昨夜のオマーン戦はもう2点は入れたかったのですが、相手国のキーパーが当っており、3点でも満足すべき結果だったと思います。本田と香川のコンビネーションが抜群で、他の選手も試合を重ねればどんどん絡む多彩なサッカーが展開できそうです。オシム元日本代表監督が掲げたサッカーの日本化の夢もこのチームなら、と期待させます。テニスの全仏オープンはアンツーカーの体力勝負の場。体力で劣る日本選手は姿を消しました。昨夜、2セットダウンで追い詰められていた世界ランクNo.1のジョコビッチ選手は、このままでは済まないだろうとは思いながらも眠気に沈没しました。が、案の定、今朝見てみると、3:2で大逆転。身体も精神も日本選手が学ばなくてはならないことが残っております。

 さて、バイオにも夢を託するプロジェクトが始まりそうです。
 6月1日、那覇からとんぼ返りして秋葉原で開催された「疾患特異的iPS細胞を活用した難病研究」ワークショップに参加いたしました。会場は200人弱の聴衆が埋めていました。7月上旬から募集する新規プロジェクトの説明会ですから、大学や企業関係者も勢ぞろいしておりました。

 またiPS細胞がらみだから、注目したのだろうと、iPS細胞マニアの私に呆れている読者もいるとは思いますが、実は違います。何故、私が今回のプロジェクトに注目しているのか、その理由は本気で文部科学省と厚労省が共同研究を仕掛けたためです。しかも、世界に先駆けて展開した我が国の難病研究と、やはり世界に先駆けて我が国で創出されたiPS細胞を組み合わせた、現在、望みうる最良の布陣を敷いたことを高く評価したいと思います。つまり、世界初×世界初のプロジェクトであるためです。米国の後追いばかりで、苦渋を舐めさせられてきた、日本のバイオイノベーションで全鎖長ヒトcDNAを除き、初めてまともな戦略的プログラムが立案されたとさえ言えるでしょう。ヒトの疾患特異的iPS細胞を樹立し、疾患の発症を再現するヒト細胞疾患モデルを作成できれば、疾患の分子レベルのメカニズムの解明に加え、その細胞を使って新薬のスクリーニングにも直ちに応用することも可能となります。まさに、このプログラムは難病の新薬開発に向けて、大きく夢の扉を開くものなのです。8億円と慎ましい予算ですが、研究者は是非とも精進していただきたいと望んでいます。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120602/161367/

 今回の募集内容は2つ。第一は疾患特異的iPS細胞を樹立、分化を誘導し、疾患を再現する技術を開発することですが、このテーマでは厚生労働科学研究難治性疾患克服研究事業に参加している研究者と製薬企業との共同研究が義務付けられたのです。ワークショップには我が国の製薬工業協会も参加、「疾患特異的iPS細胞は是非とも無料で提供して欲しい」と本音をずばりと口にしながらも、難病の治療薬開発には真剣に取り組むことを誓っておりました。私の調査不足かも知れませんが、文科省のプロジェクトで厚労省の研究プロジェクトに参加している企業との共同研究を前提とする募集なんか、見たこともありません。両省の当事者の努力に敬意を表します。日本のバイオ研究を阻んできた省庁間のデスバレー問題を打ち破る試みです。是非成功させていただきたい。第二の募集内容は疾患特異的iPS細胞の樹立拠点で、樹立した細胞を研究機関に提供し、バンクへの寄託も進めます。従来の研究プログラムでも樹立したiPS細胞のバンク化は提唱されていましたが、研究者はなかなか細胞を手放さなく、我が国のiPS細胞のバンク化は遅々として進みません。今回はここにもう一度力点を置くようですが、方法論に新鮮味があるとは思えず、成功するかどうかは、予断を許さないと思います。バンクに寄託した場合の頒布のルールや知財の分配などのルールの再検討と、樹立した研究者に、何かインセンティブを与える手法の開発が不可欠だと考えます。

 病気の原因が遺伝的解析で明らかになる場合が多い難病(海外の場合は希少疾患に集中)の医薬(オーファンドラッグ)開発は、今や海外のビッグファーマやベンチャー企業の研究開発の主戦場となりつつあります。昨年度より厚労省は難病のゲノム解析研究にも着手、我が国も疾患特異的iPS細胞プロジェクトと合わせ、研究開発の両輪が整備されました。オーファンドラッグといっても、国際市場を相手にすれば十分収益を期待できます。英国Glxo SmithKline社はオーファン医薬開発部門を設立、200疾患に関して新薬開発に着手しています。今後、幅広い疾患の発症メカニズムが明らかになるにつれて、希少病の治療薬だけでなく、生活習慣病など患者数の多い疾患の一部の患者群には適応拡大も期待できます。我が国の製薬企業も、これは単なるCSR(企業の社会的責任)に止まらず、大きな利益を生むと認識しなくてはなりません。

しかし人気取りとはいえ、自民党政権時代に舛添 要一厚生労働大臣が、いきなり難病の研究費を100億円も増やしたことも、結果的には日本の難病研究を加速し、我が国の研究能力と実績を国際競争に耐えるものとしました。あの当時は、今まで微々たる支援しか得られていなかった難病の研究者達は一体どうやってこの途方も無い研究費を使ったら良いのか、頭を悩ましたのが、まるで日本昔話のように思い出されます。

 難病研究こそ、日本の製薬産業を蘇らせ、難病に苦しむ患者の光となる。日本の難病研究では、患者の研究協力・参加が充実している点でも、我が国の医療イノベーションの新しい研究の形を切り開きました。是非とも、今後ともご注目いただきたいと思います。

 どうぞ今週もお元気で。

         日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

ご連絡は、https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/