今月も日経バイオテクONLINEの Webmasterの宮田が執筆させていただきます。著者の選定に今尚難渋しております。

 先週は福島出張のため、失礼いたしました。3日遅れのメールをお届けいたします。

  EURO2012は決勝トーナメント進出を賭けて、現在、グループBの最終戦が行われています。オランダ:ポルトガル、ドイツ:デンマーク、いずれも勝者が決勝トーナメントに残る可能性が残り、目が離せません。しかも、ハーフタイムでは、2試合とも1:1と拮抗しています。

 さてプロテオミックスです。

  先週末、横浜で開催されていたISSCR(国際幹細胞学会)は国内外の研究者が集結した一大イベントでした。中でもここに生命科学の技術突破を信じる海外の若手研究者が目立ちました。極東の一国に過ぎない日本で、幹細胞研究の最大の学会が開催されるのも、今回の学会長でもある京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授が創製したiPS細胞のおかげであることは言うまでもないことです。この業績を我が国は大切に育んでいかなくてはなりません。6月6日の医療イノベーション推進会議で、長期的な支援を我が国は約束しましたが、その条件として臨床研究を加速することが定められました。たしかに、いち早く国民に研究成果を返すことは重要ですが、あまりそうした圧力だけを与えるのは得策ではありません。ここは世紀の大発見をじっくり腰を据えて支援する必要があります。研究者からはiPS細胞ばかりに資金が集中すると嘆く声も聞こえてきますが、ここはもっと大きな視野から考えるべきです。iPS細胞を生んだ初期化のメカニズムは、あらゆる生命現象の背景にあります。少し頭を絞れば、我が国に生息する動物系の生命科学者の大部分が自分に関係するテーマとして取り組める問題であると考えています。人の足を引っ張っている暇などありません。

 例えばプロテオームです。今まで、初期化の謎を解くため、第二世代のシーケンサーによる、全ゲノム解析、全発現解析、エピゲノム解析が進んできました。この結報は続々と解明されてきました。エピゲノムの変化と初期化の関係はまだ曖昧ですが、それを除いた、初期化に関する分子機構は現在までにかなり明確になったと考えています。

 しかし、肝心の生命現象の主役であるたんぱく質の研究は大いに遅れています。確かに線維芽細胞に転写調節因子をたんぱく質として無理やり導入すれば、iPS細胞を作成できるところまでは確かめられています。しかし、初期化の課程で、たんぱく質やたんぱく質複合体がどう挙動しているのか?実はまで解明が十分ではありません。今までゲノムやトランスクリプトームなど、たんぱく質の影絵ばかりの研究が先行しているのです。

 ISSCRでは、とうとう欧州分子生物学研究所(EMBL)のJeroen Krijigsveld氏が、定量的プロテオミックスを駆使して、初期化のプロセスを解明する研究の一端を発表しました。急速に技術が成熟しつつある定量プロテオミクスの出番がiPS細胞研究にもやってきたのです。我が国のiPS細胞研究でも、ここで遅れを取る訳には参りません。皆さんのご奮闘を大いに期待しています。

 今月もお元気で。

        日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満