こんにちは。水曜日を担当する日経バイオテク編集長の橋本宗明です。

 ワクチン事業に関して、武田薬品工業と第一三共が相次いで記者会見を開催しました。2つの会見については日経バイオテクONLINEで記事にしているので、ぜひお読みください。

GSKと第一三共がワクチン新会社設立で記者会見、第一三共の中山社長が国内トップを目指す
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120307/159932/

武田薬品のワクチンビジネス、10年後に世界トップクラスを目指す
https://bio.nikkeibp.co.jp/article/news/20120301/159838/

 ともに日本を代表する製薬企業ですが、ワクチン市場へのアプローチの仕方は大きく異なります。第一三共は、旧第一製薬が古くから北里研究所のワクチンを販売してきた他、90年代後半には、フランスSanofi社のワクチン事業会社sanofi pasteur社の前身であるPasteur Merieux Connaught社とワクチンの開発および輸入販売を行う合弁企業を設立して輸入ワクチンの開発にも乗り出しました。その後、この合弁企業はsanofi pasteur社に売却しますが、同時に北里研究所のワクチン部門を傘下に入れ、研究、開発、マーケティングまで、全ての機能を持つことになりました。さらに今回、グラクソ・スミスクラインとの合弁会社設立を通じて、GSK社のグローバルの製品やシーズにアクセスすることができました。ただし、会見で中山社長が「まずは、新会社で国内基盤を固めてからの話だ」と述べているように、第一三共が視野に入れているのはあくまでも国内市場のようです。海外でぶつかることがないからこそ、グラクソとの合弁設立が実現したのかもしれません。

 一方の武田薬品工業は、大手製薬企業の中で唯一、古くからワクチンの研究、開発、販売を行ってきました。90年代半ばにインフルエンザワクチンから撤退しますが、ワクチン事業は継続し、2008、09年ごろからワクチン事業の強化に乗り出し、新型インフルエンザに備えた細胞培養インフルエンザワクチンを手掛けることによって、インフルエンザワクチン事業への再参入の意向も表明しています。その武田薬品が2月末に開かれた会見で高らかに宣言したのは、グローバルなワクチン事業への参入です。

 既に日本の大手、準大手製薬企業の多くが自社によるグローバルな事業展開に乗り出していますが、ワクチンで海外に製品を供給している例は、途上国支援などに関係する幾つかの例外を除いてほとんどありません。ところが武田薬品はワクチン事業をグローバル展開するために、グローバルなワクチンの支援で知られるBill & Melinda Gates財団からRajeev Venkayya医師をスカウトしてワクチンビジネス部長に据えました。会見でVenkayya医師は、「現在、世界的にワクチンを供給する中心的な企業5社と肩を並べる」と宣言しました。販売は、昨年買収したスイスNycomed社を通じて行えるのかもしれませんが、新しいワクチンの種を生み出すのはこれまでの体制では追いつかないでしょうから、これから相当なペースで技術導入や企業買収が行われるに違いありません。

 いずれにせよ、日本でのワクチン事業の足場固めを狙う第一三共と、一気にグローバルな展開を狙う武田薬品。両社の戦略の違いが、5年後、10年後にどのような結果をもたらすのか。その行方が注目されます。先週、海外出張に出ていた関係もあって、日本の製薬、医療機器企業の海外展開を応援したい心境ですが。

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https://bio.nikkeibp.co.jp/article/information/20120201/159312/

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                    日経バイオテク編集長 橋本宗明