日本再生戦略が公表に、創薬支援の議論をまたやり直すのか【日経バイオテクONLINE Vol.1758】

(2012.07.13 19:00)

 こんにちは。第2、第4金曜日を担当する日経バイオテク副編集長の河野修己です。

 政府の国家戦略会議が7月11日に、日本再生戦略の原案を公表しました。
政府の日本再生戦略、ヒト幹細胞の新規臨床試験は2015年度までに10件実施を目標に
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120713/162135/

 この中で革新的な医薬品を創製するための支援策として、「医薬基盤研究所が中心となる創薬関連研究機関等による創薬支援ネットワークを構築し、同研究所がその本部機能を担うのに必要な体制強化や業務運営ルールの策定等を行う。同ネットワークについては、今年度から取組を開始し、2014 年度には構築を完了する」と書いてあります。

 アカデミアなどにある創薬シーズの実用化を国がどう支援するかについては、医療イノベーション推進室が2011年度に議論を行い、創薬支援ネットワークを設立することに決まりました。今年6月の医療イノベーション会議で正式に了承されています。
「医療イノベーション5か年戦略の目玉は創薬支援ネットワーク」と、鈴木寛・元文科副大臣
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120618/161651/
医療イノベーション会議、5か年戦略を決定、既存組織のネットワーク化で規模を確保
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120606/161439/

 一方で、上記文章のすぐ後には、「長期間にわたる革新的医薬品の研究開発を促進するため、米国NIH(National Institutes of Health USA)の取組を参考にして、文部科学省、厚生労働省、経済産業省の創薬関連の研究開発予算の効率的、一体的な確保及び執行について、関係府省において2012年度から検討を開始し、必要な措置を遅くとも2014年度までに講じる」との文章もあります。ここが解せないところです。

 当初、医療イノベーション推進室は、支援策が厚生労働省、経済産業省、文部科学省に分散している現状を見直し、自らが予算とその配分機能を持つ組織の設立を目指していました。そのお手本は、まさに米国のNIHであり、医療イノベーション初代室長の中村祐輔氏も、「日本版NIHを作りたい」と発言していました。しかし、結局、新組織の設立はかなわず、各省庁が協力するネットワークで決着したのです。
医療イノベーション推進室、創薬支援で新組織設立を断念
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120424/160725/

 このことが、中村氏がわずか1年で室長を辞任し、シカゴ大学に“脱出”してしまった原因の1つになりました。その後の中村氏の言動は、権限と予算を引きはがされることを意味する機構設立に各省庁が抵抗したことを示唆しています。

 日本再生戦略の原案は、創薬支援ネットワークを活用せよと言っている一方で、日本版NIHに関する議論をもう一度やれと要求しています。同じようなテーマの検討を何度も繰り返し、結果として施策の実行を遅らせるのは、現状を変えたくないときの常套手段です。日本版NIHが本当に必要だというなら、もはや政府のトップレベルで決断するべき段階に入っているというのが私の考えです。

 創薬支援だけではありません。ここ数年、医薬品、医療機器、再生医療などライフサイエンス分野が成長分野とされ、いくつもの検討会が立ち上げられ、議論が行われてきました。その結論はおしなべてごもっともという内容なのですが、それが具体的な施策になるととたんに実効性があやしくなります。多くの研究者が期待したものの、薬事関連での規制緩和が伴わず批判を浴びた先端医療開発特区(スーパー特区)がその実例ではないでしょうか。

日経バイオテクONLINEメール2012

日経バイオテク お薦めの専門書籍・セミナー

  • 「世界の創薬パイプライン2018/2019」
    海外ベンチャーの創薬プロジェクトを大幅拡充。自社の研究テーマと関連するパイプラインの動向、創薬研究の方向性や競争力、開発状況の他社比較に有益なデータとして、自らのポジショニングを確認できます。
  • 新刊「日経バイオ年鑑2019」
    この一冊で、バイオ分野すべての動向をフルカバー!製品分野別に、研究開発・事業化の最新動向を具体的に詳説します。これからのR&D戦略立案と将来展望にご活用ください

PR・告知製品・サービス一覧人材・セミナー・学会一覧