昨日の博多は30度を超える蒸し暑さでした。

 エピジェネティックスの我が国のパイオニアの一人である九州大学の佐々木教授の取材で、皆さんに重要な情報を伝え損ねていたことに気がつきました。

 近く欧米でエピジェネティックスの変化(DNAメチル化)を目安にした診断薬の実用化が迫っていることです。ドイツEpigenomics社が2011年12月に欧州医薬庁に大腸がんの診断薬「Epi proColon」の製造認可申請をいたしました。また、米国食品医薬品局に2012年後半に申請する計画です。この4月から、FDAの要請に基づき、大腸内視鏡検査との比較臨床試験を開始したところです。

 Epi proColonは世界初のDNAメチル化診断薬となることがほぼ確実です。患者さんの血中を循環している大腸がん由来のDNAを分析します。同社が注目したのが、Septin9遺伝子のメチル化です。この遺伝子は細胞の運動能に関連しますが、大腸がんでメチル化が進んでいることが判明しています。その結果、何故、大腸がんとなるのかは判然としませんが、大腸がんの早期発見のバイオマーカーとしては有用です。同社の欧米人対象の前向きの臨床試験では感度65%、特異度86%と、大腸内視鏡検査対象者を選別する一次スクリーニングには十分活用できる成績です。しかも大腸がんのステージIIとIIIではそれぞれ83%と80%検出、ステージIVでは100%検出可能でした。さらに早期がんであるステーIでも41%の大腸がんを検出可能でした。便潜血検査などよりも、早期のがんを発見し、治療できる可能性を拡大します。

 我が国では同社からシスメックスが技術導入、2012年度内に臨床試験に着手することを発表しています。いよいよゲノム、トランスクリプトーム、プロテオーム、miRNAなどに次ぐ、新しいバイオマーカーとしてエピジェネティックスの変化が実用化されます。同社は肺がんの診断薬としてSHOX2遺伝子のメチル化を開発中であり、今後、多様ながんの診断薬として商品化が先行しそうです。

 しかし、血中に零れ落ちて流れているDNA(Circulationg DNA)は、Epi proColonの例を引くまでもなく、体内の細胞変性の状況を掴む重要な手がかりとなることが証明されたことは重要です。血液から全身の細胞の代謝状態をエピジェネティックスの変化を手がかりに、推定することも可能かも知れません。

 個の医療に関しても、エピジェネティクス・バイオマーカーの重要性を見逃してはならなくなって参りました。

  皆さん、今週もお元気で。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満