香川真司選手の英国プレミアリーグ、マンチェスター・ユナイテッド移籍合意のニュースは、日本のサッカーがまた一段成長したことを体現するものです。「俺も行きたい」と言っているのに等しい本田選手のコメントもまた、微笑ましかった。今の世代の選手はすでにグローバル市場でスカウトされる実力を備えるようになってきました。まさに世界水準です。学校教育に過度に依存していた若手選手の育成に、Jリーグが地域による育成という新しい概念を持ち込んだ成果だと考えています。まだ、学校とメディアの商業主義から脱却できていない野球もそろそろ根本から考えないといけません。大リーグでの日本選手の評価下落を深刻にとらえるべきではないでしょうか。

 さて、個の医療にもとうとう次世代シーケンスの時代が到来しました。

 2012年5月30日、米国のバイオベンチャー企業、Foundation Medicine社が次世代シーケンサーのゲノム解読データを基に、治療指針などに助言するゲノム診断サービス「FoundationOne」の商業化に踏み切ったのです。この前日、我が国初の新薬とコンパニオン診断薬のほぼ同時商業化を実現した「ポテリジオ」と「ザーコル」が発売されたのも奇縁です。我が国はやっぱり米国にちょうど一週、個の医療実用化競争で後塵を拝していることを体現したニュースでした。
http://www.foundationmedicine.com/

 FM社の技術突破は全ゲノムを解析して、現在のところ200カ所の突然変異や染色体転座など、ゲノム構造の変化を抽出して、抗がん剤などの処方を助言しようというサービスです。従来、米国23&ME社などが行っていたサービスは、全ゲノム解読ではなく、ゲノム上に点在する一塩基置換を計測するサービスでした。全体の情報ではなく、一部を拾い読みして、個の医療を展開するものでした。FM社の技術はこうした拾い読みではなく、ゲノムをすべて精密に解読することにポイントがあります。従来法では検出できなかった、ゲノムの欠失や転座、挿入など大規模な変化をも知ることができます。また、将来、バイサルファイド法なども応用できれば、環境によるゲノム情報の掛け替え、つまりエピジェネティックな変化をも診断することが可能となります。実際、同社は従来の一塩基多型の解析では解明できなかった、疾病に関与する重大な変異を全ゲノムシーケンスで発見したことも、先月末に発表しています。

 同社はBostonに立地したベンチャー企業で、米国の先端ゲノム研究機関であるHarvard大学やDana Farber研究所など、医療分野でのゲノム解析研究の専門家が樹立した企業。私が何よりも注目したのが、米Google Venture社が出資している点です。23&ME社はGoogle社の創業者の夫人が創業したベンチャーです。巨大なインターネット企業が貪欲にゲノム解析に基づいた新しい医療サービスにすでに投資を推し進めている一端を垣間見ることができました。

 日本ももたもたしている場合ではありません。医療ゲノムサービスに乗り遅れたら、現在、液晶テレビ市場の崩壊で、塗炭の苦しみを味わっている電器企業・ICT企業の未来が閉ざされてしまいます。

 皆さん、今週もどうぞお元気で。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

ご連絡は、https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/