なでしこジャパンも開幕し、我が国のサッカーリーグも始まりました。欧州ではシーズン終盤になり、真剣勝負の試合が続いております。しかも、4月17日から欧州チャンピョンズリーグの準決勝も始まります。欧州のプロサッカー選手にとっては、4月、5月は血反吐を吐く厳しい日程です。14日には、リーガエスパニョーラで勝ち点4差で首位を走るRマドリードのC.ロナウド選手とそれを追うバルセロナのメッシ選手が共に、リーガの記録である年間41得点を記録するなど、異様な盛り上がりの内に、伝統の対戦(クラシコ)を迎えます。これは生で見たい。しかし、4月21日26時45分(22日午前2時45分のこと)からは厳しい。つくづく、地球が丸いことを恨みます。

 先週の土曜日、東京は雨が降りました。そのため幸いにも、東京大学大学院総合文化研究科「人間の安全保障プログラム」のフォーラムに参加できました。このプログラムの参加者を中心に我が国の医療政策を議論する集まりで、相当勉強になりました。多分全貌を把握していないための誤認かもしれませんが、短兵急に消費税と医療の給付水準を直線的に議論しているだけでは、財務省の策に乗っかるだけ。わざわざ東大が、財務省の政策を認知する必要もないと考えました。今、私たちが直面している問題は、もっと大きな問題ではないか? 大学という自由な知は、もっとラディカルに議論をしなくてはなりません。フォーラムでも、本質を突く発言に何度か頷きました。是非とも、我が国の医療というか、我が国の国民の生き方、国家のあり方に対する提言と、それを選択するプロセスを提示していただきたいと願っております。
http://hsp.c.u-tokyo.ac.jp/

 このフォーラムの議論を聞いて、私は本当に不思議な国ニッポンに住んでいるのだと、つくづく気づかされました。

 国はやっと社会保障と税(負担)を同じ俎上に乗せたと胸を張っておりますが、票が欲しい政治家との馴れ合いで、社会保障を先行して拡充してきた行政の罪を忘れてはなりません。とうとう辻褄が従来法でできなくなったために、消費税増税による当面の辻褄合わせを提案しているのです。消費税自体は人口の伸びが止まった国では止むを得ない税制だと思いますが、いくら増税で辻褄を合わせてもこの国の全体の財政の構造と行政の執行によるアウトカムの全体像を把握し、改革を進めなくては、今まで国債よって財務省が辻褄合わせをしてきた手法に消費税増税を組み込むことに過ぎない。手遊びです。実際、フォーラムでも元財務省の官僚が白状していましたが、今年度予算で新規国債発行が前年よりも1000億円削減し、44兆2000万円になったと政府は自賛し、マスメディアもそのまま伝えていますが、消費増税が認められなかった場合の年金国債2.6兆円と復興債2.7兆円を加えれば、新規国債発行は前年より膨れ上がっています。財務省のこうした辻褄に私たちがもう付き合いきれないというのが、現在の危機の構図です。おまけに東電福島原発事故のごたごたで今まで我が国の行政コストを抑えてきた国民の信頼(これが過剰だったことも問題だと思います)も失われました。

 今回のフォーラムで学びましたが、例え消費税を5%増税しても2015年度の社会保障4経費(基礎年金、医療、介護、少子化対策)の3分の1しか改善しない計算です。しかも、2015年度の4経費総額は42兆円、現在の17-18兆円(少子対策がない3経費)と異常な伸びを財務省は算定しています。これだけ少子化にこれだけ投資しても、人口の構造変による労働人口の回復には時間がかかるためでしょうが、総てを財や税を生まない経費として算定するはフェアではありません。知り合いの経済学者によれば長期的に見れば、道路工事よりも医療に資金を投入した方が、経済的波及効果は大きく、所得税や消費税として国庫に入ることを無視してはならないのです。こうした資金の循環を可能にするために医療での規制緩和をもっと真剣に議論しなくてはなりません。医療関係者は、厚労省と財務省が演出する診療報酬点数という魔術に翻弄され、本来患者を癒すという目的は同じなのに、経済的に利害を衝突させられ分断統治を受けているのです。こうした状況に異議申し立てできるのは国民、そして病に直面する患者とその団体であると思います。国民に、まず医療費や国の歳出・歳入の構造を明らかにし、同時に国費を投入した、結果である医療成績(例えば、がんの5年生存率や、疾患患者の数、医療に対する満足度、医療費のコストパフォーマンス、各種疾患の治療成績など)を国が責任をもって明らかにする必要があるでしょう。ソ連が崩壊した最大の理由は情報公開です。我が国の行政の問題は情報公開が恣意的に行われている点です。我が国ではがんの5年生存率はたった6府県のがん登録、しかも数字のアップデートも十分ではないと、今回のフォーラムで厚労省の関係者が明らかにしています。「アウトカムを調査していないため、国家が投入した費用で医療が良くなったかどうか、判定できない」というのです。問題の一つの根がここにあります。国家公務員の守秘義務など問題にするより、まずは公開義務を定めなくてはなりません。政府への信頼が失われた今、旧来の統治スタイルである「由らしむべし知らしむべからず」はもはや通用しないと思います。情報公開なくして、つまり医療制度の効率を個人的な経験や感情で議論している今の構造では、我が国の医療がよくなるはずはありません。

 実は今回のフォーラムで一番期待していたのが、何故日本は近隣諸国や米国と比べて軍事費は少なく、米国のGDP比14%、他のOECD諸国に比べても医療費が9%以下と低いにもかかわらず、何故、国庫と地方自治体には借金がGDPの2倍近く積み重なってしまったのか?これは本当に、世界に先駆けて高齢化だけが理由なのだろうか?財務省は我が国の行政が世界で最も効率が良いと自賛しているが、ではこの借金の様は何なのか?という疑問に対する解答でした。どこに私たちはどうお金を使っているのだろうか?そしてその結果はどうなのか?そんなこともこの国では分からない。本当に不思議な国です。

 まずは情報公開が、不思議の国からの脱却に必要だと痛感いたしました。皆さんと共に、頑張らなくてはなりません。

 どうぞ今週もお元気で。

         日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

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