東京はまさに春爛漫です。取材先に向かうために神宮外苑をかすめましたが、そよ風に満開の桜から花びらが零れ落ちていました。東京のソメイヨシノも今週が最後となりそうです。

 先週、参議院の否決を受けて、両院議員総会で平成24年度予算が成立しました。衆議院で民主党と日本新党の連合政権が優勢なため本予算案は国会にて成立しました。ここまでは私たちも社会科の教科書で教わった衆議院優位を実現したものですが、それならば平成24年度の予算が執行できるかというと、そうでもないのが、我が国の議院内閣制の問題です。借金まみれのわが政府は予算を執行するためには、国債を発行しなくてはなりませんが、公債法案は通常の法案であるために参議院で否決されれば衆議院で3分の2の議決で成立しますが、現在、ぽろぽろと脱党しつつある民主党と国民新党の連立政権だけではこの3分の2を確保することが不可能な状況にあるのです。このままでは、国庫の資金が尽き、国家公務員の給料不払いや、国民へのサービスが止まる事態も招きかねません。とは言うものの、本日4月9日、月曜日は両議院ともお休み、議員の中には地元の野球大会に参加している議員も居るほど、危機感がないという状況です。霞ヶ関の官僚も、与党も野党もこの危機にあっても、のほほんとしている政治に呆れ顔であり、国家論を議論するかつての熱気も失せています。

 さて、消費税法案の上程もまだ決まっておらず、一方で北朝鮮の”衛星”打ち上げも近づき、何が起こっても驚かない状況ですが、厚労省内では薬事法改正WGが議論を煮詰めています。バイオテクノロジーの立場から見て、一番の興味は再生医療・細胞医療の取り扱いです。第二の興味は医療機器の取り扱いとなるでしょう。一時、薬事法以外で新たな法律を興し、医療機器や再生医療を管轄するというアイデアも浮上しましたが、今ではすっかり改正薬事法で、別に章をそれぞれに立てて明確にするという線でまとまりそうです。1960年に成立した薬事法は、寿命52年にも達しようという古色蒼然たる法案です。その間に起こった社会情勢や、ライフサイエンス・医学の技術突破を、33回にもわたる改正に改正を重ねて対応して参りましたが、これはそろそろ限界に達しつつあります。現在の薬事法では、第6章と第7章に医薬品等という呼称で、毒薬・劇薬、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器を十把ひとからげにそれぞれの章に収めておりますが、やはりこれはもう明確に分けた方が妥当であると考えます。焦点は医療機器を別章立てした時に、再生医療・細胞医薬を医薬品の章に納めるのか?医療機器の章に納めるのか?です。ここで現在私たちが大雑把に議論している再生医療・細胞医薬の自家、他家、そして積極的な治療効果の有無も勘案しながら、再生医療・細胞医薬という散文的な呼称を分類する必要が出てくると思います。そしてこの分類の枠組みこそが、その後の再生医療・細胞医薬の研究開発体制、臨床開発体制、審査体制、薬価・診療報酬に影響するのです。是非とも、ここは知恵の絞りどころです。

 厚労省が現在進めている薬事法改正は、ある意味では論理的だと思いますが、しかし、これはあくまでも漸進的な改正に止まります。増築で全体最適化が崩れそうになっている薬事法を全面的に刷新する必要があるのではないでしょうか?しかし、これは官僚の手に余る。むしろこれこそが政治の出番です。選挙なくしてこうしたジレンマを打破することは難しいかも知れません。厚労省には例外的に優秀な官僚も確かに存在しますが、その口癖が「一歩一歩すすめる」では寂しい限りです。
http://www.houko.com/00/01/S35/145.HTM#s6

 もう一つ薬事法だけを改正していて十分なのか?という疑問も提示いたします。医療行為は薬事法のみに縛られていません。医療法と医師法にも縛られており、その結果、我が国の再生医療・細胞治療には先週のメールで指摘したとおり、大混乱が生じています。一部の医療機関は薬事法によって再生医療・細胞治療を十分な安全性も担保されていないまま、医師法と医療法を背景に医師の責任によってどんどん施術している状況があります。高齢化社会を救う切り札となる再生医療・細胞医薬が、薬事法と医師法・医療法の狭間に落ち込んでしまったのです。今回の薬事法の改正でどこまで、医師法、医療法との調整を進め、国民が安心して有効な再生医療・細胞医薬の恩恵に与れるようになるか?是非とも注目していただきたいと願っています。この錯綜した状況を整理するために、再生医療・細胞医薬の法的基盤を整備する工程表を作成する必要があると、痛感しています。

 どうぞ今週もお元気で。桜が散る前に堪能いたしましょう。

         日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

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