こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 先週土曜に友人の結婚パーティーに参加した際に、知り合ったある人のことがあまりにも印象的だったので、バイオ関係とは直接は関係しない話題ですが、紹介させていただきます。

 このメールマガジンの読者で、楽器をたしなまれるという方はどのぐらいおられるでしょうか。かつて、某大手製薬企業の研究所の幹部が音楽の愛好家で、研究所内に楽器練習室を設けたと聞いたことがありますし、最近では大人のバンドがブームと聞くので、意外と身近なところに楽器演奏を趣味とする人がいるかもしれません。

 実は私も中学か高校ぐらいの頃に友人に感化され、エレキギターを弾けるようになりたいと思ったことはありますが、少しいじっただけであきらめてしまいました。確か、左手で幾つかの弦を同時に抑えるというのがうまくできず、入口のところで自分には向いていないと判断した記憶があります。

 だから、先週土曜日に会ったその人が、「大学時代にギターをやっていたけれど、この楽器は完璧ではないのでこれ以上練習しても仕方がない。もっと理想的な楽器を作ろうと思った」と語ったのを聞いてちょっとびっくりしました。出来合いの楽器を触って、扱いにくさを感じることはあっても、だからといって新しい楽器を作ろうなどという発想は私にはなかったからです。「完璧ではない」というのは恐らく私が「向いていない」と思ったのはずいぶんレベルが違うと思いますが、それで「理想的な楽器を作ろう」と思い至ったというのは大したものです。

 宇田道信さんというその人は、その後10年以上の歳月をかけて「ウダー」という電子楽器の開発に取り組んできました。ウダーという名称自体はギターをそのまんまもじった感じですが、見てくれはギターとは相当異なります。両手に収まる黒い筒状の物体で、楽器というよりはブラウン管テレビとか音響製品の部品とでも言った風情があります。筒にはそれぞれ左右対称に弦がらせん状に4回ずつ巻かれていて、弦を抑えると電子音が鳴ります。弦を強く押さえると音が大きくなり、抑える場所を変えると別の音が鳴ります。弦は1周でちょうど1オクターブ分音階が変化し、複数の場所を同時に抑えると和音が鳴らせます。これを両手で巧みに操って、音楽を演奏するわけです。

 音色はいわゆる電子音的ですが、電子ピアノやエレキギターといった他の電子楽器よりも柔らかな印象でした。音程を連続的に変化させられることが恐らくこの楽器の特徴なのでしょう。「最初は円筒でなく、円錐状だったが、改良を重ねて現在の形になった」「全部手作りで作っていて、これまでに試作品を含めて45台程度を製作した。現在は1台40万円で販売している」「演奏できる人は3、4人いるけれど、まだ私が一番うまいと思う」といった説明が、宇田さんのひょうひょうとした風貌のせいもあって何やらおとぎ話のように聞こえました。この楽器に興味を持たれた方は、「電子楽器ウダー」でウェブサイトを検索してみてください。

 この楽器の話をここで紹介したのは、0から1を生み出すことに挑戦している若者の姿に感動したことと、「理想的な楽器」を目指しながらも「さらに改良すると、また一から練習しなければならなくなるので簡単に改良できない」というジレンマに悩んでいる姿がリアルだったからです。

 ちょうど昨日から横浜で日本再生医療学会総会が始まりました。再生医療の実用化を目指した技術開発も、やはり0から1を生み出すことを目指した挑戦といっていいでしょう。そして、再生医療製品はサイエンスの進歩などに伴って改良すべき点が恐らく次々と見つかっていくでしょうが、その一方でどこかの時点で規格を固めて、薬事承認申請用のデータなどを取っていかなければ実用化には至りません。これから予定されている薬事法改正では、頻繁な改良が必要になる医療機器や再生医療製品向けに、その特性に応じた見直しが行われることが期待されますが、それでもやはりどこかの時点では規格を決めて安全性を確認しなければ実用に供することはできないでしょう。また、技術の普及という観点でも、規格を決めることは重要です。規格がころころ変化するようでは、施術者が使用経験を重ね、使い慣れていくことができないからです。

 その観点でいうと、規格を固めて本格的な開発のステージに進むことができるレベルに達している再生医療技術はどれだけあるでしょうか。そんな観点も交えて、再生医療学会総会を取材してみたいと考えています。

 ところで、先週のメールでも紹介しましたが、日経バイオテクONLINE機能性食品版というものを作りました。日経バイオテクONLINEで提供しているニュースのうち、「機能性食品」に関する話題だけを抜き出して、食品関係の方に提供できるようにしたのが機能性食品版です。月100本までという制限はありますが、月額1000円と、日経バイオテクONLINEよりもお安くご利用いただけます。食品関連の話題にのみ興味があるという方は、ぜひご利用をご検討ください。

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 それから、日経バイオテクONLINEでは、皆様からの「人材募集」「セミナー・学会」「技術シーズ」などの告知の掲載コーナーも設けています。「人材募集」は研究者個人による募集告知のみ無料としていますが、「セミナー・学会」「技術シーズ」の告知については、大学などの事務局の方による告知等も受け付けています。ただし、企業による告知はいずれも有料とさせていただいています。

 特に人材募集のコーナーは利用者も多く、投稿いただいた方からご好評をいただいています。一度登録すれば何度でもご利用いただけるので、どしどしご利用ください。

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                    日経バイオテク編集長 橋本宗明