こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 3月期決算企業の決算発表の時期となり、編集部で手分けして製薬企業やバイオ企業の決算説明会の取材を進めています。2012年3月期は東日本大震災に加えて、タイの洪水や欧州通貨危機、歴史的な超円高に製造業を中心とする日本企業は苦しめられました。パナソニック、ソニー、シャープの家電3社は1000億円を大きく超える赤字を計上し、トヨタ自動車、ホンダなどの日本を代表する企業も大幅な減益を余儀なくされました。2013年3月期については収益のV字回復を予想する企業も少なくなく、企業業績は回復トレンドにあるはずですが、株価はむしろ低迷が続いています。

 一方で景気に左右されにくいという製薬業界は、2012年3月期は増収増益組と減収減益組に明暗分かれ、まだら模様の状況です。各社の決算発表については日経バイオテクONLINEで記事にしていますので、ぜひお読みください。右上の検索窓に「決算」という言葉を入れて検索すると、決算関連の記事が新着順に表示されます。

 さて、先週金曜は大阪市で開催された分子複合医薬研究会特別シンポジウムを取材してきました。「核酸医薬品の産業化に向けて」というタイトルで、核酸医薬の可能性や課題について、さまざまな立場の人たちを交えてディスカッションしました。

 核酸医薬というと、以前から、アンチセンス、アプタマー、siRNA医薬、デコイ、リボザイム、最近では免疫賦活剤(アジュバント)も含め、さまざまなものが提案されてきましたが、現実に日本で承認を取得したのは血管内皮成長因子(VEGF)を抑制するアプタマーである加齢黄斑変性症治療薬の「マクジェン」のみ。海外に目を転じても、マクジェン以外では米国でサイトメガロウイルスによる網膜炎を治療するアンチセンス「Vitravene」が98年に承認されているぐらいです。また、マクジェンよりもVEGFに対する抗体断片の「ルセンティス」の方が効果に勝るという判断が下され、少し向かい風が吹く状況にありました。

【解説】黄斑浮腫治療薬アプタマー製剤「マクジェン」vs.抗体断片製剤「ルセンティス」、軍配はルセンティスに上がる
 https://bio.nikkeibp.co.jp/article/oc/2008/0495/

 ところがここへ来て、少し風向きが変わってきました。核酸を化学修飾することによって、核酸医薬の課題と常々言われてきた血中の安定性を改善する製剤技術が登場。この技術を用いたアンチセンス医薬「KYNAMRO」(ミポメルセン)を3月28日、米Genzyme社が家族性高コレステロール血症に対する治療薬として米食品医薬品局(FDA)に承認申請しました。

Isis社、Genzyme社、アンチセンス医薬「KYNAMRO」をFDAに申請
 https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120330/160350/

 このような状況で開催されたのが、今回の特別シンポジウムです。シンポジウムの内容は後程幾つかの記事として紹介させていただきますが、講演を聞いていると、日本は伝統的に核酸化学の研究が強いことが非常によくわかりました。また、ベンチャー企業が革新的な技術の開発を進めている他、分析技術やPETイメージング技術などのプラットフォーム技術の側でも核酸医薬の分析、開発支援ができるように準備を進めていることがわかりました。後は開発に大きな投資ができる製薬企業の登場が待たれる状況ですが、200人を超えるシンポジウムの参加者があり、その多くは製薬企業の関係者だったということですから、製薬企業も核酸医薬に大きな関心を持っているのは間違いありません。

 ではどこに課題があるのか。セミナーでは、DDS技術が課題であるとする声が出ていました。確かに、デリバリーに課題があるのは確かですが、では局所投与などで克服できる疾患はもうないのでしょうか。技術的な課題が多々あるのは確かですが、研究者ではなく、製薬企業のビジネスサイドが核酸医薬の利用可能性を十分に検討していないところに問題があるようにも思いました。

 ちなみに、核酸医薬に関しては、我々もベンチャーのボナックの協賛を得て、5月28日にセミナーを開催する予定です。このセミナーでは、東京医科大学の黒田教授、九州大学の石橋教授、国立がん研究センター研究所の落谷分野長らに参加いただき、日本での臨床応用に向けた取り組みを幾つか紹介いただきます。また、製薬企業や規制当局の方も交え、事業化に向けて突っ込んだ議論をしたいと考えています。まだ残席がありますので、ぜひご参加ください。

 http://nbt.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/120528/

中国進出セミナーは当日受け付けもあります
 それから、以前から何度か紹介してきましたが、製薬企業向けに行う中国進出セミナー「医薬品開発・申請のノウハウ」がいよいよ明日開催されます。年率20%と急速に拡大している中国市場の成長力を収益拡大に結び付けるにはどうすればいいか。今回は、医薬品の臨床開発や薬事手続きなど、医薬品開発に焦点を当てたセミナーを用意しました。臨床開発と薬事申請のノウハウに加えて、大きく変貌を遂げつつある中国の医薬品市場、医療制度、医薬品行政の現状と今後に関する講演も用意しています。製薬企業の開発・薬事関係の方はもちろんのこと、経営企画などの方にも役立てるセミナーになると思いますので、ぜひともご参加ください。当日受け付けも用意していますので、明日13時から18時まで、秋葉原UDXビル4階UDXギャラリー(JR秋葉原駅 徒歩2分) まで、ぜひお越しください。

 http://nbt.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/120517/

 現在、先週のこのメールマガジンで紹介させていただいたコーポレートディレクション(CDI)の「中国内需市場攻略を再考する」というセミナーを拝聴しています。このセミナーの内容も、改めてご紹介できればと考えています。

 本日はこの辺で失礼します。ご意見、ご批判は以下のフォームよりお願いします。

 https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/

                    日経バイオテク編集長 橋本宗明