今月も日経バイオテクONLINEの Webmasterの宮田が執筆させていただきます。
著者の選定に今尚難渋しております。

 皆さん、夏休みはいかがお過ごしでしたか?日経バイオテクオンラインは15日まで
密かにお休みを取っておりました(ウェブ上での告知不足で申し訳ありません)。本日
よりニュース配信を再開いたしますので、どうぞ宜しく願います。

 現在、灼熱の京都に滞在しております。気象台の予想では35°C越えも。まだ
まだ残暑は続きますね。皆さんもご自愛願います。今回も出張中の折、手短に
報告させていただきます。

 さてプロテオミックスです。

 たんぱく質の機能解析が、続々と新しい治療標的の発見につながりつつあります。

 本日も私の重要なネタ元である米国科学財団のジャーナリスト専用サイトを
チェックしておりましたら、カナダWestern大学の研究グループが細胞膜表面で
チャンネルを形成するたんぱく質、Pannexin (Panx1)が悪性黒色腫の治療標的
となる可能性が2012年8月17日号のJ. of Bilogical Chemistryに発表することを
発見いたしました。

 悪性黒色腫の患者の半数が共有するがん遺伝子B-RAFの変異型や、患者で
キラーT細胞の免疫抑制、つまりブレーキを掛けている細胞表面抗原CTLA-4に
対する治療薬が米国で2011年に相次いで商品化されました。Panx1は悪性
黒色腫の第三の治療標的となる可能性があると興奮しております。

 Panx1の発現量は悪性黒色腫の浸潤など悪性度に比例しており、発現量を
siRNAなどで抑止すると、悪性度が低下、正常細胞のような振る舞いに変わり
ます。肺がんのALK融合たんぱく質ほど強烈ながんのドライバー遺伝子ではなさ
そうですが、がん細胞の増殖加速や悪性化に関与するActionable gene(中程度
発がんやがん化の維持に必要な遺伝子)である可能性濃厚であると考えます。

 がんの標的たんぱく質の研究は、必ずしもがんの増殖に貢献はしないが正常細胞
に比較して発現量が多いたんぱく質から、Bcr-AblやAlk融合たんぱく質などがんの
ドライバー遺伝子の探索にシフトしております。しかし、がん細胞の増殖の鍵変異で
あるドライバー遺伝子はあまりに強烈なため、個体が子孫を残す前にがんで死亡
する確率が高く、人類集団に維持される割合は極めて少ないのです。実際、
Alk融合たんぱく質変異を持つ患者は肺がん患者の4%以下に過ぎないのです。
つまり、96%の肺がんはドライバー遺伝子だけを研究していては救われないという
訳です。

 がんの国際学会などの動向を見ると、Actionable genesを標的とした複数の
がん分子標的薬や抗体医薬の併用療法により、より後半ながん患者の救済が
始まったと判断しております。Panx1はその一つであり、重要ながん分子標的薬
研究の変わり目の分子となると思います。

 がんの治療標的研究でも中庸が肝心ということでしょうか?以外とつまらぬ結論と
なりましたが、これも真実です。

 今月もお元気で。酷暑ですが、ご自愛願います。

        日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満