現在、フロリダでSony Ericcson Open2012が行われています。今朝の午前0時から錦織選手vsナダル選手の好カードが始まり、善戦空しく6:4、6:4で惜敗しました。第一セットの第一ゲームでナダルのサービスゲームを15:40と追い詰めながら、これを取れなかったのが敗因かもしれません。まだメンタルや試合のマネージメントを強化しなくては勝てません。08年に1セットをナダル選手から奪取しており、今回は期待していたのですが技術やパワーではナダル選手を押しながら、最後の最後でひっくり返されえてしまいました。ただし、錦織選手のバックハンドはナダル選手にとっては脅威になっており、今年中にナダル選手にもう一回対戦できれば、もう少しポイントを取れるようになると確信しました。まだ、ナダルの本当の戦いであるスタミナ勝負に持ち込めるかも知れません。そこで錦織選手は新たな課題を見つけるでしょう。しかし、錦織選手は凄い勢いで成長を続けています。

 さて、個の医療です。実は我が国の個の医療も凄い勢いで成長を、米国に追いつき追い越せで、とうとう追い越してしまったのかも知れません。昨年の8月に米国食品医薬品局は、新薬とその新薬の適用患者を鑑別する診断薬の同時認可を、しかも2種の新薬とそれぞれに対応する診断薬の2セットの同時認可を実現し、個の医療のリーダーであることを、きわめて上手に世界に宣言しました。認可されたのは、悪性黒色腫の標的薬「ZELBORAF」とその標的である変異型BRAFたんぱく質(BRAFV600E)を検出する診断薬「cobas 4800BRAF V600 Mutation Test」(RT-PCR)と非肺小細胞がんの標的薬「XALCORI」とその標的である融合型ALK診断薬「Vysis ALK Break Apart FISH Probe Kit」でした。

 その際に、このメールでも日本では同時認可など、絶望的だと論じたのですが、日本政府はその期待を見事に裏切りました。この手もあったのか!つまり診断薬の先行認可をおこなってしまったのです。我が国の個の医療の先陣を切るのは、順調に行けば5月に発売される見込みの協和発酵キリンの抗CCR4抗体「ポテリジオ」(モガムリズマブ)と協和メデックスのCCR4診断薬とファイザーの「ザーコリ」(非小細胞肺がんの標的薬「XALCORI」とアボットの「Vysis ALK Break Apart FISH Probe Kit」です。医薬品は、それぞれ2012年1月と2月に薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会を通過しました。2012年3月26日、薬事・食品衛生審議会薬事分科会で公表された両者の添付文書では、予め適用対象の患者を診断するように明記されていました。つまり、個の医療のための診断薬(コンパニオン診断薬)が必要であることが明記されたのです。しかも、3月2日と2月29日にそれぞれ診断薬は正式に薬事認可を獲得しています。つまり、我が国では同時認可ではなく、診断薬先行承認となった訳です。

 「診断が確定できなければ、治療できない」、薬事・食品衛生審議会医療機器・体外診断薬部会で、こうしたまっとうな意見が出た結果だと聞いています。部会が機能した珍しい事例といえるでしょう。今後、新薬と診断薬の同時申請で、診断薬の先行承認というのが、我が国の個の医療の前例となることを期待しています。
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120327/160236/

 ただし、勿論問題も残っています。がん遺伝子検査2100点の壁です。大腸がんの抗EGFR抗体の適用患者を鑑別するKRASの突然変異検査は、赤字覚悟で2100点(2万1000円)の診療点数で行われています。09年に行われた先進医療では8万円も取っていたのです。今でも5-6万円は必要といわれています。診療報酬の改訂毎に、新しい診断薬の区分が設定されます。今回の個の医療の診断薬は、そのタイミングを逸したため、既存のがん遺伝子検査の区分、2100点を受け入れなくてはならないのです。遺伝子検査に関しては、診断薬メーカーはこれでは赤字です。しかし、新薬が発売されるタイミングが決まった今、診断薬メーカーは診療報酬点数でもめることも許されない。診断薬先行認可には、我が国の厚労省が仕組んだ巧妙な罠があったのです。持続的な個の医療をわが国で展開するためには、診断薬の大幅なコストダウンか、新薬メーカーの負担を迫るか?2つに1つの選択肢に悩むことになります。

 しかし、ともあれ、我が国にも個の医療の春がやってきました。

  皆さん、お元気で。

             日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満