こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 先週のメールマガジンでも紹介しましたが、今週月曜にケニアより戻ってまいりました。先週のメールで紹介したように、マラリアの流行地帯であるビクトリア湖周辺の小さな漁村に向かい、長崎大学熱帯医学研究所のフィールド活動を取材してまいりました。

 漁村の名前はmbitaといい、ナイロビから400kmから500kmの距離にあります。ナイロビ滞在中は毎日どんより曇った天気で、気温も低く、アフリカに来たという感じがもう1つなかったのですが、キスム空港に降り立つと強い日差しが照りつけ、コンクリートの建物が少ないせいか、風景の色彩もいきなり鮮やかになり、そこから100km離れたmbitaへのドライブも楽しいものでした。

 mbitaは人口5万人程度の地域で、中心部には銀行や雑貨店のような店があるものの、少し離れると電気や水道もなく、開発から取り残され、人が大自然と一体になって生活しているような場所です。我々はInternational Center of Insect Physiology and Ecology(ICIPE)という国際的な昆虫の研究機関の敷地内に設けられた研究者用の宿泊施設に滞在でき、不便な思いをすることは全くありませんでした。長崎大学の研究施設もこのICIPEの敷地内に設けられ、10人ぐらいの研究者が出たり入ったりしています。

 町が面するビクトリア湖は、ケニア、ウガンダ、タンザニアに囲まれたアフリカ最大の湖で、地域の産業は、この湖での漁業が中心です。ビクトリア湖の湖面にはホテイアオイが群生していて、遠くから眺めると緑の絨毯を敷いたようで壮観ではありましたが、漁船(といっても小さなボート)を出す妨げになるなど、大きな被害をもたらしています。ホテイアオイの大量発生が問題となったのはここ数年のことで、地域の保健所長によると農業に利用した化学肥料が湖に流れ込んだ結果だろうということでした。このホテイアオイが風に吹かれて湖上を動き回って漁業に被害を与えた結果、失業者が増え、犯罪に結びついていると保健所長は頭を抱えていました。ところが、湖が複数の国にまたがっていることもあって、対策は簡単ではありません。そこで、長崎大学では現在、工学部と水産学部がこのビクトリア湖の水質を改善するプロジェクトを提案しており、うまくすれば地域の経済や生活に寄与できるかもしれません。

 一方、地域では数多くの公衆衛生上の問題も抱えています。最大の問題はマラリアに代表される蚊を媒介とする感染症で、その他、コレラや大腸菌などによる下痢症、住血吸虫症などの寄生虫症などが問題になっています。ところが地域で最高レベルの医療機関はベッド数48床の公立病院で、そこに勤務する医師は院長1人だけ。そのDr. Kamau Waruiは20代後半の若者で、麻酔も手術も1人でこなし、年間20万人の診察に当たるということです。さすがにこれでは医療体制を維持できるわけもなく、医師ではないけれど手術以外の医療行為を認められているクリニカルオフィサーが地域には6人、看護師が20人程度いて、地域内に点在する診療所で診療に当たっているとのことです。院長は、「院長としての管理業務もあるので、最低もう1人は医師が欲しい」と語っていましたが、ケニアには現在、医学部が2つしかなく、医学部増設の計画はあるものの、医師の資格を取ると高給を求めて海外に流出する者も少なくないということです。

 こうした地域の公衆衛生上の課題に取り組むために、長崎大学では幾つかの研究プロジェクトを進めている他、病院に検査機器を寄贈したり、診療所に発電用のソーラーパネルを寄贈するなどのより直接的な支援を、JICA(国際協力機構)や大使館などと協力して行っています。とにかく、現地を訪問して痛感するのは、日本の研究者、あるいは一国民が寄与できることは山ほどあるということです。ただ、前回のメールでも書きましたが、ただ手を差し伸べるのではなく、それが持続的に現地の人たちの生活を豊かにしていくことなのかどうかを考えなければなりません。

 現地では小学校を訪問する機会もありましたが、子供たちは本当に人なつっこく、カメラを構えると寄ってきて、撮影した画像を見せると目を輝かせてカメラを覗き込んでいます。こうした子供たちに明るい未来が訪れるようにするために、何ができるのだろうかと考えてしまいました。ちょっと尻切れトンボになってしまいましたが、この続きは次回のメールで紹介したいと思います。

 本日はこのあたりで失礼します。

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