◆◆◆◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
  - バイオマスとバイオプラスチック -
                  バイオインダストリー協会 大島一史部長
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 今月は、バイオプラスチック(BP)の定義すら一義的に定まっているとは言えないですが、それを問わずにBPとバイオマス(BM)との関わりを確認しておきたいと思います。

 読者諸兄姉におかれては、すぐにトウモロコシ由来のポリ乳酸やサトウキビ由来のポリエチレンをBPの代表事例としてお考えのように、資源穀物と言えばトウモロコシやサトウキビを思い浮かべるのが一般的です。キャッサバやヒマ等も活用され注目されています。しかし、残念ながらこれらを工業用化学品原料として賄えるだけの量的栽培は、我が国では望みようもありません。BPが汎用的な用途を目指すプラスチック資材であるためには、既存の石油系プラスチックには無い新たな機能の発現、これが無い場合には石油系プラスチックと同程度の品質、さらに温室化効果ガス削減効果見合い程度のコスト高(例えば排出権取引市場での時価)であることが最小限の要件と思われます。必然的にコスト上有利なBMからの物質返還技術で合成されるBPの原料は、海外からの輸入に頼らざるを得ないことになります。

 それでは、国産BMとBPとの関わりは無いのでしょうか。

 BPを、BMを原料とする物質変換による資材ばかりではなく、BMとプラスチックの複合化資材と捉えればそのようなことはありません。昔からウッド・プラスチック(WPC:木粉/樹脂複合化資材)と呼ばれているものは、木粉を樹脂類で固めたもので、デッキ等エクステリアに盛んに使用されています。WPCは北米や北欧での普及が盛んですが、国内でも枯渇性資源の節約からも大いに見直して良いと思われます。

 この系譜の資材は、我が国得意産業の1つである自動車部材への展開が既に取り組まれています。ココナツ繊維やジュート、クロワなど天然繊維で強化したプラスチックの自動車部材への実用化はDaimler Chrysler社(当時)に始まるとされますが、トヨタ自動車が開発した、ケナフ繊維をポリ乳酸で固めた(配合:70/30)スペアタイヤカバー(03年)は国内最初の事例の1つと言えます。登場の時点ではプレス成形加工法がとられたようですが、その後にトヨタ紡織が開発したケナフ/PP(ポリプロピレン)複合系では射出成形も可能で、エアクリーナーケースへの展開事例が発表されています(09年)。

 日本電気がユニチカと協同で開発したケナフ繊維強化ポリ乳酸が、携帯電話機の筺体に使われたこともありました(06年)。これらの事例ではケナフは海外で栽培されたものでしたが、三菱自動車工業が手がけた竹/樹脂複合系では国産BMとしての竹繊維が使われています(企業によって“お好み”のBMがあると窺えるのも興味深い傾向です)。

 有機繊維のプラスチックへの導入・複合化(繊維強化プラスチック)は、プラスチックの機械的強度の著しい向上と耐熱性改善に効果的で、適切なエラストマー相の導入により衝撃性との両立も可能となり、最も関心が持たれている材料設計技術の1つと言えましょう。ケナフや竹繊維に限らず、セルロース繊維(北越製紙/北越パッケージや、東レ/昭和丸筒/昭和プロダクツによるセルロース繊維強化ポリ乳酸)、木質系繊維の極限とも言えるバイオナノファイバー(京大生存圏研究所)、木粉、籾殻や古々米(旧アグリフューチャー・じょうえつ)、さらには貝殻粉末(瀬戸製土)など、多様なBM/プラスチック複合系資材が開発され、提案されています。

 異質な素材同士を組み合わせ、材料としての最適設計による高度な機能を持たせる技術は我が国ならではの発展が期待し得るものです。物質返還技術でBPとせずとも、このような形状制御したBM自身とプラスチックとの複合化は新たなWPCの創出と捉えることが可能なのではないか……。これが本号で申し上げたい筆者の本音です。