毎月第1金曜日と第3金曜日、第5金曜日の日経バイオテクONLINEメールの編集部原稿も担当しております日経バイオテクONLINEアカデミック版編集長の河田孝雄です。前回の6月1日から2週間ぶりのメールです。

 昨日から第16回腸内細菌学会の取材で神戸に来ておりますが、パソコンの電源確保に苦労しています。真夏に向けた節電対策が進んでいるようで、コーヒー店でコンセントにプラグを差し込みましたが、電気が来ていないことに気がつきました。テナントであるコーヒー店の店員にうかがったところ、ビルが節電対策を実施しているとのことでした。懇親会後に入ったコーヒー店でも、利用できる電源はないといわれました。

 昨年は、首都圏の電気不足対応が大わらわでしたが、今年は関西が首都圏以上に大変です。昨年は、理化学研究所では横浜研究所から神戸研究所への研究機能移転も検討していたようですが、今年は立場が逆になっています。

 腸内細菌学会では産学連携の研究成果が多く発表されていまして、こちらは記事でご覧いただきたいのですが、就職氷河期といわれる現在の就職条件の悪化が、大学院の研究に重篤な悪影響を与えるという話が、初日のシンポジウム1「先駆的人材育成のために」で、国立大学法人の教授の方々から相次ぎ、大変なことになっていると受け止めています。

 国立大学法人は、大学院中心になり、他の大学の卒業生から大学院の修士課程に進学してくる学生も増えていますが、修士1年の夏から就職活動が始まるため、就職活動に追われて腰を据えて研究をできる環境が失われてしまっているのです。

 第16回腸内細菌学会の大会長を務めている神戸大学大学院農学研究科の大澤朗教授が大会開催で数々の工夫をなさっていて、初日(6月14日)は、31人の若手研究者が午前中に3分ずつの口頭発表を、夕方からポスター発表を行いまして、会場は熱気にあふれていました。修士課程2年目の学生の発表も目立ちましたが、このようにしっかりと研究をして学会発表をできる学生は一部に限られてしまっているようです。

 この状況が続くと、大学院における教育・研究が立ち行かなくなる。うそでもいいから、学会発表の実績があることを、入社試験の重要評価項目にして欲しいという旨の発言もありました。

 大学院の修士課程では研究を行って学会発表するのが当たり前と思っていたのですが、そのような常識は通用しなくなっていることを知りました。

 シンポジウム1の直前に行われた光岡知足さん(東京大学名誉教授、前日本ビフィズス菌センター理事長)の特別講演「若き日の回想~創造の喜び~」は、心にしみいる内容でした。いかにして腸内細菌学のパイオニアとなられたのか、「出生から天職を決めるまで」をはじめ興味深く拝聴しました。

 大会長の大澤教授が「腸内細菌学における“コロンブスの卵”―先駆的着想と人材育成にむけて―」をテーマに据えた第16回腸内細菌学会は、神戸大学などで進められている農医連携の取り組みもふんだんにプログラムに盛り込まれていました。

 日本が世界をリードしている腸内細菌研究と、日本が世界に誇る食文化の健康効能研究は、日本の強みを生かして海外事業の拡大にも寄与する分野と思います。引き続き取材に注力していきたいと考えております。

※第16回腸内細菌学会の関連記事

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詳報、森下仁丹と大阪府大、岡山大、ビフィズス菌JBL05産生多糖体の抗アレルギー作用とポリフェノールの成果を腸内細菌学会で発表
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120611/161510/

 メール原稿の締め切り時間になりました。ここ2週間で報道した学会などイベントの記事リストを以下に紹介させていただきます。

※日本プロバイオティクス学会
東海大、LG21ヨーグルトでピロリ1次除菌率向上を論文発表、高IFよりも社会貢献
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120612/161538/

※健康食品フォーラム
第26回健康食品フォーラムに350人、農水省は農産物の機能性など4200万円の公募を近く開始
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120612/161537/

※日本食品免疫学会
免疫調節作用の評価パラメーター基準値策定へ、48社参加の日本食品免疫学会が4項目臨床試験を7月に実施
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120607/161467/

日本食品免疫学会の第5回シンポジウムに100人、演者と座長の計6人のうち5人が医学系
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120607/161466/

※東京大学ILSI Japan寄付講座「機能性食品ゲノミクス」シンポジウム
東大ILSI Japan寄付講座「機能性食品ゲノミクス」シンポに300人超参加、2013年11月終了の次を準備
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不二製油、腎機能の低下を抑制する大豆たんぱく質、LP画分の作用メカニズムの解明進める
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富士フイルムと東京農工大、東大、メッシュコラーゲンの細胞賦活効果を発見
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