こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 第一三共がバイオシミラーで米社と提携すると発表しました。日本の大手製薬企業でバイオシミラーに本格参入することを表明したのは協和発酵キリンに次いで2社目ということになります。提携先の米Coherus BioSciences社は、米Amgen社や米Genentech社などのバイオ企業出身者で経営陣を固め、豊富な経験に付けられた細胞株作成のスピードを売りにしているようですが、それがどのような強みとなっていくのか。改めて取材してみたいと思っています。

 第一三共がバイオシミラーで米社と提携、「エンブレル」「リツキサン」を開発へ
 https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120508/160914/

 いずれにせよ、バイオシミラーへの参入では、後発品メーカーが先行しましたが、開発にコストがかかることに加え、品質管理や安全対策などのことを考えると、低分子の後発品メーカーが単独でバイオシミラーを手掛けるのは難しいかもしれません。大手製薬企業がバイオシミラーに参入するケースはこれから増えていくのではないかと思います。

 話題は変わりますが、3月末に閣議決定した労働契約法の改正案が研究者のコミュニティで議論になっています。労働契約法改正案の要綱が厚生労働省のホームページに示されていますが、ポイントは以下の通りです。

1.有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換
 有期労働契約が5年を超えて反復更新された場合は、労働者の申込みにより、無期労働契約に転換させる仕組みを導入する。

2.「雇止め法理」の法定化
 雇止め法理(判例法理)を制定法化する。

3.期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止
 有期契約労働者の労働条件が、期間の定めがあることにより無期契約労働者の労働条件と相違する場合、その相違は、職務の内容や配置の変更の範囲等を考慮して、不合理と認められるものであってはならないものとする。

 http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000025bjf.html

 この改正案に対して多くの研究者が危惧を示しているのは、「5年たったら無期契約に転換できるのではなく、5年以上は契約を継続しないように制度が運用されるのではないか」ということです。実際、大学や公的研究機関では数多くの任期付き研究者、非常勤職員が働いていますが、その人件費の財源は期限付きのプロジェクトの経費であるケースが少なくありません。運営費交付金が減少し、期限付きのプロジェクト研究経費への依存度が高まっている大学や公的研究機関にしてみれば、財源確保が確実でない状況で無期契約に切り替えるのは大きなリスクとなります。この結果、この法案が成立すると、5年後に大量の研究者が職を失う事態が発生するのではないかというわけです。

 この法案の研究現場への影響については様々なところで議論されているのでここではこれ以上触れませんが、そもそも“終身雇用が当然である”という日本人の働き方が転換期を迎えているというのに、そこに建て増し旅館のような制度改正を重ねていることに問題があるように思います。終身雇用は、過去においては安定した生活が保障された社員の士気を高めるなど日本企業の強みになってきましたが、IT技術の普及やグローバル化の進展などで社員に求められるスキルが急速に変化する中では企業の競争力を損なう要因になっていると考えます。終身雇用の仕事にずっとしがみついた人に比べて、そうではない人の方が生涯賃金や社会保障の面で不利益を被っているところに問題があるのであって、むしろ多様な働き方を選択できるような社会にすることの方が健全なように思うのですが、どうでしょうか。

「中国」に関する2つのセミナー
 話は変わりますが、以前から何度か紹介してきました製薬企業向けの中国進出セミナー「医薬品開発・申請のノウハウ」が5月17日に開催されます。年率20%と急速に拡大している中国市場の成長力を収益拡大に結び付けるにはどうすればいいか。今回は、医薬品の臨床開発や薬事手続きなど、医薬品開発に焦点を当てたセミナーを用意しました。臨床開発と薬事申請のノウハウに加えて、大きく変貌を遂げつつある中国の医薬品市場、医療制度、医薬品行政の現状と今後に関する講演も用意しています。製薬企業の開発・薬事関係の方はもちろんのこと、経営企画などの方にも役立てるセミナーになると思いますので、ぜひともご参加ください。

 http://nbt.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/120517/

 上記は弊社が実施するセミナーですが、実は当メールをお読みの方にご紹介したいセミナーがもう1つあります。コーポレートディレクションというコンサルティング会社が主催で開催する「中国内需市場攻略を再考する」というセミナーです。これは業種を絞らず、中国市場全般への取り組み方などを紹介するセミナーだということですが、中国で成功を収めているシスメックスの中国地域総裁である樋口裕さんの特別講演があります。シスメックスでは、病院などに装置を販売しても、すぐにサードパーティーの試薬が出回り、なかなか売り上げが伸びない状況だったけれど、それを克服できたので現在の成功があるという話を聞いたことがあります。その実際の取り組みが聞けるということなので、私もぜひ取材させてもらいたいと考えています。中国の医療ビジネスに興味がある方は必見です。

 http://nbt.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/120517/

 5月28日には弊社の主催で核酸創薬イノベーションのセミナーも開催します。技術革新によって実用化への期待が大きく高まってきた核酸医薬の状況をご報告できると思います。皆様のご参加をお待ちしています。

 http://nbt.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/120528/

 本日はこの辺で失礼します。ご意見、ご批判は以下のフォームよりお願いします。

 https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/

                    日経バイオテク編集長 橋本宗明