ロンドンオリンピックの開幕が迫り、また睡眠不足の夏となる予感におののいております。半袖で凍えた先週からうって変わって東京は夏本番を迎え、日射に皮膚がひりひりしています。これに加えてオリンピックかと思うと、ぞっといたします。皆さんの何とかこの夏を乗り切っていただきたい。しかし、なでしこと金メダルを争うフランス代表は評判通りの強さでした。本番前の敗戦は貴重な教訓となりましたね。本当はなでしこが死んだふりをしていたと思いたい位のフランスの強さでした。

 さて、バイオです。

 先週の木曜日に、第66回の先進医療専門家会議を始めて取材して参りました。傍聴者多数を予想、わざわざ厚労省の2階講堂(東日本大震災津波の時には、厚労省の対策本部である通称蛸部屋が設置されたホール)で開催されていました。しかし、世間の関心が遠ざかったためか、やけに空間が目立つ寒々しい専門家会議でした。審議もほとんど熱気なく、たんたんと先進医療の適用を認可していました。夏枯れかもしれませんが、今回の議論を伺ったところでは、この専門家会議が医薬品医療機器総合機構(PMDA)の機能を少なくとも医療技術突破に関して、本当に代替し得るのか?まったく確信を持てませんでした。

 前にもメールで申し上げましたが、先進医療による症例集積、そして保健医療適用の道がこの高度医療評価制度にはあり、嫌な言い方ですが薬事法によって規制されるPMDAの審査をすっ飛ばして我が国の健康保険制度で保険適用できる裏道に育つ可能性があります。中でも、医療現場で曖昧な立場にある再生医療がこの裏道を通過して、業として拡大することを懸念しています。とてもではないが、現在の陣容で安全性と効能のバランス、さらには将来医療経済上の評価も行って、保険適用の有無を判断することは難しいと思います。また、典型的な二重行政でもあり、早急に対処しなくてはならないと、常日頃から思っておりました。

 今回の取材の目的は今月中に先進医療通知が発出され、2012年10月1日から先進医療と高度医療の一本化が始まることを見据え、改組が予定されている先進医療専門家会議を見ておこうというノスタルジックな興味と、やっと一本化なる制度改革の内容は一体どんなものになるのか?という疑問を解こうというものです。制度改革は中央社会保険医療協議会が決定するため専門家会議では議論ではなく、報告にとどまりま-*したが、それでも改組の対象となる専門家会議のメンバーがどんな質問をするのか?興味がありました。
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000002f1gj.html

 結論からいえば、今回の制度改革は一本化を目指しておりますがまだ、担当部局の腹は固まったとはいえない。制度改革を本当に有効に機能させるためには、担当課である保険局医療課が腹を括って、医療イノベーションと医療現場にその成果を還元する仕組みを健康保険制度の中で実現する必要があると考えます。元々、高度・先進医療評価制度では当初、薬事法で承認済みの医薬品や医療機器の適応拡大のための臨床研究を有償で認める先進医療制度が先に保険局医療課で構想され、権限外であった未承認の医薬品や医療機器の臨床研究が放置されたことを補うために、医政局研究開発振興課が高度医療制度を樹立したという経緯があります。患者の視点ではなく、制度と行政区分の都合だけから、先進医療と高度医療という双子の制度が作られ、しかも審議する専門会議が二つ編成されたのです。

 簡単に考えれば、薬事法と医療法の狭間に落ちた再生医療や医師の裁量権による医療技術の実用化を業として行う場合には、薬事法だとか、医療法だとか、患者を無視した縄張りの議論をやめて、患者さんの治療と安全をどう評価するかで、判断をすることにしたら良いと思います。具体的には、調査能力も乏しく、新薬の安全性評価の知見の少ない専門委員会だけではなく、安全性と有効性を評価する専門機関であるPMDAと審議を共同で行う体制を整備すべきであると思います。これこそが二重行政の真の一本化となると考えています。患者さんの善意を生かすためにも、臨床研究のデータは国が、PMDAが一本化して管理すべきであります。これによって、現在、ばらばらに散在している貴重な臨床研究の成果を集中し、安全性を確保しつつ、医療イノベーションを実現する基盤を形成することを目指すべきであると思います。

 「ところで新制度で先進医療の事務局はどのかのか?」
 当日、先進医療専門家会議の委員の質問が飛びました。資料を見ても明確になっていない。さらに先進医療の事前相談はどうするのか?という点についても医療課と研究開発振興かが分担・連携して行うという曖昧なもの。委員の質問に対するする、厚労省の担当者の説明はしどろもどろ。思い余った医療課企画官が、「基本的には保険局医療課だ」と口添えしたほどです。制度運用までの間、そうとう右往左往しそうです。

 新制度の原則は患者本位。どうやって患者さんに医療イノベーションの成果をいち早くお返しするのか?その基本に戻って、制度改革を明瞭に進めてただきたいと、心から願っています。この夏が勝負です。

 皆さん、どうぞ今週もお元気で。

         日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

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