こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 先般、米Boeing社と全日空がバイオ燃料を使って世界初の太平洋横断を実施したという話題について、全日空の担当者に話を聞く機会がありました。欧米を中心に、世界中の航空会社が競うようにプレスリリースを発表しており、中には既に有償の定期航空便などでもバイオ燃料を使ったという話題を目にするようになっていますが、バイオ燃料を使った航空機が太平洋を横断したというのは初めてのケースです。ボーイング787型機は随所に日本企業の技術が利用されているため“準国産機”とも言われていますが、その787型機を初めてバイオ燃料で飛ばしたのが今回のフライトだったわけです。

 以前から、航空は規制の多い業界であり、しかも燃料となると経済産業省なども関わってくるので、日本の空港にバイオ燃料で飛んできた航空機を着陸させることができるのかといった話を聞いていましたので、興味を持って取材に行ったのですが、新型の787型機を米国の工場から日本に搬送するための“デリバリーフライト”だったので実現したということのようでした。実現までの経緯は下の記事にまとめましたので、ぜひお読みください。

「バイオ燃料による世界初の太平洋横断が実現したのはデリバリーフライトだったため」と全日空
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120501/160826/

 しかしながら、航空機による人や貨物の輸送は増加する一方で、将来をにらむと現在の石油由来の燃料(ケロシン)に代わる燃料を考えていかなければならないのは明らかです。自動車の場合は、電気による駆動も有力視されますが、航空機の場合は内燃機関に代わる動力源を得るのはあまり現実的でないと思われます。現在は、十分な量のバイオ燃料を製造するのも難しく(実際、今回の太平洋横断飛行もBoeing社が欧州の企業からバイオ燃料を調達できたために実現したということです)、かつコストも石油由来の燃料よりも数倍は高いということで、本当にバイオ燃料なんかで飛行機を飛ばすようになるのか、といった声も聞きますが、バイオ燃料が数少ない代替燃料候補であるのは間違いありません。そんな将来をにらめば、国としても代替航空燃料の開発・調達の手段を考え、規制や指針を整備しておかなければ、海外との人や物の移動が不便をきたすことにもなりかねません。航空機用の代替バイオ燃料の開発は、インフラ整備という観点で国が方針を示すべきことのように思われますが、いかがでしょうか。

 話は変わりますが、先週金曜日にはレギュラトリーサイエンス学会のシンポジウムを取材してきました。医薬品安全対策として、厚生労働省が4月11日に通知を発出した「医薬品リスク管理計画」をテーマとするシンポジウムで、厚労省医薬食品局安全対策課や審査管理課、医薬品医療機器総合機構(PMDA)などの担当者らが、新しい安全対策施策の解説や、Q&Aを行っていました。まずは医薬品リスク管理計画書に関する記事を1つ日経バイオテクONLINEに掲載しました。この後も幾つか追加の記事を掲載する予定ですので、ぜひお読みください。

RS学会、医薬品リスク管理計画でシンポジウム、医薬品リスク管理計画書作成などの詳細を説明
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120502/160873/

 ディスカッションの中でも取り上げられていましたが、医薬品の安全対策に関して感じたことが1つあります。「ベネフィットとリスクのバランスをみて評価する」という言葉をみなさん使われていますが、本当に「ベネフィット」を把握し、リスクとのバランスを評価する仕組みになっているのかということです。最近は、医薬品の審査報告書を読んでいると、PMDAが「リスクはあるがそれに勝るベネフィットがある」と判断して新薬を承認しているケースが少なくないことが分かります。しかし、安全対策の中ではどうしてもリスクのみに目が行きがちなように思われます。今回、導入されるのも「医薬品リスク管理計画」とやはりリスクに重点を置いたものとなっていますが、これが「リスク・ベネフィット管理計画」となるよう、運用などで工夫を重ねていく必要があるのかもしれません。

 少し先の話になりますが、レギュラトリーサイエンス学会では、9月2日、3日に東京・一ツ橋で第2回学術大会を開催します。「国際共同開発によるNDA-有効性・安全性評価はどうあるべきか?-」というシンポジウムも用意されているようで、リスク、ベネフィットの評価に関する国際的な状況も分かるかもしれません。学術大会ではこの他、さまざまな医薬品、医療機器の規制に関わる議論が聞けそうなので、ぜひ取材に行きたいと考えています。

 最後に、これまでに何度か紹介しましたが、5月に2つのセミナーを開催します。5月28日開催の核酸創薬イノベーションでは、技術革新によって実用化への期待が大きく高まってきた核酸医薬の状況をご報告します。

 http://nbt.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/120528/

 5月17日の製薬企業向け中国進出セミナーでは、第12期5カ年計画の下で、大きく変貌を遂げつつある中国医薬品市場の状況と、中国市場に進出するための臨床開発と薬事申請のノウハウをお伝えします。

 http://nbt.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/120517/

 どちらも自信を持ってお勧めできる内容ですので、どうぞ皆様、ご参加をご検討ください。

 本日はこの辺で失礼します。ご意見、ご批判は以下のフォームよりお願いします。

 https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/

                    日経バイオテク編集長 橋本宗明

(訂正)日本の航空会社によるバイオ燃料を使ったフライトが「初」と誤解を招く表現がありましたが、2009年に日本航空がデモンストレーションフライトを行っています。バイオ燃料を用いた「太平洋横断飛行」と787型機による飛行」が「初」なので、それが明確になるように訂正しました。