本日のU20ヤングなでしこの試合は予選リーグの山場です。でかい、そしてスピードもあるニュージーランドのチームに可憐ななでしこがどう立ち向かうのか、まるで女侠ものの冒険小説を読むかのごとく、アドレナリンが出ています。是非とも、迅く美しく、ずばっとシュートを再び決めていただきたい。現在、全国各地で予選リーグが行われています。8月30日からは東京国立競技場でも決勝リーグが始まります。何とか、時間を作って生で見たいと考えております。日本の復興は隠された成長源である女子の活躍がどうしても必要です。

 さて、個の医療です。

 現場では混乱を極めている再生医療を整理し、患者の安全性を担保することにようやっと国が動き出しました。期待と商売が先行し、上下に引き裂かれているわが国の再生医療の健全化が一歩でも進むことを、心から期待しています。薬事法改正や再生医療だけを切り出した議員立法が検討されていますが、こうした再生医療を法的に位置づける法改正にとっても重要な意味を持っています。

 どのメディアも報じている気配がないので、お伝えいたしますが、2012年8月20日の厚生科学審議会科学技術部会で、「再生医療の安全性確保に関する専門委員会(仮称)」の設置が認められました。今後、1年程度議論して報告書を作成する予定ですが、うまくいけば、この委員会が現在、薬事法なのか?医師法なのか?臨床試験なのか?臨床研究なのか?そして実質的にわが国でも多数のクリニックや一部心得違いの大学やナショナルセンターで実施されている”再生医療”の臨床に関して、安全性を軸に整理することが期待されています。

 部会で了承された目的を念のために明記しますと「医療として提供される再生医療について、薬事法等関係法規と同等の安全性を十分確保しつつ、実用化が進むような仕組みについて、倫理的、医学的、社会的観点からの多角的な検討を行い、結論を得る」というものです。

 薬事法等関係法規と同等の安全性を十分確保しつつ、、、というところが肝でしょうか。そのため、この専門委員会は医政局研究開発進行課が担当します。現在、クリニックレベルで行われている”再生医療”に関しては、薬事法レベルの安全性を担保しているとは必ずしも言いかねる実態があり、ここをどう摺り合わせるかが焦点です。

 患者の安全性を損なわないことが、どんな医療行為でも最低限の前提ですので、そこをどう担保するのか、仕組みやルール作りをこの委員会が担います。”再生医療”という美名の下で商売や藁をもすがりたい患者の欲望とも絡まり、大変な混乱が医療現場で起こっている現状を直視して「真面目に科学的に再生医療の実用化を進めている我々がはばばを引いている」(再生医療のキーマン)とこぼさざるを得ない状況の打破を行っていただきたいと思います。規制だけでなく、再生医療に期待する患者やその家族に再生医療の現状、そしてリスクとベネフィット、さらには効果が科学的に検証されエビデンスが整っている例は極めて例外的であることを啓発することも重要であると考えています。

 もう一つ個の医療に重要な動きが米国でありました。遺伝子が特許として認められたのです。

 米国の連邦巡回区控訴裁判所が、米Myriad社が出願していた遺伝子特許(BRCA1と2)を物質特許( composition of matter claim)として、2012年8月16日に認めたのです。まり、昨年11月に遺伝子や特定の塩基配列を持ったDNAは天然に存在する物質だから特許にはならないという前回の連邦巡回区控訴裁判所の判断が覆されたのです。人が細胞から抽出してその有用性を証明したことによって、DNAは物質特許の対象となることが、米国でも明確となったのです。今年5月26日に、米国連邦最高裁判所が差し戻した結果です。しかし、今回の票決も2:1と僅差であることを忘れてはなりません。欧米、とくに欧州ではヒトの遺伝子を特許とすることに嫌悪感が存在することが背景に存在します。今回の米国連邦巡回区控訴裁判所の判断は欧州にも影響を与える
はずです。
http://investor.myriad.com/releasedetail.cfm?ReleaseID=700880
http://investor.myriad.com/releasedetail.cfm?ReleaseID=659419
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120819/162802/
http://online.wsj.com/article/BT-CO-20120816-709919.html

 今回の決定により、遺伝子診断薬の商業化の基盤が米国でもできたと言えるでしょう。BRCA1とBRCA2の突然変異のプロファイリングは、乳がんや卵巣癌の再発や悪性度を予測する遺伝子検査のヒット商品となっております。わが国でもファルコが導入、研究用サービスという名目で事業化が進んでいます。ヒトの遺伝子が特許による独占許諾によって、様々な診断薬、中でも薬剤の適用を決める個の医療の診断薬の開発が加速されることは間違いありません。わが国にもMyriad社がBRCA1とBRCA2の特許を1997年2月に出願(特許出願平9-528770)しております。この特許の診査請求はまだ行われていませんが分割された特許(特許出願2011-227253)が2011年10月に出願され、今年5月17日に公開されています。この特許はすでに審査請求されておりますので、特許庁がどんな判断を下すのか?注目です。わが国でも遺伝子特許が米国並の効力で認められるのか?日米の特許制度の温度差を試す試金石となるでしょう。

 いずれにせよ、米国で遺伝子特許が認められたことは個の医療にとって慶賀すべきこと。勿論、遺伝子特許による研究阻害や診断サービス価格の高騰などの副作用もある可能性が存在しますが、これに対するMyriad社の反論をご覧になれば、それもマネージ可能なリスクであると、皆さんも納得すると思います。
http://investor.myriad.com/releasedetail.cfm?ReleaseID=659419

  皆さん、今週もお元気で。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満