昨夜の台風4号は列島を縦断しましたが、皆さんは大丈夫でしたか?

 私は関西で取材中で、丁度、紀伊半島に上陸した頃に約束していた取材を延期してもらい、大急ぎで宿に籠もりました。新幹線も止まったため、辛うじて最小の被害で止めることに成功いたしました。最近は雨雲レーダーの進歩によりかなり正確に台風の進路や状況を予測できることが幸いしました。逃げ込んだ宿の問題はwowowが見られないこと。EURO2012D組の最終戦は残念ながら逃しました。共に勝てば決勝トーナメントに進出できる英国とホームのウクライナの戦いは、ウクライナの英雄、シェフチェンコ選手の代表最終戦となるために、なんとしても見たかった。録画が成功していることを祈っております。終わってみれば、ギリシャとオランダだけは番狂わせでしたが、欧州の強豪が決勝トーナメントに勢揃い、21日から始まる準決勝が本当に楽しみです。今、天竜川を渡りましたが、水の色が緑灰色、まるで粘土が溶け出してる如き奔流でした。
http://jp.uefa.com/uefaeuro/season=2012/matches/bymonth/index.html

 さて、個の医療です。

 昨日の朝、個の医療を診断薬開発の面からリードしている、ロシュダイアグノスティックス株式会社の新社長の初のプレスカンファレンスが東京で開催されました。2014年までに555億円、11年の売り上げより83億円の増収という強気の中期目標を掲げ、Challenge555と駄洒落も飛ばしておりました。この背景には、個の医療の進展があることは言うまでもありません。加えて次世代シーケンサーの臨床応用の推進なども狙っておりました。米Illumina社の買収は頓挫しておりますが、長い目で見れば、生命科学の先端計測技術がどんどん個の医療に投入され医療に変革を起こす流れに、同社は乗っているのです。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120619/161677/
 
 我が国で現在、臨床検査項目の保険収載も済み、個の医療を実現しているのは10品目に止まります。いずれも抗がん剤で、イリノテカン(UTA1A1*28、*6)、ハーセプチン(HER2過剰発現)、イレッサ(EGFR遺伝子変異)、タルセバ(EGFR遺伝子変異)、ザーコリ(ALK融合遺伝子)、アービタックス(KRAS遺伝子変異)、ベクテッィビックス(KRAS遺伝子変異)、グリベック(bcr-abl融合遺伝子)、タシグナ(bcr-abl融合遺伝子)、ポテリジオ(CCR4発現)、であります。これらの医薬品の2011年度の全世界売り上げはイリノテカンを除き、1兆2547億円(EvaluationPharma 1ドル=80円換算)。世界の医薬市場を8800億ドルと考えると、個の医療化した医薬品は1.8%に止まっています。まだまだ個の医療は始まったばかりなのです。但し、重要なのは特許切れしたイリノテカンを除き、収益性の高い新薬に個の医療の実用化が集中していることです。臨床試験のコンパクト化、短期化による研究開発投資の削減と合わせれば、医薬品企業にとって個の医療は十分魅力的です。従って、コンパニオン診断薬の開発は今後も加速せさるを得ないのです。

 ロシュグループ内で、医薬部門と診断薬部門の協業が2005年から始まっています。09年に米Genentech社を完全子会社化して、個の医療に拍車がかかりました。09年には101件だったバイオマーカーの探索と診断薬開発の協業件数は、11年には220件までに増加しています。しかもコンパニオン診断薬の開発は09年に7件だったのが、20件まで増加しています。臨床試験の後期にある12品目の内、コンパニオン診断薬の同時開発を進めているのは、何と8品目に上っています。米国食品医薬品局もバイオマーカー無しには、抗がん剤の新薬認可を渋る傾向を強めており、ロッシュグループも抗がん剤6品目の内、Erivedge(ヘッジホッグパスウェイ阻害剤)を除き、すべてコンパニオン診断薬が同時開発されています。

 ロシュダイアグノスティックスは、グループ内だけでなく、今年5月に米Millenium Pharma-cuticals社(武田グループ)が開発した抗CD30抗体薬剤複合体SGN‐35に対して、CD30の発現量を検査する診断薬を開発するなど、グループ外の製薬企業やバイオベンチャーとの共同開発も30件以上進めています。

 個の医療の種子はすでに蒔かれたのです。収穫の時も近いと考えます。売り上げ555億円は決して、新社長の力みではないのです。個の医療の健全な成長が同社の売り上げを押し上げることは間違いないでしょう。

 皆さん、今週もどうぞお元気で。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

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