日本の会計年度末がこんなにも忙しいのは、何か社会システムに欠陥がある証拠ではないでしょうか?先々週から土日の休みもなく働いております。無事4月1日のエイプリル・フールで一段落つくことを願って、頑張るしかありません。審査報告書、シンポジウム、企画委員会と、まるで年度末に予算消化で行われる土木工事とまったく変わりません。今やICT技術によって、秒単位で経費計算可能となっております。政府の単年度予算システムももっと柔軟に、しかも仕事量を減らせると確信しています。

 さて、週末にお会いしたある政治学者が「今の日本の政界は事実上の大連立が成立している」と指摘してくれました。つまり民主党も自民党も公明党も、このまま変化しないことを望む大連立であるというのです。消費税の議論もむなしく空回りしているだけ。このままでは、社会福祉と税の一体改革の実現も難しい状況です。現在の政治家が恐れているのは、橋下旋風で、敵の敵は味方と、既得権の維持で手を組んでいるというのです。「暗闘-スターリン、トルーマンと日本降伏」(長谷川毅)で、活写されたように、我が国の政治のトップエリートは危機に関して、決断が下せなかった。もたもたしている間に、原爆投下とソ連の参戦・南千島の占領、そしてシベリアでの60万人以上の捕虜抑留という甚大な犠牲を国民に強いました。これを平成で繰り返してはなりません。政治的に行き詰ったのなら、税と社会保障の一体改革や原発の再稼動も含め、争点を明らかにして選挙で、国民に信を問うべきだと考えます。これが出来ないこと自体が、政治家の退廃であると思います。

 バイオにおいても、がっかりする論文の捏造や取り下げが相次いで報告されています。研究者のモラルが問われています。血税ともいうべき貴重な国税を投入して、科学研究に期待をかける国民の純な思いを裏切ってはなりません。下記は論文取り下げをモニタリングするサイトですが、こんなに頻繁に論文の取り下げが行われていることに驚きます。中には我が国の研究者の名前も見つかるのが、大変残念です。まさか、毎朝、こういうサイトにアクセスしなくてはならなくなるとは。。。日本にも論文取り下げや研究不正を告発するサイトは多数存在しています。Googleで検索すれば、簡単にアクセスできます。
http://retractionwatch.wordpress.com/
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120322/160169/

 論文取り下げの中には、うっかりミスもあるとは思いますが、研究者の解雇までいたった事例もあり、確信犯的な捏造も行われていることにも目を背けてはならないと思います。独協医科大学内科学服部良之教授(諭旨退職)、名古屋市立大学大学院医学研究科展開医科学分野原田直明准教授(懲戒免職)が今年に入って発表されました。この他、三重大学や京都府立医科大学(米国心臓学会雑誌で5本の論文と取り下げ)でも、調査委員会が現在、審議を進めています。昨年中の報道も合わせると、埼玉医科大学、慶応大学医学部などなど多数の大学が論文を取り下げています。中には常習の研究者も居る可能性があり、研究者はプロフェッショナルとして自律的に襟を正す必要があると考えます。学会と大学や研究機関での研究者の教育とプライド育成が必要です。前回、RNAi論文疑惑事件でも報道しましたが、厳罰で処するだけでは再発は抑止できません。背景にはパワハラやキャリアの危機、人間関係の軋轢、嫉妬、虚栄心など、人間の暗い心の動きがあります。ストレスに曝されている研究者が、罪を犯す前に相談できる仕組みや人間関係の構築など、厳しい国際競争の中、それでも研究者が生き生きと楽しく研究を行うことができる人間的な環境の整備が必要不可欠であると思っています。ただし、こうした環境のせいにだけ、不正の源を押し付けるのもまた正しくない。やはり研究者の強い心と良心が、研究における不正との戦いの最後の砦であることも、真剣に自覚しなくてはなりません。

 3月28日には厚生科学審議会科学技術部会で、独協医科大学の不正行為に対する対応検討委員会が設置されます。同大学は不正を犯した研究者の処分を発表していますが、厚生労働科学研究費の返還は認めていません。対応検討委員会でこうした大学の態度が適切か、審議することになります。やはり不正な研究を行った場合、論文の取り下げ・訂正に加えて、研究費の返還は避けられないのではないでしょうか?厳罰主義ではなく、国税を投じた国民に被害を及ぼすことはできない。これを絶対ルール化しなくては国民は科学者の放埓にもう付き合ってくれなくなるからです。

 皇居の乾門の前にある早咲きのソメイヨシノが昨日二分咲きでした。
 春は着々と皆さんのところに訪れようとしています。

 どうぞ今週もお元気で。

         日経バイオテクONLINE Webmaster 宮田 満

ご連絡は、https://bio.nikkeibp.co.jp/inquiry/