東京ではかろうじて金環日食を見ることができました。雲間に時折顔を覗かせる太陽に一喜一憂して、何とか綺麗な金環を拝見することができました。きっと皆さんにもいろいろなドラマが生まれたはずです。子供のころガラスに蝋燭の煤を付けた即席の日食グラスで、日食を観測したことも懐かしく思い出しました。奈良や平安時代から日食は天変地異として歴史に記録されてきました。しかし、最新式の日食グラスもなく、ガラスを入手することも容易ではなかった時代では、人々は天からの災いとただただ畏れるだけでした。大勢の人が、大量に販売された日食グラスをかけて同じ方向を向いたり、TVで大騒ぎをしたり、現代では天上の神秘を畏れる機会を失いつつあります。知りすぎた人類の罪かも知れません。頭でっかちになった人類には日食のインパクトが心に突き刺さらず、何か上滑りしてしまった感じが残念でした。ある日、太陽が無くなってしまうという危機感をもう、私たちはもてなくなってしまいましたのです。

 ところで、UEFAチャンピョンズリーグの決勝戦はご覧になりましたか?ホームで絶対有利のバイエルンを同店PK戦で、チェルシーが制しました。かつて、レッドカード退場でCLのゲームを壊したドログバ選手が、プライドを賭け同点ゴールと、PK戦の最終ゴールを叩き込みました。試合中のPKを外したバイエルンのエースストライカーロッペン選手が、ドログバの悲しみの継承者となったのです。金環日食よりも、サッカーの試合の方に、神は居ることを感じるのは、まだ人間が天体物理より分かっていないためか? なんとも複雑な気持ちでした。

 さてバイオです。

 私にとっては、わが国が誇るペタコン、京も神のごとく理解の外にありますが、バイオテクノロジーや新薬開発に京がもはや不可欠であることは理解できます。

 淡路島全世帯の消費電力量、2万Kwが必要な巨大計算機が、電力不足の関西でどれだけ稼働できるかはともかく、ペタコンのような超高速処理、超並列処理が可能である計算機無しには、ゲノムコホートから生み出されるビッグデータを処理、疾患関連遺伝子を探究することは難しくなりました。近い将来の重要テーマとなる複数の疾患遺伝子の組み合わせによる疾病発生の確率計算や加えて環境因子を足した場合の疾患リスク計算など、大量のオミックスデータを咀嚼して、実際に臨床に貢献するインテリジェンス(判断)に変えるためには今後も京や京以上の高性能計算機は必要となるのです。

 写真を見ても、建物の外観を見てもすごいすごいと驚くばかりですが、これは日食の例に洩れず、私がそもそも計算機の原理を理解できず、神秘性を感じているためでもあります。今後はこうした計算機の取材を進めるために、尚相当な勉強が必要です。という訳でしこしこと取材に通っているのですが、まだ驚くばかりで、的確な嫌味が言えない状況です。最近、もっとも驚いたことは、9月末からいよいよ京を企業や大学が共同利用することができるようになりますが、その使用料が何と、13円/ノード/時。実感は湧かないのですが、説明会に同席した研究者や製薬企業に話をすると、「案外お得だ」という判断でした。この理由は、使用料金には、京とその建物のメンテナンス費用など運営費80億円だけを費用として盛り込んだためです。1120億円投入された京のハードや建物の費用は計算されていません。

 京の使用料はお安い、お得である、だから、バイオ関係者ももっと使わなくてはならない、という3段論法が成り立ちます。しかも、インターネットが接続できる環境があれば利用可能。企業のセキュリティ方針で接続不能なら、東西にあるアクセスポイントで利用可能です。

 京を含めた、10か所の大学・研究機関がHPCIシステムという高速計算機資源の共有システムを運営しています。High Performance Computing Infraという意味らしい。4月27日から5月31日まで、計6回、24年度HPCIシステム利用研究課題募集説明会を開催しています。今年の目玉は当然、京の利用です。課題公募の受付は5月9日に開始しており、電子申請の締め切りは6月15日日本時間午後5時です。まだ、間に合いますので、是非とも皆さん、ご応募をご検討いただきたいと思います。詳細は下記のリンクでアクセスください。
http://www.hpci-office.jp

 産業利用には、トライアルユース(無償!!、利用期間3カ月、随時受付!)実証利用(無償、年度単位、成果公開)、個別利用(有償、年度単位、成果非公開)の3段階があります。実証利用に関しては、利用報告書の記載は極めて簡単で、企業利用を促進しています。論文執筆は3年以内、成果報告書・利用報告書は利用終了後、60日以内に提出ですが、特許申請のため公開延長(最大2年間)の猶予もあります。トライアルユースでは企業名と課題名も非公開で、システムがうまく作動したかどうかの報告義務だけでよい、という大盤振る舞いです。京では、トライアルユースと実証研究を本年度募集します。「トライアルユースとしては大きすぎるという意見もあったが、5万ノード・時間積を提供する」とHPCI。京の凄さを実感するために、24ノード以上の使用で申し込む必要があります。

 ここまで説明を受けると、計算機の素人には、「もう申し込むしかない」と思い詰めてしまいます。勿論、公募課題多数の場合は、厳正な審査によって課題が選択されます。たとえ課題が選択された後に、成果が得られない場合、つまり失敗した場合、再応募を認めるなど、説明会では担当者の「とにかく利用して欲しい」という意欲を感じることができました。確かに、世界最高の計算機でも誰も利用しなかったら、また連坊に「だから2番じゃ駄目なんですか?」と言われかねない。是非とも、皆さん、智恵を絞って応募願います。トライアルユースは随時申し込みです。

 今週も、皆さんもどうぞお元気で。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満
ご連絡は、https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/