全仏オープンの一回戦で伊達選手敗退。イタリアのスキアボーネに手も足も出ませんでした。故障を抱えながら猛烈にポイントを稼ぎ、本戦出場を勝ち取った伊達選手も、苦手のクレイコートと、脂がのっているスキアボーネとのドローには弱音も吐こうというもの。伊達選手のブログには、超強気の伊達選手には珍しく、ため息ばかりです。

 さて、個の医療です。

 予定の時刻より30分以上早く、東北メディカル・メガバンク計画検討会は終了しました。実際の提言に対する質問は、的外れなコホート研究に対する質問と、日本のスタンダーどとなるべくインフォームドコンセントなど整備して欲しいという2件だけに終わるという、盛り上がりを欠く審議となりました。提言書の内容は、至極まっとうで誰も異議のないものです。細かい実際の作業を東北大学に設置されるワーキンググループに丸投げしています。何故、この程度の議論が今日までまとめられなかったのか、理由は分かりません。しかも、この委員会の委員には患者も女性代表も、岩手県の代表も存在していませんでした。

 早く終了したため文科省と厚労省の課長1名ずつが終了間際に滑り込みを余儀なくされました。第5回目の会議であり、最終提言がまとめられる会議でもあったので、事務局はもっと揉めるのではないかと懸念したようですが、杞憂に終わりました。提言案に人材養成とインフォマティックスの重要性、中立的な倫理委員会の設置、先行しているゲノムコホートや疫学研究などとの協力、創薬への活用などの文言を盛り込んだ程度の修正で、成案となりました。これで晴れて、東北大学と岩手医科大学が、被災地への医師派遣が公式に可能となったのです。被災から実に14カ月、関係者の努力は理解できますが、少なくとも半年前倒しにできなかったのか?昨年6月に開催された首相官邸の医療イノベーション会議で、電撃的に東北大学が被災地でゲノムコホートを実施することが決められてからも12か月経っています。この際に、被災地のゲノムコホートの争奪戦を繰り広げた研究者がいたことはいずれ本当に被災地のためだったのか検証すべきであると考えており、もし彼らの思いや過剰な親切心が、研究開始の遅れの原因であるとしたら、歴史の審判を受けるべきであると考えます。

 さらに、テニスの伊達選手にとって国民の過剰な期待は実際には迷惑であったように、将来の個の医療の一つのインフラを形成するであろう東北メディカル・メガバンクについても学術研究としての過剰な期待は迷惑以外の何物でもありません。まして、このプロジェクトからゲノムコホートの日本のスタンダードを出すべきだなどという、過剰な期待はお門違いだと私は思います。このプロジェクトはまずは復興事業であることを認識する必要があります。勿論、長期にわたる15万人のゲノムコホートには、大勢の住民の善意と巨額な資金が投入されます。そのため現在の最善の科学知識と倫理水準に従った研究が行われることは当然です。しかし、だからといってわが国のスタンダードを作ることが要請されるのは、私は過剰な期待であると考えます。復興事業がまず優先、最先端のゲノム研究の経験と成果は、わが国のゲノムコホートのスタンダードをつくるための貴重な参考として、止めるべきであると思います。

 現在、ゲノムコホートに類する研究は東北メディカル・メガバンクを支援する文部科学省ばかりでなく、厚生労働省、そしてDNAの採取はケースバイケースに委ねているエコチルまで考えれば環境省までもが実施しています。こうした各省庁にまたがるゲノムコホート研究の標準化、データや試料の共有のルールを決めるのは第一義に学会ですが、ゲノムコホートに関する学会は余りに新しいテーマであるために、まだ有力な学会はありません。疫学や遺伝子解析などに関連する学会が存在していますが、まだ、ゲノムコホートに対して、ありうべき姿を提言するまとまりを欠いております。従って、国の総合科学技術会議の役割が重要となります。ゲノムコホートプロジェクトを前議員の本庶先生が提唱したこともあり、一時は自らがゲノムコホートのエンジンとして動こうとした意図が見え隠れしていましたが、これだけゲノムコホートが林立している現在、自ら先導的な研究を行うよりも、まず本来業務である省庁横断的な科学プロジェクトの効率的連係を目指すべきであると考えています。首相官邸の医療イノベーション会議もゲノムコホートに関して総合調整をする意図を明らかにしておりますが、この際、東北メディカル・メガバンクの立ち上がりを遅らせたような愚は犯さず、両者連携を密にして、わが国のゲノムコホート林立の事態に当たっていただきたいと、心から願っております。

 やっとスタートの号砲が鳴った東北メディカル・メガバンクです。是非とも意欲あふれる若手医師や医療関係者、インフォマティックス、法律、企業関係者などが、東北に結集し、信頼を縦糸に先端技術を横糸に、地域医療の復興と次世代の医療システムの発展を織り上げていただきたい。読者のみなさんも、どうぞ惜しみないご支援を願います。

 皆さん、今週もどうぞお元気で。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

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