昨夜のなでしこは控え選手を中心に戦い、南アフリカとスコアレスドロー。決勝リーグ2位通過を決定しました。この試合に対して、堂々と勝負すべきという意見もあるようですが、私は2位通過で満足です。むしろ金メダルを目指した老練な監督の布石と交代選手の調整であると思います。こんな横綱調整ができるまで、なでしこジャパンが強くなったということです。今度の対戦相手も、ホームのイングランドからブラジルに代わったことも幸運です。何とかこの運を生かし、悲願のメダルを確保していただきたい。一方、福原愛ちゃんと石川選手の健闘で、何故か俄卓球ファンにも変身しております。勝利を決めた石川選手のピョンピョンを見ることが無上の喜びになっている読者も多いはずです。

 さて個の医療です。熱中症にも個の医療を考えなくてはなりません。

 現在、徳島での取材を終え、神戸に向かっています。徳島は台風接近の影響で雨模様です。暑さも一段落ですが、東日本や東北は相変わらずの猛暑。テニスコートなどでは、きっと50°Cに近い熱気となります。テニスシューズの分厚い靴底を平気で熱気が通ってきます。時々水を掛けないと、試合に障るほどです。こんな灼熱の日本で問題となるのが、熱中症でしょう。NHKの昨日の報道では全国で今年すでに69人以上の死者が出ています。私も昨年、テニスのやり過ぎで、気持ちが悪くなりました。あれは軽い熱中症だと思います。これに懲りて、今年は小まめの摂水とあまり暑い時はテニスを控え気味にするようになりました。そのため、熱中症の予防にも効果がある大塚製薬工場の経口補水液OS-1のお世話にはまだなっておりません。
http://www.os-1.jp/
 
 びっくりしましたが熱中症の予防・対策は環境省の縄張りらしい。こんなくだらない省庁間の縦割り行政をしているから、国民は救われません。環境省は病医院までの搬送の判断までは責任を持つが、その後の治療には責任を持たないという構図です。両省の狭間で、熱中症患者の命が脅かされています。厚労省が熱中症の予防・防止、そして治療にも一貫して責任を持つべきだと思います。環境省は地球を冷やすことに専念すればよし。熱中症の予報などは気象庁が担当すべきです。次善の策として、厚労省と環境省、気象庁が連携すれば良いのですが、下記の熱中症予防サイトは環境省内の情報に終始しているだけです。国民の労苦に対する想像力を欠く、なんともお粗末な政府です。
http://www.env.go.jp/chemi/heat_stroke/index.html

 環境省によれば、熱中症になりやすい人は、1)肥満、2)高齢者・小児、3)持病、4)体調の悪い人、5)暑さになれていない人。オリンピックの見過ぎで睡眠不足の私は、上記の条件を1つだけ満たさない状況です。という訳で、熱中症に関しても人ごとではありません。昨日、徳島大学疾患酵素研究センターの木戸博教授に伺ったところ、耳よりな情報を得ました。熱中症になりやすさにも個人差があり、その原因遺伝子も分かっているというのです。

 木戸教授によれば、熱中症の半数の患者でカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ2型(CPT2)の遺伝子に突然変異があるという。この酵素はミトコンドリアで脂肪酸からATPを生産するための鍵酵素の1つです。突然変異型のCPT2酵素は熱によって失活しやすく、熱中症の原因となるです。血管内皮細胞や心臓のエネルギー源は長鎖脂肪酸であり、CPT2の変異型遺伝子を持つ人は、長鎖脂肪酸からエネルギー源であるATPを高温状態では生産しずらくなり、これが熱中症を引き起こすというのです。「3000円程度の遺伝子検査で、DPT2異常は判定できる」(木戸教授)。遺伝子検査までしなくても、小児の時に熱で引きつけ(熱性けいれん)をおこした事がある人は、CPT2変異型である可能性があり、熱中症にも当然注意しなくてはならないのです。

 では、熱中症に効く薬はないのか?実はすでにジェネリックも発売されている高脂血症の治療薬、ベザフィブラートがCPT2酵素の生産も促進することが分かっています。CPT2変異型の人は酵素活性が低下していますが、この薬を与えれば酵素量が増大するため、熱中症を緩和できる可能性があるのです。まだ、臨床試験で確かめられたはいませんので、お勧めはできませんが、今後の熱中症予防や治療に試してみる価値はあると思います。是非とも医師主導治験で、熱中症への適応拡大を試みていただきたいと願っています。

 但し、今年の猛暑は度を越えています。ここまで暑いと、誰に対しても熱中症の一番の対策は当然のことながら無理をしないことに収斂します。これは絶対、個の医療より効くことを保証いたします。

 皆さん、今週もどうぞお元気で。くれぐれも無理は禁物。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

ご連絡は、https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/