三連休はいかがでしたか?私は焦げてしまいました。おまけに今朝体重を量ったら、ピークより6.3kgも低下、体脂肪も15%台に。健康的というよりも、衰弱したという表現が当たっているのかも知れません。昨夜の東京は熱帯夜、最低気温27度と、いよいよ夏本番の寝苦しい夜が始まりました。これでまた衰弱が進みそうです。現在、朝5時に起きて、仙台の毒性学会に向かっております。毒性を示す先行的なオミックスプロファイルは存在するのか?そんな基本的な疑問を抱きながら、はやて号に乗っております。

 さてバイオです。

 我が国には1万5000人存在するポスドクの奴隷解放がやっと行われます。米国で奴隷解放宣言がリンカーン大統領によって出されたのが1862年9月。我が国でも高学歴奴隷とも言うべきポスドクの解放が、2012年秋から冬にかけて決まる2013年度の科学研究費補助金の公募要項で宣言されることになります。1996年度から2000年度まで5年計画で受け皿を考慮することなく増員されてきたポスドク一万人計画の矛盾解決に、過去10年以上苦労して参りましたが、やっと大学教官の頭をがーんと殴り、「ポスドクも貴重な人財だ」ということを制度的に認識する仕組みを構築することができました。科学研究に血税を投入し、膨大な国費で養成された国を変える人材を大学のかなりの教官が科学研究という美名の下、自らの私利私欲のためにポスドクや博士の学生を使い捨ててきた陋習を変える突破口となると期待しています。こうした奴隷制度が、ポスドクや博士人材が未来に夢を見ることを阻み、結果的に理系大学院の定員割れを加速、若人に理科離れをもたらした罪は重いと考えています。また、そうした状況を面白おかしくだけ、報道したメディアの罪も問われなくてはなりません。当然のことながら、今まで、大学院生やポスドクの血で論文書いてきた研究者に猛省を強いるだけでなく、大学という人材養成の場から退場していただくことも考えるべきであると思います。

 大学教官の欠陥は、教育者として必ずしも訓練を受けていないという点です。ただの研究者がいきなり教官に成り上がり、学生の生殺与奪権を与えられてきた罪を償うべきだと思います。しかし、教官の評価システムの変更だけでは、本当の奴隷制度の解放にはなりません。奴隷の雇い主に態度を改めよと言っても、奴隷制度そのものは認められているためです。奴隷制度の解放の真の目的は、ポスドクの自由の保障です。今までの、科学研究費で雇用されていたポスドクには専任義務という項目がありました。つまり、科学研究費を獲得した教官のプロジェクト以外に、ポスドクが時間を一分たりともつかってはならないという規定です。我が国の官僚制度の酷薄さと浅薄さは、会計管理の明確さ追求という石頭の生真面目さと融合し、しかも実際に雇用される人材への想像力や愛を欠如した一点の曇り無き正しい制度運用によって、ポスドクの奴隷制度を完成させてしまいました。丁度、いじめ撲滅計画によって、いじめとはカウントされtない自殺者が中学や高校で発生している構造と同じです。いつから行政にリアリティが欠如するようになったのか?国民もポスドクも、通達の文言ではなく、切れば血が出る人間であることの認識があまりに浅すぎる。万死に値する罪であると考えます。

 この秋から冬にかけて改訂される次年度の科学研究費補助金の制度では、研究費を受け取る契約を交わす際に、ポスドクが自分のキャリアアップのために、インターンシップや他のプログラムに参加する自由を認めることが契約書に盛り込まれるはずです。つまりエフォートに自らの問題意識に基づく活動(どこまでかはこれから)がカウントされます。自らの意思で、ポスドクは雇用主である教官の意向とは離れて、自分を研鑽する自由を得ます。今までは、雇用主である教官が無能だったり、横暴だったりして、自分のキャリア形成に役に立たないと気がついても、次の雇用主が決まるまでは、泣き寝入りせざるを得ない状況を打破することができると期待しています。教官も覚悟しなくてはなりません。きちっとポスドクを成長させることができない教官の下から、優秀なポスドクがどんどん流出する、つまり教官とポスドクの関係に市場原理が導入されようとしているのです。もはや、アイデアと愛の無き教官は、たとえ研究費を確保できたとしても、優秀な研究チームを維持できない時代がもうすぐやってくるのです。大学も、教官に人材教育や研究室のマネージメントのスキルを教育する機会を用意しないと、大学としての人材倒産を招くことになりかねません。
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu4/022/attach/1320283.htm

 但し、徒弟制度という大学の陋習の伝統は牢固です。皆さん、油断してはなりません。リンカーンの奴隷解放宣言からジョンソン大統領の公民権法成立(1964年7月2日)によて法律上の人種差別撤廃まで202年もの時間が必要でした。現在でも、科学研究原理主義の守旧派(正当派と自称)が、この秋から冬にかけて、専任義務の緩和阻止に動く可能性は残っています。是非とも皆さん、こうした不幸な反動が我が国の未来を創造する場である大学で起こらないことを、監視し続けなくてはなりません。そして、専任義務緩和は国際的な競争から脱落しつつある我が国の大学改革の最初の一歩に過ぎないことも、心に刻まなくてはなりません。

 しかし過去10年、そして今もポスドク支援を続けてきたかいがありました。奴隷解放万歳であります。 今週も皆さん、どうぞお元気で。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満
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