こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 昨日は、バイオベンチャーや製薬企業、ベンチャーキャピタリストなど、バイオ産業のエコシステムを構成する人たちの勉強会であるBaNZaIが開催されたので参加してきました。BaNZaIでは毎回、さまざまな立場の方の講演を聞き、ブレーンストーミングの議論ができて非常におもしろいのですが、昨日は某大手製薬企業の事業開発のトップによる講演「創薬の生産性を上げるためのベンチャーと製薬企業の協業のあり方」をお聞きし、医薬品R&Dの生産性や製薬企業のコアコンピテンスについて、さらにはバイオ産業の行方も含めた幅広い視点での議論ができて非常に有益でした。BaNZaIには、このところ大手製薬企業の事業開発部門の方も多く参加されるようになり、議論の密度も増したように思います。

 医薬品R&Dの生産性については、その定義や算出方法、立場によっても見え方が異なります。例えば算出方法によっては、適応拡大による収益増を目指した臨床開発にコストをかけても新薬の承認数には反映されず、新薬1品目当たりのコストを高くしているといった問題があります。「生産性が低下していると言われる要因を分析すると、その主因はフェーズIIIのコストであり、生活習慣病で既存薬との有意差を証明するために何万もの症例数の臨床試験を行っているためと考えられるが、そのような薬を出す意義がどれだけあるのか」といった指摘も出ていました。疾患の領域や企業の目指す方向性などによっても違いがあるので、産業全体の研究開発の生産性の分析はもっと精緻に行った方がいいのかもしれません。

 ただ、あらゆる製薬企業の方が、少しでも効率よく、スピーディーに医薬品を開発しようと試行錯誤しているのは事実です。オープンイノベーションの取り組みにその一端が現れているわけですが、多くの製薬企業が現在、バイオベンチャーやアカデミアだけでなく、医薬品開発受託機関(CRO)や異業種の企業などと合従連衡しながら、あるいは製薬企業同士でコンソーシアムを作るなどしながら、リスクとベネフィットをうまくシェアして医薬品の開発を進める方策を模索しています。それが、既にある程度のコストで開発できる医薬品は開発し尽くしてしまい、従来のビジネスモデルでは医薬品を開発することができなくなってきたために行われていることなのか、オミクス技術や情報通信技術(ICT)、金融工学技術などの技術革新によって新しい手法を柔軟に試せるようになったためなのか。前者であれば産業自体が成熟化しつつあるようにも見えますが、後者であればこれからの環境変化の中で、ベンチャー企業にはますますチャンスが出てきそうに思えます。いずれにしても、希少疾患や難病、あるいはいわゆるネグレクテッドトロピカルディジーズなども視野に入れれば、まだ十分な治療が受けられないでいる人はたくさんいるわけで、そういう人たちにどうやって効率よく、スピーディーに医薬品を届けることができるのかについて、より幅広い議論を重ねていきたいと思います。

 ちなみに、医薬品の研究開発の生産性低下に関しては、昨日の勉強会で司会を務められたコーポレートディレクション(CDI)の米倉さんに、現在、分析リポートの執筆をお願いしていて、近く日経バイオテクONLINEに掲載する予定です。こちらも楽しみにしてください。

 それから、BaNZaIでは例年、横浜で開催されているBioJapanの中でセミナーを実施していますが、今年も10月10日10時から11時半にセミナーを開催することが決まったそうです。基調講演の裏番組ですが、参加者の層に厚みが増し、より深い議論が行われるようになったBaNZaIの議論も聞く価値は大いにあります。エコシステムの一員として、バイオ産業の発展に関わりたいと思われる方は、ぜひともご参加ください。

 さて、先週は長崎大学で開催された「先端創薬シンポジウム in 長崎大学」を取材してきました。70年前に熱帯医学研究所を設け、熱帯地方の感染症などの研究に力を入れる一方、被ばく医療の拠点でもあるという特色を持った研究を行う同大学は、文部科学省の最先端研究基盤事業「化合物ライブラリーを活用した創薬等最先端研究・教育基盤の整備」の補助対象6機関の1つに採択され、感染症と放射線障害を中心とする創薬研究を行っています。一方で、治験だけでなく臨床研究にも力を入れるべく、2011年10月に臨床研究センターを開設して、その体制整備を推し進めているところです。さらに、これらを加速させるべく、2012年1月には先端創薬イノベーションセンターを設置し、大学一丸となって創薬に取り組む体制を構築したことを紹介するために、シンポジウムが企画されました。シンポジウムの中から一部の話題を日経バイオテクONLINEの記事として紹介させていただきましたので、どうぞお読みください。

レクメド、ポリ硫酸ペントサンナトリウムはHAMの適応症でフェーズII/IIIを実施へ
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120718/162182/

 経済の東京一極集中が言われますが、大学はあくまでも地域に根差した存在です。ただその大学も現在、改革を迫られ、グループ化や合従連衡を検討せざるを得ない状況です。果たして大学は自ら改革を実現し、地域経済の活性化の牽引車となっていけるのでしょうか。大学改革の行方や、これからの大学の在り方には大いに興味があり、日経バイオテクONLINEでも今後、重点テーマとしてその動向をウォッチしていきたいと考えています。日経バイオテクONLINEでは、アカデミック関連の話題のみを提供する、大学関係者向けの日経バイオテクONLINEアカデミック版も用意しています。大学、公的研究機関の関係者の方はぜひとも購読をご検討ください。

https://bio.nikkeibp.co.jp/academic/
http://nbt.nikkeibp.co.jp/bio/bta/

 それから、分野別の情報提供サービスとしては、日経バイオテクONLINE機能性食品版も用意しました。日経バイオテクONLINEで提供しているニュースのうち、「機能性食品」に関する話題だけを抜き出して、食品関係の方に提供できるようにしたものです。月100本までという制限はありますが、月額1000円と、日経バイオテクONLINEよりもお安くご利用いただけます。

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https://bio.nikkeibp.co.jp/ffood/

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 また、日経バイオテクONLINEでは、皆様からの「人材募集」「セミナー・学会」「技術シーズ」などの告知の掲載コーナーも設けています。「人材募集」は研究者個人による募集告知のみ無料としていますが、「セミナー・学会」「技術シーズ」の告知については、大学などの事務局の方による告知等も受け付けています。以前は全て、研究者ご本人に制限していましたが、「セミナー・学会」「技術シーズ」は事務局の方でも投稿いただけるよう、運用を見直しました。ただし、企業による告知はいずれも有料とさせていただいています。

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                    日経バイオテク編集長 橋本宗明