こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 先般、このメールで医療機器に関して、「医療機器、特に治療用機器はこれまで完全に輸入超過でしたが、日本が得意とするものづくり技術が生かせる分野であり、電機や機械などのものづくりメーカーが企業買収などを通じて医療機器分野に参入する動きが活発化しています」と紹介したところ、読者の方から下のようなご意見をいただきました。

 (以下引用)良いことと思われがちな「ものづくり技術」は、半面一回の試作で十分な評価もせず、「評価技術の低下」を招いています。一方、開発経験のない医療・福祉等分野の専門家(=現場ニーズ提案者)も、提案はしますが評価方法には通じていません。よって開発者が提案者と仕様をいくらすりあわせても本質的な評価ができず収束しません。我々は、「医療・福祉分野では評価方法も含めた開発力・技術力が無いと通用しない。」との認識でおります。現在我々は、評価方法を含めた開発力・技術力を踏まえた、本質的発展から来る機器・用具開発の支援を実現すべく行動しています(引用ここまで)

 ご指摘の通りで、医工連携による新規産業創出がかねてより期待されながらもなかなか実用化に結びつかない背景には、開発初期の段階で評価技術を考慮してこなかったという面があるかもしれません。しかし、国立医薬品食品衛生研究所では次世代医療機器評価指標検討会を設けていますし、国立医薬品医療機器総合機構も薬事戦略相談の中で医療機器についても取り扱っています。また、これも以前紹介しましたが、厚労省による臨床研究や治験の拠点整備も進んでいて、日本発の技術シーズを実用化に結びつけるための基盤が整いつつある状況です。もちろんこれだけで十分というわけではないでしょうが、以前とはかなり体制が違っており、異分野からの新規参入の障壁が取り除かれつつあることも確かでしょう。

 ところで、昨日、東京大学大学院医学系研究科生物統計学講座の主催で開催された生物統計に関するシンポジウムを、途中からですが取材させてもらいました。マッキャンヘルスケアの西根英一さんの「医療と健康のマーケティングコミュニケーション」の講演、大橋靖雄教授の「何がインフォームドか」という問題提起の講演ともに面白い内容でした。とりわけおもしろかったのが、スタットコムの戸梶亜弥さんの「Sunshine法時代の医学Publication Planning」の講演です。

 米臨床腫瘍学会(ASCO)などの大きな学会の時期になると製薬企業やベンチャーのプレスリリースがぶんぶん飛んでくるのでうすうす感じてはいましたが、「Publication Manager」という仕事があって、フェーズI開始から市販後のフェーズIVに至るどのタイミングでどのような論文を、どのジャーナルに掲載するのかを、これほど戦略的にプランニングしているのだとは知りませんでした。

 米国では、Obama大統領によるヘルスケア改革法の中にサンシャイン条項が設けられ、2013年から製薬、医療機器製造者は医師、医療関係者への物品・サービスの提供を、ほぼすべて連邦保健福祉省(Department of Health and Human Services)に報告、情報公開しなければならなくなります。日本でも製薬工業協会が透明性のガイドラインを策定したり、医療用医薬品製造販売業公正取引協議会(メーカー公取協)が接待行為の基準を見直すなど、企業と医師との関係は透明化される方向に向かっています。そんな中で、企業が医師に対して、より効果的に医学情報を伝えるには、「論文出版と学会発表を組み合わせ」「倫理規定を含め、ガイドラインに添った形で」「プレスリリース等、上手に利用して」かつ「承認取得、知的財産確保のスケジュールなどにも配慮」しながら総合的な計画が必要である、というのが戸梶さんの講演の趣旨で、なるほどと思った次第です。いずれにせよ、企業のリソースがきちんとしたエビデンスを作る方向に振り向けられ、その結果、国民の医療がよりよくなるのは歓迎すべきことです。

 話は変わりますが、日経バイオテクONLINEでは、コミュニティーというコーナーを設け、そこには企業や研究者に投稿いただいた情報を掲載しています。アカデミアからの無料の情報発信コーナーのようなもので、この投稿の一部がローテーションで、TOPページの「製品・サービス・技術シーズ」「人材募集」「セミナー・学会」のコーナーに表示されます。

https://bio.nikkeibp.co.jp/community/

 このうち、特に人材募集のコーナーの利用度が高く、1日に2、3件は新しい情報を掲載しているという感じです。このコーナーは、大学、公的研究機関の研究者の方には無料で投稿できるようにしているのですが、雇用する方に責任を持って投稿していただくという意味もあって、秘書や事務局の方ではなく、必ず研究者ご自身で、CONNECTというシステムに登録して、投稿いただくようにお願いしています。登録から投稿に至るのがちょっと煩雑ですが、セキュリティ対策と個人情報の管理のためにこういう運用になっていることをご理解ください。一度登録すれば何度でも投稿可能ですので、ぜひご利用ください。

https://bio.nikkeibp.co.jp/help/manual.html

 また、「技術シーズ」「セミナー・学会」のコーナーは、これまでは無料投稿は研究者の方に限定させていただいていましたが、少し運用を見直し、大学、公的研究機関の所属であれば、事務局の方でも利用できるようにいたしました。CONNECTというシステム上で名刺交換を依頼いただく際に、「技術シーズ欄に投稿希望」「セミナー・学会欄に投稿希望」とコメントを入れておいていただければと思います。たまたま最近、久しぶりに「技術シーズ」のコーナーに投稿があったので、参考までに下にリンクしておきます。このような形で告知したい内容をご投稿いただければと思います。

https://bio.nikkeibp.co.jp/community/bio_f_seihin.html?guid=2852

 なお、企業による投稿は、いずれのコーナーも有料とさせていただいています。有料投稿を希望される場合は、下をご覧ください。

https://bio.nikkeibp.co.jp/help/ad.html

 最後に、先週、先々週のメールでも紹介しましたが、5月に2つのセミナーを開催します。5月17日開催の核酸創薬イノベーションでは、技術革新によって実用化への期待が大きく高まってきた核酸医薬の状況をご報告します。

 http://nbt.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/120528/

 製薬企業向け中国進出セミナーでは、第12期5カ年計画の下で、大きく変貌を遂げつつある中国医薬品市場の状況と、中国市場に進出するための臨床開発と薬事申請のノウハウをお伝えします。

 http://nbt.nikkeibp.co.jp/bio/seminar/120517/

 どちらも自信を持ってお勧めできる内容ですので、どうぞ皆様、ご参加をご検討ください。

 本日はこの辺で失礼します。ご意見、ご批判は以下のフォームよりお願いします。

 https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/

                    日経バイオテク編集長 橋本宗明