こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 先週金曜日、長浜バイオ大学で開催された日本ペプチド学会主催のペプチドフォーラムを取材してきました。元京都薬科大学教授で現長浜バイオ大客員教授の木曽良明さんらが中心になって企画されたもので、非常に面白かったです。日経バイオテクONLINEで記事にしたので、ぜひお読みください。

ペプチド創薬でフォーラム開催、クリプタイド、ペプチドーム解析などの成果を披露
https://bio.nikkeibp.co.jp//article/news/20120321/160158/

 ペプチドは、古くはインスリンなどのホルモン製剤、あるいは武田薬品工業の前立腺がん治療薬の「リュープリン」など、医薬品として数多く利用されてきましたし、最近でも糖尿病治療薬「バイエッタ」など、新しい医薬品を生み出しています。フォーラムでの議論を聞いていると、このペプチド医薬がさらに新しい発展を遂げつつあることを感じました。

 ペプチド医薬としては、アミノ酸をランダムに組み合わせて抗体のように標的分子に特異的に結合するものを探索するアプローチもありますが、フォーラムで主に議論されたのは体内にあるたんぱく質が代謝される過程で生じる断片化されたペプチドです(長浜大学の向井秀仁さんは「クリプタイド」という名前を提唱されていました)。その多くがこれまでただのゴミのようなものと考えられてきましたが、そのうちの一部は受容体やたんぱく質に結合して細胞内の情報伝達に関与することが明らかになってきています。これらのペプチドはそもそもはたんぱく質の一部であり、ゲノム配列の中に隠されています。従って、これまでの研究から機能性のペプチドにありがちな配列を検索するなどの手法によって、新しい機能性ペプチドの候補を効率よく見つけ出そうという研究が活発化しているわけです。

 一方で、ペプチドは体内で分解されやすいことが課題ですが、薬物送達システム(DDS)技術の進展により、経鼻、経肺、経皮など様々な経路で投与することが可能になりつつあります。

 人の体が作り出すたんぱく質の分解過程で生じるペプチドを医薬品として利用することは、元々生体内にある調節機能をうまく利用して疾患を克服しようというものなので、人工的に設計した低分子の医薬品などに比べて副作用の心配をしないでいい可能性があります。国立循環器病センター研究所の南野直人さんが取り組んでこられたペプチドーム解析のアプローチからも、そうした機能性のペプチドが見つかりつつあるようです。たまたま、来週月曜発行の日経バイオテク2012年3月26日号では核酸医薬を特集で取り上げましたが、ペプチド医薬も特集で取り上げても面白い話題かもしれません。

 ちなみに、ペプチドフォーラムでは、京都大学名誉教授で生産開発科学研究所の吉川正明さんは、主に食品成分中の生理活性ペプチドの探索について話をされていました。「(体内で作り出すたんぱく質由来の)内因性ペプチドが生理活性を持つのは生物学的に合目的性があるけれど、(食品として摂取するたんぱく質由来の)外因性ペプチドが生理活性を持つのは偶然であって、合目的性がない」というのはなるほどと納得させられました。そう考えると、食品成分の中から機能性ペプチドを見つけ出そうとするよりは、ゲノムの中から探す方が効率的な気もしますが、偶然、生理活性を持つものを食習慣の中に取り込み、より高い生理活性のものを育種で開発してきたのだとしたら、食品成分から探索するのもあながち間違ったアプローチではなさそうです。

 話は変わりますが、日曜日にお台場にある日本科学未来館で開催された「DNA鑑定」の実験教室を取材させてもらいました。理化学研究所ゲノム医科学研究センターの久保充明チームリーダーの監修、ライフテクノロジーズジャパンの協力の下、昨年10月から月に2回程度、小学校4年生以上の友の会会員を対象に開催しているイベントだということですが、小学校高学年の子供たちが熱心にDNAの話を聞き、ピペットマンを操っている姿を見て、日本のバイオの将来に対してちょっと安堵を覚えました(大げさですが)。こういう取り組みももっと増えていくといいと思いました。

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https://bio.nikkeibp.co.jp/article/information/20120201/159312/

 少し短くなりましたが、本日はこの辺で失礼します。ご意見、ご批判は以下のフォームよりお願いします。

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                    日経バイオテク編集長 橋本宗明