうが、賛成する読者も少なからずいると確信しております。これから強豪国と当たる決勝リーグです。きらきら輝く才能のある少女達が、どこまで強豪を倒すか?わくわくしております。まずは、30日の日韓戦です。皆さんも応援願います。

 さて、先週の末は鶴岡市の慶応義塾大学先端生命科学研究所で、遺伝子操作とメタボロームの実習を、製薬企業や投資関係者の教育プログラム、バイオファイナンスギルドの一貫として行いました。東京以上に暑い天候でしたが、無事終了。私がイブプロフェンのプアメタボライザーであり、好奇心などに関与するドーパミン受容体4型の遺伝子型も日本人にありふれたタイプであることを確認したところです。参加した企業や支援していただいた大学とベンチャー企業(HMT)、それに鶴岡市に御礼を申し上げます。今回のプログラムでは、個の医療を強く意識した実習を展開しました。最終日に皆さんと議論した結果をまとめてコンパニオン診断薬というウィキペディアの新規項目を登録しました。実習の成果です。是非とも、皆さんの手によって情報の追加や編集をお願いいたします。

 実習中に、米Eli Lilly社の抗βアミロイド抗体solanezumabのフェーズ3臨床試験失敗のニュースが飛び込んできました。初期と中等度のアルツハイマー患者を対象としたEXPEDITION試験で、認知機能も身体機能も低下を抑止することができませんでした。但し、二次解析で初期のアルツハイマー病患者では認知能力の低下を抑止できた結果も得られたとLily社は発表しています。同社は今後、この抗体の臨床開発を継続するか未定としています。実は、2012年8月3日に米Johnson and Johnson社と米Pfizer社が開発していた抗βアミロイド抗体bapineuzumabも2つのフェーズ3臨床試験で認知機能の低下を抑止できず、両者は開発中断を発表しています。

 βアミロイドの蓄積がアルツハイマー病を引き起こすというβアミロイド仮説による抗体治療がいずれも今月頓挫してしまいました。現在、臨床開発で残っている抗βアミロイド抗体は神経毒性の本体と目されているAB42のオリゴマー(βアミロイドの部分ペプチドのオリゴマー)を中和する米Genentech社の抗体医薬crenezumab(フェーズ2臨床試験)だけになりました。わが国の企業でもエーザイなどが臨床開発を急いでいます。

 大部劣勢となったβアミロイド仮説ですが、この仮説自体は正しいが、中等度以降の重症患者ではそもそも神経死が進んでいるため、抗体によってβアミロイドの蓄積が物理的に除去されても、治療効果は期待できないという主張もあります。今年5月15日に米国国立衛生研究所はアルツハイマー病対応計画を発表しましたが、そのプログラムでcrenezumabを使ってまったく症状のない健康人を対象に、アルツハイマー病の発症抑止を証明する臨床試験を開始することを明かにしました。この試験こそ、βアミロイド仮説の正しさを証明する最後の臨床試験となるはずです。
http://www.nature.com/news/us-government-sets-out-alzheimer-s-plan-1.10688

 1600万ドルを投入し、5年間にわたって行われる臨床試験は、南米コロンビア中部に集積する早発性アルツハイマー遺伝子変異(バイサ遺伝子)家系を対象に行います。300人のアルツハイマー病の未発症の人を対象に、抗体の予防投与を行います。バイサ遺伝子を持った人は中央値44歳で初期のアルツハイマー病を発症、49歳で完全なアルツハイマー病となってしまいます。極めて早発性で病気の進行の早い遺伝子変異を持つ住民を対象に、発症を遅らせることができるか?究極の検証を行う計画です。

 この他、米Baxtor International社が、ヒト・ポリクローナル抗体「GAMMAGARD」の投与によって、4人のアルツハイマー病患者の認知機能の低下を3年間抑止したと、今年7月に発表、同社は13年半ばにフェーズ3臨床試験を開始する計画です。免疫部全焼の治療薬としてすでに実用化している医薬品の適応拡大に注目が集まっています。もし効いたら、作用機構の解明が不可欠です。果たしてβアミロイド仮説が蘇るかは、薬効を示す標的が明かになるまでのお預けとなるでしょう。

 もし、βアミロイド仮説が全敗したら。。。タウ仮説、インスリン仮説、脂質代謝仮説などまだまだアルツハイマー病の病因仮説は多数存在しますので、検証しなくてはならないことは山ほど残っております。しかし、皆さん、是非ともお急ぎ願います。加齢によりアルツハイマー病の発症リスクは否が応でも上昇します。世界最高速で高齢化社会に突入するわが国にとってもうあまり時間は残されていません。

 残暑はまだまだ厳しいですが、今週もどうぞお元気で。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

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