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 アグリバイオ最新情報【2012年3月31日】のハイライト
       ISAAA日本バイオテクノロジー情報センター(NBIC)の冨田房男代表
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 今号から月に一度、組み換え作物を主としたアグリバイオ最新情報のハイライトを紹介します。ご質問やコメントを歓迎いたします。筆者はバイオベンチャーのA-HITBio(http://www.a-hitbio.com/index.html)の代表取締役でもあります。

 これまでにも何度か類似の報告が出ておりますが、オーストリア、オーストラリア、ノルウェー、アイルランド、トルコ、ハンガリーの科学者による3年以上の研究の結果、遺伝子組み換え(GM)食品の動物に対する健康有害性はなかったとする報告は、やはりそうかと確認できました。これでもまだ安全性に問題があるとする意見には、大いに疑問を感じます。

 このところブラジルの動きが急です。今回もダイズの新品種の開発が報じられています。またこれに呼応するのかもしれませんがオーストラリアの動きも見逃せません。アメリカもまた承認までの時間を短縮するとしているので、ますます組み換え作物が出てくるのが速くなると予想されます。日本はどうなるのか、アジアの中でさえ心配なのに、世界からはさらに取り残される感じがする私の感じ方はおかしいのでしょうか。

 アイルランドの組み換えジャガイモは、セルフとも考えてよいのですが、やはり組換えになるようです。しかし、アイルランドは飢饉があった関係もあって動きがスピーディーです。当然でしょう。

 将来のことですが、クモ毒の短鎖ペプチドは、次のバイオ農薬として興味があります。

 ISAAAアグリバイオ最新情報【2012年3月31日】の目次は以下の通りです。

世界

FAO とBill Gates氏が飢餓対策で協力
名古屋-クアラランプール補足議定書に51署名がされた
国際共同研究の結果、動物での遺伝子組み換え(GM)食品の安全性が確かめられた

アフリカ

KARI: 2014年までにケニアでGMワタが商業栽培される
ナイジェリア農業大臣がビタミンA強化キャサバを打ち出した

南北アメリカ

ブラジルに新ダイズ品種が導入された
USDA は、GM作物の承認プロセスを速くする

ASIA

パキスタンの上級指導者とメディア関係者が遺伝子組み換え作物の現状と将来性を語り合った
ヒトプロインスリン遺伝子がジャガイモで発現された
バイテク情報ネットワーク会合をタイで行った
オーストラリアの組み換えワタへの研究投資は3500万米ドルに上昇した
報告: インドは改革なしでは中国のような成長は望めない
パキスタンの政府バイオセイフティ委員会はBTトウモロコシの圃場試験を承認した
フィリピンの研究: アジアアワノメイガは、まだBT トウモロコシに感受性である

ヨーロッパ

TEAGASC (アイルランドの農業・食品開発局)は、遺伝子組み換えジャガイモの圃場試験を申請
果樹の遺伝子組み換えに関する総説

研究

作物の病気と気象変動をつなぐ新研究

遺伝子組み換え作物以外の分野

合成クモ毒は、将来のバイオ殺虫剤になり得る

 全文はこちらでお読みいただけます。
 https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120411/160558/

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- “国産バイオプラスチック” の可能性は -
                  バイオインダストリー協会 大島一史部長
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 先月では形態を制御したバイオマス(BM)とプラスチックとの複合化を新たなWPC(ウッド・プラスチック)と捉え、バイオプラスチック(BP)の拡がりとしました。今月はさらにBMの活用の路を考え、“国産BP”の可能性を探ります。

 ヒントはBraskem社(ブラジル)が2008年6月に出願した特許情報にあります(WO 2008067627:http://www.wipo.int/patentscope/search/en/WO2008067627)。サトウキビ由来エタノールの脱水エチレン製造法を提供する特許ですが、実施例-1によればサトウキビ1000トンからのポリマー原料グレードのエチレン収量は34.1tとされています。注目すべきは、プロピレンも並行生産されており、上記エタノール製造過程で発生する余剰物(茎や葉、またバガスなど)をガス化して合成ガス(CO/H2)を形成し、メタノール(MeOH)およびジメチルエーテル(DME)経由で化学変換によりプロピレンを得るスキームとし、サトウキビ1000tのスケールで合成されるポリマー原料グレードのプロピレンは30tと評価されております。

 プロピレンの合成法としては、エチレン、あるいはブタノールからブテンを経由した合成法やプロパノール脱水法等があり、BMからの発酵法が国家プロジェクトでも検討されています。民間側でも、例えばリグニンを含まないセルロース系バイオマス(いわゆるソフトバイオマス)からプロパノールを発酵法で合成し、次いで脱水してプロピレンとし、重合によってポリプロピレン(PP)を合成する構想をホンダ技術研究所やマツダが公表しています(前者が07年9月、後者が08年6月)。

 一方、ガス化法としては合成ガスから、Braskem社のようなDME経由法以外にFischer-Tropsch法(大戦前にドイツで石炭から石油代替燃料としての液化炭化水素を合成する反応法として開発された合成法)もあります。すなわち、BMを原料としたFT法(BTG(BMからのガス化)やBTL(BMからの液化)の一種とも言えます)によりプロピレンへ変換する事が可能で、これらの経済性については、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)委託調査事業「平成18年度バイオマス資源からのエチレン/プロピレンの製造技術開発事業の実施可能性に関する調査」(ダイヤリサーチマーテック(07年6月12日))の中で検討されています。国産BMを想定すると収集コストなどの課題はありますが、ガス化法は化学工業にはなじみ易く、合成ガス、MeOHがバイオ化されると、以後多様な化学品や化成品、さらにポリマー原料が現状の石油コンビナートの中で製造されることになります。特に地域賦存(理論上存在するとされている)の未利用BMのガス化法によるMeOH合成は以後の輸送にも有利であり、石油化学との共存も可能となり、 “国産BP” もあり得るというのが小職の想いです。

 さて、過去一年間本欄に取り組みましたが、小職の担当は本号までとなります。お問い合わせや励ましなど、各位に助けられながらの一年間で、有り難う御座いました。今後の皆様のご活躍を祈ります。