皆さん、お元気ですか。
 
 現在、東京の様に茹だっている仙台で、日本毒性学会を取材しております。取材でばたばたしており、今月の原稿はきわめて短くなって申し訳ありませんが、できたてほやほやの最新情報をお伝えいたします。

 新薬開発や新規化学物質の安全性評価に動物を使用した前臨床試験は不可欠です。臨床試験失敗の今なお30%の原因である安全性のリスクの中でも、薬剤による肝臓障害はきわめて重要な問題です。今回の学会で金沢大学大学院医薬保健研究域薬学系の横井毅教授が発表する研究成果によれば、カルマゼピンなどの薬剤性肝炎の発症に、免疫系のTh17やTh2が関与していることが、続々と明らかになってきました。今までは、アセトアミノフェンによる肝臓障害が、グルタチオンの枯渇によって起こることが証明されていたのですが、こうした代謝性傷害に加えて、薬剤の代謝産物が免疫系を活性化して、自己免疫性の肝臓障害を引き起こす仕組みが白日の下に曝されたのです。実際、抗IL17抗体でこうした薬剤性肝炎は見事に治療できます。

 より早期の肝臓障害のマーカーとして、横井教授が見いだしたのが、カルマゼピンの3水酸化産物によって肝臓細胞にストレスがかかり、その結果、血中に放出されるのがカルシウム運搬タンパク質であるS1008/9とRAGE(ストレスシグナルに関与)でした。この2つの物質とTLR-4が作用して、樹状細胞やマクロファージを活性化、最終的にTh17免疫システムを活性化させて、肝炎が起こるのです。

 さらに早い薬物肝臓障害のマーカーとして、横井教授はmiRNAの変化にたどり着きました。タンパク質の量の変化よりも、遙かに早く、しかも量的変化も10倍から100倍以上miRNAの方が勝っていることが、確かめられたのです。すでに先行マーカーとなるmiRNA分子の同定にも成功しています。横井教授らは4種以上の薬物肝炎モデルを樹立していますが、いずれも炎症性のタンパク質の量的変化に先行してmiRNAが変化していました。但し、薬剤の種類によって変化するmiRNA種類が異なり、普遍的な薬物肝炎のバイオマーカーにはならず、今後、薬剤ごとにmiRNAの変化を同定しなくてはなりません。

 現在、横井教授はスティーブンジョンソン症候群やTENといった致死性(SJSは我が国で年間2800人発症し、350人が死亡)のモデル動物(正常マウスで薬物の投与法の工夫)の開発に挑戦しています。こうしたモデルが樹立できれば、当然、深刻な薬剤副作用の出現を予測できる早期のMirnaマーカーが発見できる可能性が出てくると期待しています。機能性のRNA研究の最前線として毒性研究から当分目を離すことはできないと思います。

 今月もどうぞお元気で。

      日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満